番組審議会

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第484回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

平成31年 2月13日(水)正午より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社

3.出席者

  • 副委員長
  • 神崎仁
  • 委員
  • 梓澤和幸、岡室美奈子、小山薫堂、林真理子、増田宗昭、八木秀次、毛利衛、(但木敬一委員長:リポート提出)
  • 局側
  • 宮内社長、遠藤専務、岸本専務、松村常務、石原取締役、清水執行役員常務局長、塚越執行役員局長、若生執行役員局長、山口局長、金田局長、石原局長、矢延局長、齋藤部長、中山局次長、瑞光部長、西村週刊フジテレビ批評担当、石田チーフプロデューサー、加藤総合演出、青木部長、情野編成担当、柴崎室長、千葉部長、熊谷番組審議室

4.議題

「報道スクープSP激動!世紀の大事件Ⅵ~平成衝撃事件簿の真相~」
2019年1月26日(土)21:00~23:10 放送

各委員からは、課題番組に関して以下のような意見が出された。

  • HPには番組の企画意図が「時代を超えて変わらない人間の愚かさやたくましさを、今に通じる普遍的なテーマとして緻密な取材で浮かび上がらせる。今回は、平成に起きた三つの事件、航空機ニアミス事故はヒューマンエラー、鬼怒川決壊は大水害、大雨などの防災、人食い熊スーパーK事件は人間と野生動物との共生。そこには、必ず現代を生きる私たちが学ぶべき教訓があるはず」とあった。
  • 企画意図は素晴らしいが、効果音やナレーション、テロップの過度な演出によって、エンターテインメントにしたいという思いが強過ぎる、という印象。
  • 「カメラが捉えたのはまさに地獄絵図」というナレーションがあったが、正直下品だ。
  • 関係者のインタビューなどよく取材しており、再現Vも臨場感があって興味深く見た。ただ、どうしても煽るような見出し、内容、効果音になりがちで、恐怖心を煽ったところで終わったという印象。
  • 現在や未来につながる話をし、対策、防止策、改善策まで掘り下げてほしかった。そういうことを報道することにテレビの存在意義の一つがある。有益な情報を提供するところまでやっていただきたい。
  • 鬼怒川決壊については、電柱につかまっていた田中さんを初めとして、当事者の方々のインタビューはリアリティと重みがあったし、なぜ土手が急に決壊したかという図解も良かった。
  • (現地は)晴れていたので逃げ遅れたという話もあったが、ではどう逃げたらいいのかとか、今後、同様の事態を避けるための情報も欲しかった。
  • キーワードは「共感」だ。あの番組を見てどういうふうに共感したのかということ。私は余り共感できなかった。特に飛行機の場合、事実なのに凄くドラマ仕立てにしようという思惑が見えて、何か残念だ。
  • 例えば命を守るという点で、このケースは、こういうことを用意しておけばこうならないというノウハウ的な整理をしたり、データを使って飛行機の事故の確率とか、水害の起こる確率とか、シートベルトを締めていて亡くなった人の確率はほとんどないとか、数字をもっと多用しても良かったのではないか。
  • ナレーションが素晴らしかった。落ち着いていて、低い声で、じわじわと神経に来るような感じ。最後に見たら、山根基世さん。さすがだと思った。
  • 鬼怒川の決壊は、どこから決壊しているのかと雲の切れ目からヘリコプターの取材班が探す。当時、よくこれを撮った。フジテレビのお手柄だったのでは。
  • 田中さんがこの時とったポーズにこんな感動的な秘話があったことを見つけ出したのも良かった。
  • この企画のそもそものメッセージは何か。かつて報道されたものを取り上げる、そこのメッセージがこれを見てもはっきりしてこない。三つの事件において新事実はそれぞれ何だったのか。
