番組審議会
第471回 番組審議会議事録概要
1.開催日時
平成29年 10月11日(水)正午より
2.開催場所
東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社
3.出席者
- 委員長
- :
- 但木敬一
- 副委員長
- :
- 神崎仁
- 委員
- :
- 梓澤和幸、岡野光喜、岡室美奈子、小山薫堂、林真理子、毛利衛、八木秀次
- 局側
- :
- 宮内社長、遠藤専務、岸本専務、松村常務、石原取締役統括局長、清水執行役員局長、塚越執行役員局長、山口局長、金田局長、石原局長、矢延局長、立本部長、中山局次長、瑞光部長、勝川室長、高橋新週刊フジテレビ批評担当、鴨下編集長、川野編集次長、井上チーフプロデューサー、赤池編成担当、柴崎室長、小林部長、熊谷番組審議室
4.議題
- 『みんなのニュース』
2017年10月5日(木) 16時50分~19時放送 - 『とくダネ!』
「容疑者映像取り違え」「京都府議夫婦間トラブルで事実誤認」2件について - 『とんねるずのみなさんのおかげでした30周年記念SP』
過去のキャラクターで出演者が登場し、「男性同性愛者を嘲笑の対象としている」との抗議を受けて、等。
審議番組について、各委員からは以下のような意見が出された。
- 今回、CXを含め、他局のニュース番組を見たが、番組全体を通しては非常に真面目な印象が強かった。
- 伊藤アナ、島田アナ他、皆非常に安定感があり、安心して見ていられた。
- 何しろ2時間、非常に長い。今回は、選挙のニュースをどう料理するかだが、主婦層にもわかりやすく解説して、三浦さんも的確なことをおっしゃっている。
- 夫婦が万引きを逮捕したというのは本当にニュースでやるべきことなのか。何でこんなことまで、と思わせないように、上手くやっていただけたら、私ももっと見ると思う。
- 幾つぐらいそれ以外のニュースがあるかと思ったら、選挙を一つとすると25ぐらい。最後の10分にも10幾つかのニュース。伊藤さんの采配が的確なので、始まった時よりはさらに良くなっている。
- どこで見せ場を作り得たかといえば、小池新党の登場と民進党がなくなっちゃった、これは非常に大きな政治の中の出来事だ。小池さんがテレビ知名度を利用して、どうすればテレビが食いついてくるか知っていて、そのとおりにテレビが動いちゃっている、それが政治になっている。一体小池さんというのは何をやってきた人なんだというのを、逆にテレビ的に切り返して解説していくというようなことをやると、番組の核になったのではないか。そこが私としては平板な感じがして誠に残念だった。
- 小池百合子にこの時点ではこの番組も完全に振り回されているというところ。2時間の中で4回ほど登場しており、さすがに取り上げ過ぎではないか。
- 番組全体を通じて独立のスポーツコーナーがなく、芸能ニュースと同じ枠の中、スポーツファンにとっては少し物足りなく感じるのではないか。
- ロゴのデザインがいい。特に「み」の文字が、社会を繋ぐリボンのような印象、あの「み」を使ってブランディングをしていくと、何か共感を得るんじゃないか。
- (TBSの)犬の男爵がBPOに取り上げられたと言った後に、ゴミ屋敷で、やや煽った感じのあるVTR。見方によっては同じ方に行くのかなと。あれを何のためにやるのか考えることが実は大切。
- コメンテーター1人だと決定的な力を持ってしまう、もう1人、識者の方がいてもいいのでは。
- 9月28日に伊藤アナが小池都知事に凄く切り込んだ回があって、生放送の良さ、ライブ性もあり、こういうものがもっとあってもいい。
- ゴミ屋敷の取材は、なぜあの人がゴミを置き続けてしまうのかを凄く知りたい。ご本人も決してハッピーではないが、ゴミを置かざるを得ない、それは一体何なんだろうというところをもう少し知りたい。
- 断続的に見る人にとっては、ある程度最初にメニューがはっきりしている方が見やすい。何時頃にはこういうニュース、と。アットランダムに見せるのとどっちがいいのか検討されたのか。
- 高齢者の視聴が多いので、カテゴリーの中に健康寿命を延ばすというか、健康のコーナーを作っていただくと、いいのではないか。
