番組審議会
第480回 番組審議会議事録概要
1.開催日時
平成30年 9月12日(水)正午より
2.開催場所
東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社
3.出席者
- 委員長
- :
- 但木敬一
- 副委員長
- :
- 神崎仁
- 委員
- :
- 小山薫堂、林真理子、八木秀次、毛利衛、梓澤和幸(リポート出席)、岡室美奈子(リポート出席)
- 局側
- :
- 宮内社長、遠藤専務、岸本専務、松村常務、石原取締役、清水執行役員常務局長、塚越執行役員局長、若生執行役員局長、山口局長、金田局長、石原局長、矢延局長、齋藤部長、中山局次長、瑞光部長、西村週刊フジテレビ批評担当、藤野P、西坂P、鈴木室長、牧野部長、赤池・編成担当、柴崎室長、千葉部長、熊谷番組審議室
4.議題
- 木曜劇場「グッド・ドクター」
第一話 2018年7月12日(木)22:00~23:09 放送
第三話 2018年7月26日(木)22:00~22:54 放送
その他報告事項として
- 委員の退任の件。
- 『直撃LIVE グッディ!』『報道プライムサンデー』
オウム真理教ビデオ配布時期を誤って放送した件など。
冒頭に、局から委員退任の報告があった。
- 岡野光喜委員から番組審議会の委員をご退任されたいと申し出があり、委嘱期間の途中ではあるが、このお申し出を承ることとした。
審議番組について、各委員からは以下のような意見が出された。
- ドラマは、スポーツ、ニュース、科学など「事実」を突き詰めていくのとは違う目的を持っている。社会へのメッセージになる。
- 今回のドラマは、非常に丁寧に作られており、非常に優れたものを作っている。一方、事実を追究する科学の立場から見ると、第1話で、路上で怪我をした子供に、主人公があり物を使ってすぐ処置をしたということ、現実的にはあり得ない。
- 制作サイドが新しいことに挑戦するなら、審議委員など年配の、過去の社会常識を持っている人の意見に従うんじゃありませんよと、私はむしろ訴えたい。
- 1話完結で非常に見やすいし、見ていて非常に幸せな気持ちになった。そこがこのドラマの魅力。
- 今回のドラマでは、障害を障害とするのではなくてむしろ一つの能力として捉えていて、障害を持つ人の描き方として非常に新しさがある。
- 医師とは何か、人を看取るとはどういうことか、治療するとはどういうことかという、医療者の存在意義への問いかけ。これまでの演出とは一線を画すドラマではないか。
- 同僚の医師たちがどう受け入れていくのかを超えて、我々が、彼をどう受け止めますか、多様性を認めることができますか、あなたならどう考えますかという問いかけになってきたところが素晴らしい。
- 小児医療へのエールにもなっていて、現場にも凄く大きな勇気を与えているのではないか。
- 医者の人間模様が非常に良くできている割には病院の覇権争いというのが起こってくるところが、ややメロドラマ的。
- 脚本がとても良かった。リメイクで難しかったかもしれないが、毎回心に刺さる言葉があり、人が医療に携わるとはどういうことか、死ぬとはどういうことかを考えさせられるいい台詞が幾つもあった。
- お父さん役お母さん役、その後4回目も、中堅の俳優さんが出てくる。この方たちの演技が良くて、特に第3話のお父さんが、お母さんが医師に訴えている最中、静かに涙を流している表情などは本当に素晴らしかった。
- 『グッド・ドクター』というのは一体どういうことか。成長しているのが新堂さんだけじゃなく、高山医師も瀬戸医師も成長するし、恐らく看護師や他のドクターも成長していくだろう。組織の中にちょっと違和感を持つ人が入ったことによって、彼から何か学んでいくという、「みんながグッドドクターへの道を歩む」というテーマが見る人の心を打つのではないか。
- 自閉症の医師を登場させたことによって斬新な切り口を作ったところが特徴。それは『グッド・ドクター』の強みであるとともに、弱点にもなりかねない。
- 自閉症でコミュニケーション障害がある医師を手術室に立ち会わせることは患者の生命最優先という価値に照らすとき許されることなのか。実際にはあり得ないのでは、という疑問も生じ、見る心理を邪魔してしまうところもあった。
- 大変志の高いドラマで、主役の好演も光る。しかしながら、「ヒューマン・ドラマ」に拘り過ぎているのか、ストーリーが単純過ぎて深みがない。
- 実際には、自閉症の人が人命にかかわる仕事につくのには想像を絶する困難があるのではないか。障害者を「ピュア」な存在としてある意味神聖化して描くのは、逆差別のようにさえ思われる。
