番組審議会
第488回 番組審議会議事録概要
1.開催日時
令和元年 6月12日(水)正午より
2.開催場所
東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社
3.出席者
- 委員長
- :
- 但木敬一
- 副委員長
- :
- 毛利衛
- 委員
- :
- 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、増田宗昭、三浦瑠麗
- 局側
- :
- 宮内社長-遠藤専務、岸本専務、石原取締役、清水執行役員常務局長、塚越執行役員局長、若生執行役員局長、山口局長、金田局長、石原局長、矢延局長、齋藤部長、中山局次長、瑞光部長、西村週刊フジテレビ批評担当、成河担当部長、南條編成企画、小谷P、丸山総合演出、柴崎室長、千葉部長、熊谷番組審議室
4.議題
『潜在能力テストSP』
2019年6月4日(火)19:00~21:00 放送
各委員からは、課題番組に関して以下のような意見が出された。
- 単純に知識でこの漢字がどうしたと問うのは、ノンクイズファンからすると面白くない。あるきっかけで何かを考えさせる、そういう閃きと発見がある、そういう問いを作り出すことが、内容的な問題としてはあるのではないか。
- 例を挙げると、与謝野晶子さんの「みだれ髪」。与謝野晶子の場合、日露戦争の真っただ中に、「君死にたまふことなかれ」といった激しい情熱を歌い上げて、大町桂月と物凄く面白い論争をした。クイズプラスちょっとした解説などが、結構勝負所ではないか。
- 既成概念を超えて、映画、音楽、文学、歴史、歌舞伎、落語というような分野にウイングを広げることがあってもよいのではないかと思った。
- 以前2000人ほどの保護者と子どもたちの「青少年のメディア利用に関する調査」(2017)を行った。それでわかったのは、録画視聴が非常に増えているということ。特にドラマに顕著。また、子どもたちの中で、家族で一緒に見る番組が欲しい、それが楽しいと回答してきた人が結構多かった。
- この番組は、教科書に基づく問題文が作られて、子どもが結構得意になれる。子どもは自分が得意になることがすごく楽しい時期があり、そういうターゲットにフィットした番組だ。それは子どもにとってとても勇気が出る。自分が大人に勝てることを一つ一つ積み上げられるような、そういう番組作りだ。
- 助っ人のAかBかを回答者が選ぶが、ボックスでも何でもなく、A、Bが明示されていない。東大生でも芸人さんでも番組進行上、制作者に都合のいい回答者が出てきたりしているように見えてしまった。
- スマホ生活をしていると、2時間のクイズ番組が、少なくともこの構成だとちょっとダレた。
- 文学作品になったときに、これは日本の受験勉強のいわゆる初等中等教育の性質を示していると思った。夏目漱石=『吾輩は猫である』と条件反射的な記憶方法を日本人はしていて、読んでないがぱっと出てくるという日本人ならではの面白さの一方で、中身に立ち入る暇はなかったのか。
- 出演者の得意不得意があって、必ずしもIQとか学歴とかというヒエラルキーじゃない、勘の良さとか、そういう特徴が出るのは面白いが、馬鹿にするというのは、ちょっと辛い。馬鹿にされているのを子どもが見て育つと、馬鹿にするような子になるのではないかという不安を持った。
- 後半の日常観察力、騙されない力、「潜在カルタ」などはスピード感があって、番組らしさが出ており、今後伸びていくコーナーになる可能性を感じた。
- 番組のコンセプトである潜在能力という言葉は、普段は隠されていて他人も自分も気づいていない能力のことを言う。目の付け所、タイトルはシャープだが、今ひとつ潜在能力らしさを感じさせる部分が少ない。
- 助っ人の東大生を持ち上げることは知識の量を肯定するように思え、潜在能力をコンセプトにするこの番組の真逆の存在なのかと感じた。
- 例えば経験を重ねなければわからないことや、絵画の創作などのセンスを問うものなど、ただ知っていることを問うものから差別化した番組のほうが、視聴者の興味を惹いているような気がする。