- 伊藤さん、島田さんのキャラクターは、非常に爽やかで、公正な報道ぶりだ。
- 全体としては、非常に感じのいい番組で、育てていってもらいたい。
それに対して、制作サイドからは以下のような発言があった。
- ニュースを伝えるプロという人選で今回2人を中心に番組を進めようと考えた。
- ゴミを置く人間はどういう気持ち、心理かというところは、監修しながら疑問だった点だが、母親も取材してみたが、そこまで行き着けなかったところは企画の反省でもある。
- 小池さんのニュースが確かにあの日は長かった、選挙、政治の問題は徹底的にやっていきたいという勢いの中でかなり尺が広がってしまった。
- 「やくさんきくさん」と、ややニュートラルなタイトルにしてスポーツもやっている。これから平昌オリンピックもあり、よりしっかり取り上げていきたい。
5.報告事項
『ワイドナショー』、『ノンストップ!』で、裏取りせずネット情報を放送した件について、BPO放送倫理検証委員会が、9月8日付で公表した委員長談話「インターネット上の情報にたよった番組制作について」を報告。
- 非常に重く受け止めている。談話を全社で共有すると共に、社員、スタッフのリテラシーの向上を図る研修、制作体制、職場環境のあり方を見直して、再発防止に努めてまいりたい。
『とくダネ!』「容疑者映像取り違え」「京都府議夫婦間トラブルで事実誤認」の2件について、前回の番審での報告をふまえて、委員から以下の意見があった。
- わかっているはず、理解しているはず、と見逃すと重大なミスになる。
- 同じようなことが連続して起こっているが、これを全て当事者個人の責任にするのは違う。これはシステム、会社全体として対応をとって、皆にこういうことが起こらないように自覚させるべきだ。
- 局の中の文化というか空気の問題について触れたい。一つは、過ちが起こった時に、上の人が、よし、俺がこの問題を引き受けると。上の人の、俺は知らないから下でやってくれなんていうんじゃない、その姿勢が大切だ。そういうことがあると、本当の過ちのリアリティが出てくるのではないか。
- 前回も申し上げたが、何回も同じような案件が出てくるのは、どうも時代とずれているところが出てきてしまっているのではないか。
- 前回の場合は、若い世代の人は必ずネットを使いますよ、若い人達はネットを信じますよと。もう一つは、若い人達はネットの情報と報道というものの違いをよくわかっていませんよと。それについて中間監督者と上の人が十分認識していない。これは非常に重大な問題なんじゃないかと申し上げたつもりだ。
- それは凄く責任を伴うこと。被疑者の顔が違うということは、ネットならば取り消せるがテレビ局では取り消せないんだということをしっかりわかってもらわなければいけない。その影響力の違いは物凄いものがある。放送局がその責任を持たなきゃいけない。
9月28日放送の『とんねるずのみなさんのおかげでした 30周年記念SP』で、かつて放送していたキャラクターで出演者が登場し、「男性同性愛者を嘲笑の対象とするものである」などの抗議があった件について。(※委員は事前に番組の当該コーナーをDVDで視聴。)
まず、局側から報告があった。
- 先ほど委員長から、時代の変化についていけているのかというお言葉があったが、これもそういったことの一つだと思っている。
- LGBT等に関する複数の団体、個人の方から抗議を受けた。複数の団体等とは今話し合いを持っている、先方のご主張は二つ。ホモという言葉は男性同性愛者を馬鹿にする蔑称である、もう一つは、このキャラクターは男性同性愛者を嘲笑の対象として表現したものであるという二点。
- 番組に対して寄せられた意見は、賛成と反対がほぼ半々。中には、自分はLGBTだが、性的少数者への差別とは思わないというご意見もあった。
- しかし、このキャラクターが性的少数者に対する差別だと考える意見が、番組に寄せられた意見の半数に及んだ。不快に思った方がいらっしゃることに対して、現在、番組ホームページ上で謝罪をしたいと考えて準備している。
- 社内各所で話し合いを持った結果、既存の人事研修制度にLGBT等に関する科目を加えること、社内の各階層で行われているコンプライアンス系の委員会等でこの問題を話し合うこと、そして局のバラエティ、ドラマの全社員、全常駐スタッフに参加を義務づけたLGBT等の勉強会をぜひ行いたいと検討している。