- サヴァン症候群=天才というだけではなく、自閉症の人たちが社会の中で働くことの困難を、もっとリアルに描いてほしかった。
- 演出も含め、実力派の方々が作っているだけに、もっと深い感動を与えてくれるドラマになり得たのではないか。リメイクの制限も相当あったと拝察するが、いい題材だけに、少し残念。
- 小児外科という非常にマイナーな部門、これが不採算部門で経営の問題だとか、第3話でたらい回しになった子どもの話、第1話の子どもに病気の真実を話すかどうかというような、現実問題としてよくある問題を提起している。
- サヴァンは非常に限られたところに才能を示すもので、例えば音楽が凄いとか記憶が凄いとか計算が凄いとか、そういう才能を持っているが、医学の知識があって、しかも的確な診断を下す能力は、私の知る限り文献的にも例がない。
- あくまでもドラマであるという観点で、本当はこうじゃないが、ドラマの上の自閉症だということが何とか伝わらないかと思ったが、多分、見た人はこういうのが自閉症だと思っちゃったのではないかと、危惧している。
- ドラマは「頃合い」が難しい。特に障害者の問題は間違っていたら相当なハレーションに。障害者からの批判で炎上しなかったのならドラマとして自閉症の人や家族の人が見ても不快感を与えなかったのでは。
- このドラマと『絶対零度』の反応はかなり良かったと思う。いいものを作っても注目されない時もあるが潮目が変わるといい方向に回転していく契機に。
- 自閉症、サヴァンをどう研究し反映したのか?次の社会が「多様性の包摂の時代」と言われ、それに真っ向から挑戦したのは素晴らしく、一つの勇気だ。
それに対して、フジテレビサイドからは以下のような発言があった。
- 原作の自閉症スペクトラム障害を持つ青年が差別や偏見を乗り越え小児外科医になっていく物語に惹かれ、日韓で舞台となる小児外科事情は違うと思い取材。日本の小児外科に沢山のテーマがあると気づいた。
- 日本の小児外科医は全医師の0.3%、小児救急は子どもの死亡率が非常に高い。虐待の多くが心理的虐待で件数が増えている等の様々な課題を見つけ、今この日本で小児医療の現実を伝える意義は凄くあると思った。
- 「このドラマは小児医療のエールになっている」は、まさにやりたかったこと。ドラマはエンターテインメントだが、だから伝えられることもある。小児外科を目指す人が1人でも増えたらやった意義がある。
- 約10人の先生たちに監修に入って頂き、「100%の嘘はやらず、1%でも可能性があるのであればそれは作品として描いていこう」とルールを決めた。
- 監修の先生が「グッドドクターとは何か」の問いに「子どもの命を救うために毎日懸命に頑張っている全ての小児外科医がグッドドクター」と仰り、感銘を受けた。最初は新堂湊を受け入れなかった医師たちが彼を受け入れていく過程を描こうと思った。最終話には、先生の言葉をドラマのラストに込めている。
- このドラマの取材時にこの障害の方やその親御さんは見ると、強烈に自覚。スタッフもキャストも病院に何回も足を運び取材を重ね、その責任を全員が胸にしまい、ただ真摯にやっていこうと毎話、皆で確認しながらやっていった。
『直撃LIVEグッディ!』及び『報道プライムサンデー』で、死刑執行後にオウム真理教のDVD映像をアレフが配ったと放送したが、実際には死刑執行前から配られていた映像だった件について、局から報告があった。
- 担当DがDVD提供者とのやり取りで、死刑執行後にもDVDが配布されていたと勘違いした。Pや曜日担当者が何度も確認したが思い込みのまま放送。放送後、提供者から事実と違うとメールがあったがDは気づくのも上司への報告も遅れ、対応が遅れた。
- 対応が遅かったことで大きくなったと感じているが、根本的に番組制作過程で思い違いを正せなかった。番組体制作り、チェック体制を積み重ねて本人に何度も確認したが、こういう結果に繋がった。まだ口頭確認等では足りない、取材時のメモや音声でのやり取りを全部上げさせて確認しないといけなかった。
それに対して委員からは以下のような意見が述べられた。
- 事後措置の遅さがボヤを火事にした感はあるが、根本的にはその前に、思い違いの報道をさせないようにどうやったらいいのかというところが最大問題。
- 同じ人に同じことを何度確認してもそれ以上のことは出てこない。最終的な責任者が全責任を持ってチェックするということを考えて思い違いの放送がなくなるようぜひお願いしたい。
- 間違い指摘メールが届いたのに気づくのが遅くなり、更に上司に報告しなかった。社会人としてどうあるべきかがそもそも問題。
その他、10月改編について、報告。
◇次回は10月10日水曜日。審議番組『林修のニッポンドリルSP』水曜日19時00分から放送のバラエティ番組。
以上。