- クイズ番組は1問目が凄く大切だ。『潜在能力』というタイトルでありながら、1問目が岩手県、秋田県どっちという常識問題が出たときに、拍子抜けした。
- 近年のクイズ番組は本当にレベルが高く、置いてけぼり感を抱くこともある。この番組の魅力は、誰も置いてけぼりにしない優しさと、広くあまねく全ての視聴者を部外者にしない優しさ、フジテレビらしい、愛ある番組だ。
- これはコンテンツとして凄くネットと親和性の高い番組。例えばテレビの中ではクイズで終わっていくが、参考書のようなネットがあって、同時進行的にネットやスマホを見ながらそのフォローができる。リアルタイムで連動していたりすると凄く新しい感じがしていいのかなと。
- 昔、『なるほど!ザ・ワールド』のテーマ曲が聞こえてきたら、凄くワクワクした感じがあった、ああいうお馴染み感が最近のテレビ番組は本当になくなってきている。そういうものを期待すること自体が時代遅れなのかという気もしたが、個人的にはそういうフレームの美しい番組を作っていただきたい。
- 小学校で習った程度の知識を問う問題が非常にスピーディーに進んでいくので、非常に見やすかった。記憶を紐解きながら、みんなテレビの前で回答したくなるという良さがあり、2時間飽きずに見ることができた。
- 潜在能力の定義がわかりづらい。潜在能力をどう捉えているのか。例えば番組なりの潜在能力の定義とか意図が最初に示されてもいいのではないか。
- 潜在能力と言いつつ、雑学的な知識が問われる問題が多い。
- 潜在能力というのは右脳に関わる。むしろ芸術的センスとか閃きに関連していると言われる右脳が活性化するような問題を考えると、番組の趣旨がはっきりするのではないか。右脳の優れた芸人さんの発掘を積極的にやっていただきたい。番組の財産にもなるし、新しいスターが生まれるかもしれない。
- 特筆すべきデータは録画率。この番組は何と録画率が3%しかなかった。つまり、ながらで見ているので、コマーシャル効果が一番高い番組。
- こういうクイズ番組でどういう質問をするかが、実はメッセージとなる。フジテレビとしての社会にアピールしたいメッセージが底辺にあって、それを視聴者に無意識のうちに伝えられる質問みたいな構造があると、凄くフジテレビらしいと思う。
- 小・中・高生なら、学校で習う知識で回答できるので楽しめる。知ってるよ、という喜びを感じ、お母さんからも、よく知ってるねと言われるので、良い教育番組である。
- 2022年から高校では新科目「理数探究」で、自分で問題点を発見し、アプローチを考える方向に学校教育が変わる。10年後にはきっとクイズ番組も変わるが、今は知識を重要視しているから多くの人が素直に条件反射的な回答を楽しめる。
- 初めて見た人はハンドルを引っ張っているのは何の意味か全くわからない。初めに基本的ルールを説明するともっと楽しめるのではないか。
- 知っているものもいざクイズで聞かれると、さてどっちだっけとなり、日本人を形成する文化総体の一部が問題に出ている気が。そんなことは知ってるよね、というところに何かそうじゃない曖昧さがあり、間違ったから不愉快でもなく、その頃合いが面白いのだろう。
これに対して番組サイドからは以下のような発言があった。
- 最初の1年、「気づいていない能力」を様々なテストで気づける番組というコンセプトで制作した名残が「日常観察力テスト」「騙されない力テスト」で、この二つが当初からのコーナー。拘っているのは、解くときの何だっけという感情のフックや、穴埋め形式でヒントから答えに辿り着くまでに何か「一癖」つけることで、視聴率の側面と、番組が大事にすべき側面を日々天秤にかけている。
- 「皆様に見て頂ける」は言葉にすると簡単だが凄く難しい。ファミリー中心だが年配の方にも見て頂けてきて、テレビの前にいるみんなが楽しいという理想論を目指したい。