これに関して、各委員から発言があった。
- LGBTの問題は、企業の間でも切実な問題。いろいろな意見があるのは確かだろうが、もう少し思慮を持ってやった方が良かったのではないか。
- これが差別ではないというのは通じない。今さらこんなものをなぜ出すんだろうというのが感想。
- 差別かどうかということ以前に、想像力の欠如だ。
- LGBTの人達が、そういう言葉もなかった時代に特殊なものとして見られていた時代のキャラクターだ。今はそうではない。
- 無意識だからこそ問題だと思うが、無意識的な差別に対して、どう傷つくかに対する想像力を私たちは求められている時代だ。
- 例えば大学で出席をとる時に、以前は女性には「さん」、男性には「君」で呼んでいたが、今全員「さん」。生物学的には男性だけど「君」に馴染まない、違和感を感じる、そういう人達の気持ちを考えるということだ。実際に強烈な違和感を持つ人がいることをきちんと受け止めなければいけない。
- 問題は、無自覚、悪気なく放映してしまったというところだ。時代とずれているということに尽きる。
- 『LGBTのひろば』という季刊号の雑誌が創刊され、この中にLGBTの人達の人知れぬ、物凄い深い苦しみがそれぞれ体験に基づいて書かれている、ご参考にしていただければ。
- パブリックを扱う感性がない。
- 最初、ニュースで見た時に、大変な時代になったな、くらいにしか思っていなかったが、審議のテーマになり、自分なりに勉強して、この週末ずっとこのことばかり考えていたが、大変な時代になったなと思ってしまった自分を反省した。今まで伝わっていなかった小さな声が、ネットという装置によって伝わるようになってきた。これをきっかけに謙虚にならなければいけない。
- とはいえ、一番私が恐れるのは、今回の件は非があるのは当然だが、これをきっかけに制作現場が萎縮してしまうこと。言葉じり、映像じりを掴まえて批判されることを恐れてしまって全く挑戦をしなくなるということも、危機感として持たなければいけない。
- 他者を慮りながら、でも萎縮はしないで、信念を持って世の中の様々なことを題材にするテレビを作らなければいけない。
- 皆、一つの個性だ。それは個性として扱うんだから別に嘲笑の対象にすることはなくて、普通の男と女ともう一つLGBTという感じで、そういう特別な対象にする必要はない。
- あの取り上げ方は、少なくとも多様性を認め合おうという今の社会のあり方に逆行している。その辺については更なる局内でのご論議をいただければと思う。
その他の、フジテレビ、あるいは放送全般についてのご意見。
- ミサイルが飛ぶとJアラートが鳴って、8月の下旬と9月の上旬に2回にわたって12の道府県に警報が流れた。加えて、NHKと民放各局でそのJアラートを放送上の警報として流した。これがどういう法律的な仕組みで行われているのか。
- 問題は、内閣官房と消防庁に聞くと、これは法律的根拠がありません、事実行為としてやっておりますと。なぜならば、国民保護法のシステムは、法律にてらすならば武力攻撃事態の時に動き出すシステム。
- 恐らくは指定公共機関という、放送とは別な行政機関としての動きだ。もとの法律的根拠はまだ要件が備わっていないのに、各報道機関が行政機関として動いてしまっているという、報道の自由にとってはかなり根本的な問題を含んでいるのではないか。
これに対して、フジテレビサイドは、
- ご指摘のとおり、Jアラートは国民保護法に基づく警報という認識ではない。日本の上空をミサイルが通過するということは想定されている。落下もしくは通過。Jアラートが発せられた地域においては、それが落下する恐れがあるということで、その地域に対して注意を呼び掛けるという意味で放送しているものだ。国民保護法に基づいて警報が出たという認識で放送しているわけではない。
6.その他
- 2017年上半期の放送番組種別の集計結果について
- 2017年度上半期の視聴者からのご意見について
- 次回の第472回番組審議会は11月8日(水)。課題番組は月9「民衆の敵」第一話10月23日放送分。
以上。