番組審議会

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第483回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

平成31年 1月16日(水)正午より

2.開催場所

東京都港区虎ノ門2-10-4 ホテルオークラ東京

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 神崎仁
  • 委員
  • 梓澤和幸、岡室美奈子、小山薫堂、林真理子、増田宗昭(新任)、八木秀次、(欠席:毛利衛)
  • 局側
  • 宮内社長、遠藤専務、岸本専務、松村常務、石原取締役、清水執行役員常務局長、若生執行役員局長、山口局長、金田局長、石原局長、矢延局長、柴崎室長、千葉部長、熊谷番組審議室

1月より、増田宗昭委員(カルチュア・コンビニエンス・クラブ社長)を新委員としてお迎えした。
新年初回は審議番組を設けず、「テレビの災害報道のあり方~ライフラインとしての放送とは~」と題してご意見をいただいた。冒頭で、宮内社長、但木委員長のご挨拶があった。

4.宮内社長挨拶

  • 昨年は災害が大変多発した年。放送の社会的使命、価値向上は平時のコンテンツは勿論、有事の際にどのような放送をするかに関わっている。SNSの発達によりありとあらゆる情報が世の中を駆け巡る時代だが、何が信頼できる情報で何がフェイクなのかスピーディーにその真偽を見極めるのが大変難しいのも事実。有事の際に信頼される情報は本当に国民のライフラインだ。
  • 新しい年を迎え、「変化は進化」という言葉をテーマにした。メディア環境や気象情報の技術革新の中、テレビの災害報道にも進化が求められる。本年も委員の皆様方のご意見を参考にさせていただきたい。

5.但木委員長挨拶

  • 災害報道全体で民放は一体どういう役割を果たすのか、特に今のネット社会でテレビ局はどうすべきか。キー局が災害報道でどういう役割を果たすべきか。皆さんに率直な意見をいただいて、あるべき姿を考えていけたらと願っている。

6.「テレビの災害報道のあり方~ライフラインとしての放送とは~」について。

ご意見をいただく前に、局サイドから、説明があった。

  • 報道は、国民の生命・財産を守る情報は勿論、生活に必要な情報など、きめ細やかに伝えることが責務と考えて体制を組んでいる。昨年来の番組審議会のご指摘を受け更にその体制を強化した。
  • 日常的に初動訓練を実施、特に深夜や土日等を想定、少人数で対応できるよう月2、3回、突発的に訓練。命を救う情報とは何か、特番に入るまでの手順等を反復練習して習熟度を高めている。
  • 1月3日、熊本で震度6弱の地震が起きたが、訓練の成果が出た。正月特番を差し替え報じた。内容的にも発生時の熊本の映像をどこよりも早く視聴者に届けられた。
  • フジテレビ系列では、各局に本社の電源や携帯の中継局が落ちた時など22項目でどう対応するかアンケートを実施。ガソリンや軽油の備蓄量や自家発電はどれ位もつか、携帯電話が使えない場合の連絡対応手段など調査し、対応を各社にお願いしている。
  • 災害時、被災者に有用なのは地上波放送と同時にネットでの情報伝達。昨年立ち上げたFNNのホームページ「プライムオンライン」で災害時は地上波の災害放送をネットでも同時に視聴できるが、バッテリーを消費するので、放送視聴ではなく文字情報を出そうと、気象情報や避難情報、電気、水道、ガス、交通など様々な情報の提供体制を組んでいる。
  • 現在、政府や地方自治体が南海トラフや北海道東方沖を発生源にした地震対策を検討中。FNNは今月下旬に南海トラフでの地震発生を前提とした防災訓練を行う。命を守る災害報道とは何かが実践できるような体制を作っていく。