- 番組の情報の質と量とレベルは凄くバランスが難しく、やり過ぎると情報の一方的な押しつけに、足りないと知識欲をかき立てられない。もっと伝えたいこともあるがこれ以上はというとき、アプリとの連動はある。
- 一番大切にしてきたのが、子どもから大人までが一緒に楽しめることだが、クイズそのものを楽しみたい方からは問題に噛みごたえがないとのご意見も多く、上手くすり合わせることが今後の一番の課題だ。
- 『潜在能力テスト』の看板を考えると、潜在能力ともう一度融合を考えてもとハッとさせられた。クリアできればまた一つ上の番組にできる。
その他の、フジテレビ、あるいは放送全般についてのご意見(1)
- 登戸の事件。情報番組は、色々な仕掛けを現場で全部こなさなければ等のプレッシャーに晒されている。新潟女児殺害事件でもリポーターが砂袋を抱えて線路に置く動作をし、ご遺体を砂袋で代替するのかと批判があった。現場だけの判断で炎上しそうな無神経なことはしないということが、余り反映されていなかった気がする。
- 「死ぬなら一人で死ね」発言は報道からバラエティまで他局含め問題になった。対象感情は自分の娘や夫が殺されたらどうかという自然な反応で、それ自体をバッシングすべきでなく、対する異論を出し、色々な意見が出て時間をおいた上で理解が深まるのが一番正しい形だと思う。少しごろっとする意見が出たら、できれば時間をかけて、局としてフォローアップするといい。
これに対して番組サイドからは以下のような発言があった。
- 砂袋やストップウオッチはそういう意図ではなかったが、視聴者や遺族に嫌な思いをさせることは考え直した方がいい。
- 登戸の事件のヘリ映像はどこまでカメラを寄るかカメラマンも受け手も非常に悩んだが、原則として余りアップしないと意識した。放送後もプロデューサー会議等で、被害者や視聴者感情を意識した報道を、と皆で確認。そういう感情に配慮して報道すると共有している。
その他の、フジテレビ、あるいは放送全般についてのご意見(2)
- 元農水次官の息子殺害事件、家庭内で子供に暴力を振るわれる家族を救う社会的システムがない。殴られ続け、誰にも救いを求められず最後には殺害の手を下さねばならない悲劇はブラインドになっていて、ぜひ報道を。
- 多発する高齢者の交通事故は、ヒューマンファクターに取材が向いているが、意図を超えて走ってしまう車は本当にないのか。多発事故は何か警告を発しているのでは。ぜひ報道機関として研究してほしい。
これに対して番組サイドからは以下のような発言があった。
- 元農水次官事件発生直後に家庭内暴力が明らかになったが、子どもの親への暴力に対する社会的システムが欠けていることは放送。どうすべきかまでは行き着かなかったが、そこに視点をより向けたい。
- 高齢者の交通事故は、アクセルとブレーキの踏み間違いが圧倒的に多い。アクセルの力のベクトルを横に向けてスピードが出る研究や開発企業も紹介。事故から新しい発明が生まれ、それを放送して次の事故を防ぐ。政府もそれにお金を出す等の動きに繋がるので、きちんと放送していく。
6月下旬の株主総会をもって、フジテレビ社長に遠藤専務、会長に宮内社長が就任することを報告。宮内社長から挨拶があった。
宮内社長
- 1年目は、番組内容や取材上のトラブルについて厳しいご指摘と色々な対策案のご提案によって大変助けられ、2年目はテレビの使命でもある「災害報道のあり方」を議論し、新しい指針等を示して頂き大変感謝している。全系列局にも伝えてより強固な災害報道の一助にさせて頂いた。
- 後任、遠藤をよりご支援いただきたくお願いする。どうもありがとうございました。(一同拍手)
但木敬一委員長(弁護士)
- 宮内社長、本当にご苦労さまでした。報道のフジにすると掲げられたが、災害が多発して災害報道中心に何回も審議し、フジテレビ、テレビ全体としてどうあるべきか随分深い議論ができたと思う。LGBT等の問題を宮内社長が番組審議会に全てかけたことは凄いし、番組審議会はぜひそういう役割を果たしていきたい。
5.その他
- 次回番組審議会は、7月10日水曜日12時から。
以上。