  • 日航機の衝突回避はドラマとしても非常に緊張感があったが、裁判でも判決が下され、管制官2人が有罪になり、パイロットは罪にならなかった。今回、乗客に話を聞いてドラマを作り上げている。キャビンアテンダント、パイロット、管制官に対してインタビューをしようとしたのか。そういうところから真実が出てくると思うが、どうだったのか。
  • 鬼怒川の洪水は、ヘリコプターに乗ったカメラマンが、人が助かるかどうかぎりぎりのところを撮った、それ自体に価値がある。報道はそういう場面できちっとしたものを撮ることに意義がある。
  • 現在、日本の事故調査は、刑事捜査と事故調査委員会の並行だが、アメリカの航空機、鉄道事故の調査体制は、刑事責任は基本的に免責だ。次の大事故を防ぐためには本当の原因が明かされなければならない。関係者の刑事責任をまず免責して、全部言わせる。そういう事故調査システム(NTSB)が確立している。
  • 2000機の旅客機を1カ所のコントロールルームで、機長は全部管制官の指示のとおり動いている。管制官の勤務体制とか休みなど、随分総括ポイントが出てくるのではないか。事故に関係した2人が辞めて済んでしまい、事故調査としても、刑事捜査としても浅薄な動きだった。そこをテレビ局は突っ込んで、何とかならないのかと提言をすべきなのではないか。
  • 民放連報道ドキュメント番組の審査員をやったことがあるが、中央のネットワーク局の受賞が少ない。再現が多いところには、視聴率を気にして番組を作っているのかと思われるところがあり、残念であった。
  • 再現ドラマは非常に丁寧に作られて、どれも鬼気迫るものがあった。航空機内で人が飛び上がるシーンなどは、どうやって撮ったのか、リアルだったし、CGだろうが、航空機が衝突するかしないかのシーンも、鬼気迫った。
  • 日航機のニアミスの件は、管制官の刑事責任を問うということになったが、一審は無罪で、その後二審で逆転有罪、最高裁で確定し、たしか業務上過失致傷罪。この辺の法律論の視点も欲しかった。
  • 鬼怒川決壊については、恐らくこの問題から教訓がたくさん得られたはず。ハザードマップで氾濫すれば浸水するだろうところで、なぜ早めに避難しなかったのかという視点が全体として足りなかった。
  • 今年は平成が終わる年、他局に先駆けて平成を振り返る番組を継続してきた先見の明には感心する。
  • 東京管制区は受け持っている管制区域が広く、飛行している航空機も多数で米軍という異種の管制区域と境を接し、複雑多岐にわたる事項を瞬時のうちに判断し、これを航空機の機長に誤りなく伝えなければならない。このような薄氷の上に空の安全が守られていることを知らしめる価値は大いに高い。
  • 災害報道するカメラマンやヘリコプターを操縦する操縦士は、いかに生命の危機にさらされている人が目の前にいても、誤った救助活動は最悪の結果を招く可能性が高い。したがって冷徹に目前の事実をカメラから報道し続けるしかない。その報道は、下流域の人々への警告として十分役割を果たすだろうし、全国に今何が起きているかを正確に伝える務めを全うする。
  • 全部を見終わっての感想は、平成の時代の一コマ一コマを思い出させられ、残されている課題を考えさせられ、報道というものがおのずから持っている力を改めて認識させられた。
  • 災害・事件報道の目的は、災害・事件から何を学び、どう対応し、何が改善されたかだ。JALの話は裁判でヒューマンエラーと決着したがシステムエラーだ。当時は警報のCNFでなく管制官に従っていたが、CNFがもし管制官にも聞こえていれば違った判断もあった。当時でも外国はCNFに従っていたのに、日本は何でそれを参考にしなかったのか。
  • 鬼怒川の決壊は住民への情報提供の不徹底を問題提起している。田中さんら2人の他は大部分が避難できて、彼らが避難できなかった理由がわからなかった。
  • 熊の話は食べ物がなくなる環境変化で熊の習性も変わるという教訓。事実報道だけでも意味あるが一話ずつ終わりに何を皆が学べばいいかナレーションを入れると良かった。