委員から以下のようなご意見があった。

  • 命を守るための放送第一は大前提だが、熊本地震の時に両親に連絡したら、さほど大きな揺れでなかった。実家は熊本県天草だが、報道は「熊本地震」なので風評被害が非常にあった。
  • 一番混乱させるのはSNSのデマや間違った情報の拡散。正しい情報と同時に、それらをしっかり否定する報道がなされてもいい。SNSの間違った情報を否定することも一つ入れておいてはどうか。
  • 災害対策基本法に基づく地域防災計画では放送局は指定公共機関の位置づけで、気象情報の入手手段はテレビが圧倒的多数。テレビを含め放送は防災、減災機関と思う。
  • こういう被害が起きたという取材に偏る一方、今後起きそうなことに対する警告、警鐘が足りなかったのではという反省は非常に重要だ。
  • 「特別警報」という言葉は、どんな意味か認識がなかった。行政用語は何を意味するかよくわからず、かみ砕いた言い換えが必要で放送業界全体としての課題だ。
  • 発災時だけでなく、普段から自然災害や原発災害時にどうしたら自分と家族の命を守れるかという、住民の目から見た防災観点が必要。
  • 防災の最適対策は人口分散と、地震学者が警告。官庁や大企業の分散、補助金を出して地方に人口を分散していくことこそ首都直下型地震への大きな対策。ぜひ報道機関の提言機能を発揮してほしい。
  • 東日本大震災時には、多くの方が「テレビでこれだけやっている」、「地震で津波が来るらしい」と、東京から携帯電話で情報が随分現地に伝わった。災害地の知り合いに今すぐ連絡を等の呼びかけは絶対必要。
  • 「きょうの防災メモ」みたいなミニ番組で、チコちゃんみたいな可愛い子が「トイレはどうしたらいいか知ってる?」「水はこのくらい必要だよ」等、小さな知識を毎日放送して防災意識を高めるのは非常に大切でテレビは大きな役割。ぜひテレビならではの、楽しく、面白いものを。
  • 地域格差を乗り越えることがいかに重要か改めて感じた。子どもの頃に『日本沈没』という映画を見て、私が住んでいたあたりから沈むのだが、東京は平然としているのが子ども心に非常に残った。
  • また、地方の災害でも在京キー局がやってきて全国的に報道することがいかに大事かを感じた。
  • それは、テレビ局側だけではなくて視聴者の側の問題でもある。地方の危機を他人事と思わない想像力を養うというか、報道番組だけではなくて情報番組とかドキュメンタリーとか、局全体としての取り組みとしてそういう啓蒙活動が重要ではないか。
  • 情報番組における行き過ぎた取材についてはぜひお考えいただきたい。ドラマを求めてしまうのではないか。煽りはもちろんだが、何かしらドラマを見出そうとする姿勢自体を再考していただければと思う。
  • 民放としての立ち位置はどうなのか。視聴者にとっての一番の価値はスピードと信頼だ。ユーチューブだ、インスタだと皆さんがばっと出す情報のスピード感のようには絶対できない。スピード感に対して信頼というのはあるが、スピードをおろそかにしていたらいかんのではないかと考える。
  • FNNとしての災害報道のゴールは何なのか、何を目指すのかという指標だ。
  • 視聴者に、過去の災害報道時の、FNNと他の民放、あるいはネット、あるいはNHKとの比較のアンケートを取ったらどうか。どういう点で評価され、どういう点で評価されていないのかを、客観的な視聴者の声として集めることが必要。
  • 災害報道には、災害が起きている時の報道と、災害が起きていない時の報道、あるいは災害後の報道、それぞれ違う。その中でキー局とローカルの役割も違うのではないか。
  • 例えば、キー局は災害が起こっている時に、全国にこういうところでこういうことが起こっているということを知らせる、時には世界に知らせることが必要だ。その災害の程度によっては、救援隊を求めるとか、生活物資とか義援金を集めることにも役割を果たすのではないか。
  • 災害時のテレビ局の果たす役割は大きい。一つは防災訓練、あるいは教育。アメリカの西海岸ではFMを使って毎日正午に3分間放送して、一斉に身を守る行動を1分間とるということを毎日やっているそうだ。そして月に1回は屋外でそれをやっている。日本でも、かつしかFMでそれをやり始めた。
  • 防災あるいは減災に対して民放が担うべき役割は民放全体で考えるべきテーマで、やはりそれはきちっと考えておいた方が良さそうだ。
  • 大きな災害が起きた時は何日間もその報道をやらざるを得ないような事態もあり得るが、それを本当にテレビ局の負担だけでできるのか。スポンサーの組織の方々とお話をして、減災、防災のために時間を割くことについてご理解をいただき、ご協力をいただくことも考えた方がいいのではないか。減災とか防災はそういうスケールの問題ではないか。
  • 災害時にフェイクニュースがネットを通じて流れる恐れは払拭できない。報道は絶対にそれと一線を画して、紛らわしい、嘘の報道はしないということは徹底しておくべきだ。

ご意見に対して、局からは以下のような発言があった。

  • 本日、「災害報道」をテーマにさせていただいた。その理由は、一番社会的重要性が高いと考えたからだ。
  • 速報性と正確性という、ともすると背反しがちなものを同時に満たさなくてはいけない。その他にも、中央と発生しているローカル局との温度の格差の問題とかメディアスクラムの問題など。一番難しいのは、ニュースのトップになるような事象があちこちである中、どれを優先的に映像化するかということだ。
  • 年2回のFNN28局全ての担当役員、局長が集まる会合で、これまでは防災、減災がメインだったが、これからは「予防報道」。次に何が起きるかということまで各局で準備して、ハザードマップなり何なりを準備してやってほしい、FNN一丸となって研究開発していこうと強くお願いした。
  • スピードについては、もしかしたらネットの方が早い。しかし、非常にミクロな情報は入ってくるが、自治体等でオーソライズされたきちんとした正確な情報については我々が一番集約してできる。
  • 我々が目指すゴールは、そういった地域の細かな情報と、全国波として発信できる情報のバランスを上手くとっていくということに尽きるのではないか。
  • 「情報番組はどうしてもドラマ性を求めて少し煽る報道になる」とご発言があったが、報道、情報は常に訓練でも研修でも一緒にやっている。実際に被災地に行く場合、情報のチームは必ず地元のキー局と報道局に、誰が何班、どこに行くか必ず連絡をとる。それから煽らないようにということも確認している。

委員から以下の質問があった。

  • 特番になるかならないかという基準、決まりは何かあるのか。

それに対して、局側からは以下の発言があった。

  • 編成と報道で事前に協議しており、震度に応じて特番に入る基準や手順を決めている。津波に関しては、大津波警報が出たらすぐに入ることになっている。

7.その他

  • 次回の第484回番組審議会は2月13日(水)。
  • 課題番組は、『報道スクープSP 激動!世紀の大事件VI~平成衝撃の事件簿の真相~』1月26日(土)放送。
  • 次回、但木委員長が欠席で、神崎副委員長が議長を代行する。

以上。