これに対して番組サイドからは以下のような発言があった。

  • 番組は開局55周年の番組で5年前から始まり年1回続いている。当初のコンセプトは「誰もが知る大事件の誰も知らない新事実」。各局でこの手の番組が増え、誰もが知る事件が段々なくなる中、今回6回目、誰もが知る大事件の拘りはなくても今に伝えるべきメッセージがあればやるとのコンセプトでやってきた。
  • 実際の映像、写真があるか、どこまで当事者が取材に答えてくれるか、事故調査報告書や当時の取材メモ等のリアルなものをまず集め、表現しきれないものは最後に再現VTRを考えている。「手法が下品」とのご指摘、「地獄絵図」のナレーションもそう感じられたなら反省し、真摯に受け止めて次回生かしたい。
  • JALの労組を通じ取材依頼して断られ、パイロット等のコメントは事故調査報告書を引用して再現に生かした。なるべく客観性を持った事実に基づきそれ以外は省いたが、ご意見は今後に生かしたい。
  • JALの機内の再現だが、CA役をワイヤーで吊ったり、スタッフが物を投げたり、乗客が一斉に自力で飛びあがったりと、非常にアナログ的に撮った。
  • 報道ヘリは航空法で高度300mの維持を定められている。常総を含め救助が関わった場合、高度600~750mを報道ヘリが維持し、救助ヘリは100~200m。消防、警察は特殊訓練を受けて非常に低高度で飛ぶので救助ヘリと報道ヘリが接触する危険性はほぼない。映像では風圧があったが、報道ヘリではなく基本的に救助ヘリ。相当低空を飛んでいるのでそれによって生じたもの。
  • ご指摘の通りあの映像はうち独自。新聞協会賞も頂いたが、当時の様々な判断が奏功した。使用に当たっても色々議論あったが、やはり我々報道機関としては、目の前に起こっているものをいち早く伝えるのが使命ということで放送、報道に踏み切った。
  • 共通波無線という消防、警察、自衛隊と共通の無線を使っている。ヘリが要救助者等を上空から見つけた場合は、自治体、警察、消防、自衛隊にここに要救助者がいると無線で伝えることは日々パイロット、整備士も訓練しているし、この時も実際に行っている。
  • 限りある少ないスタッフでやっており、色々な方が色々な見方をされるのだということを初めて突きつけられた思い。
  • 取材が甘かった部分もご指摘通り、JALの管制官等、絶対取材すべきだった。ご意見はスタッフとも共有し今後に生かしたい。

以下、質疑応答や、委員のご意見など。

委員

  • 実際、この番組を作るに当たって予防報道という視点があったのか?

制作サイド

  • 予防報道という大きな視点は勿論ある。一番は、水害の恐ろしさを伝えること。リアルな映像を使い、当日の天気状況や、堤防は非常に弱いと伝えること、どの地域でも起き得ると伝えることによって予防報道という視点は入っている。

委員

  • 雑誌『民放』昨年11月号で、「逃げ遅れ例は偶々助かっただけで、寧ろ学ぶべき事例でなく、奇跡的な救出・脱出劇に適当な解説をつけて放送の結果、視聴者が誤った認識を持ち、次の災害で同様の行動をとり犠牲となったらどう責任をとるつもりか」等と厳しい意見も出ている。
  • 逃げ遅れて決して褒められた例でないとの言葉は本人からは出ていたが、もう少しそこを強調し、更にあの一帯は明らかに危険地域と考えられていたのだから、今後同じことが全国で起きないようにするための教訓としてもう少し輪郭をはっきりさせた形で述べても良かったのでは。

5.バラエティ番組で、知事選挙中の立候補者の名前、写真を放送、視聴者から指摘を受けた件に関し、放送の経緯、放送後の対応、再発防止に向けた取り組み等を、担当部局より報告。

6.その他

  • 次回、第485回は3月13日水曜日
  • 審議番組はバラエティ番組『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP SP』、2月23日土曜日19時放送。

以上。