Story #001

 翔陽大学附属北部病院救命救急センターに、フェローシップ(=専門研修制度)によってフライトドクターを目指す4人の若き医師が赴任した。

 医師として自らの技術に揺るぎない自信を持ちながら、なお貪欲に技術を磨くことに執着する藍沢耕作(山下智久)、有名医大の教授を父に持ち、ドクターヘリのノウハウを地元の救命センターに持ち帰るためにやってきた白石恵(新垣結衣)、積極的かつ負けず嫌いの緋山美帆子(戸田恵梨香)、小心者のくせに見栄っ張りでもある藤川一男(浅利陽介)の4人だ。

 赴任初日、藍沢たちは、先輩医師の森本忠士(勝村政信)に救命センターを案内される。この救命センターには担当医制度はなく、スタッフ全員が、いつ何が起きても対処できるようICU、HCU、一般病棟を含めて50床の患者すべての病状を把握しておかなければならなかった。

 するとそこに、消防署の要請を受けて出動していたドクターヘリが患者を搬送してくる。ヘリを操縦するのはベテランパイロットの梶寿志(寺島進)。ヘリポートに着陸したヘリから飛び出したのは、最年少のフライトナース・冴島はるか(比嘉愛未)と、胸腹部外科が専門で、救命センターのエースでもある医師・黒田脩二(柳葉敏郎)だった。

 搬送された患者は団地の3階から転落した73歳の女性・滝川珠代。藍沢たちは、黒田や三井環奈(りょう)ら先輩医師たちをフォローした。黒田は、患者の呼吸状態の悪化に素早く対応した藍沢と、豊富な医療知識の一端を垣間見せた白石にオペに入るよう命じると、緋山には患者の家族への連絡、藤川には手術室への連絡と麻酔の依頼を指示する。初日からオペに加われることを当然だと受け止める藍沢、緊張の面持ちの白石、同期のふたりに先を越されたことに憤然とする緋山…。救命救急部部長・田所良昭(児玉清)から4人の指導医を務めるよう言われていた黒田は、改めて藍沢たちを見やるとこう言った。「ドクターヘリではひとつのミスも許されない。ミスは、即、患者の死だ。ヘリに乗れる医師は、重圧に耐えられる精神力と腕を持ったひとりだけ。お前ら全員ライバルだ。能力のないヤツからいなくなる」と――。

 黒田がオペを終えると、彼のPHSが鳴った。若年性糖尿病患者で、右腕に感染症を併発して運ばれてきた栗山美樹(川島海荷)が、検査を嫌がっているのだという。しかも美樹は、藤川でないと検査を受けないと言っているらしい。黒田は、藤川を美樹の元に向わせると、藍沢と白石には珠代のCT検査を指示する。

 美樹の診察をした藤川は、何故自分を指名したのか、と彼女に尋ねた。すると美樹は、藍沢に胸を見られるのは恥ずかしいから、と答える。一緒にいた冴島にも笑われてしまった藤川は、がっくりと肩を落とした。

 珠代のCT検査には、黒田と同期で、脳外科部長である西条章(杉本哲太)も駆けつけていた。検査の結果、珠代の頭部には釘が入っていることが判明する。3階から木製の棚の上に落下した際に鼻孔から釘が入ったらしい。感染症の危険もあることから、一刻も早くオペする必要があった。

 藍沢たちが食事をとっていると、そこに黒田がやってきた。午後、4人の中のひとりをヘリに乗せることになったのだという。黒田から、「ヘリに乗って現場に行きたい者は?」と問われ、一斉に手を挙げる白石、緋山、藤川。しかし、藍沢だけは何故か手を挙げなかった。

 黒田からヘリに乗るよう指示された白石は、緊張を隠せないでいた。するとそこに、ホットラインコールが入る。ドクターヘリ要請だった。若い男性がオートバイ事故を起こしたらしい。黒田、冴島、白石は、ヘリに飛び乗って現場へと急行した。

 飛行中、白石は、冴島に言われて慌てて現場の状況を確認した。しかし、現場の救急隊も到着したばかりで、詳細は何もわからなかった。

 テイクオフから10分後、ドクターヘリはランデブーポイントとなった小学校グラウンドに着陸した。患者は、カーブを曲がりきれずにガードレールに衝突したらしい。右側頭部からは大量出血していた。

 同じころ、藤川は、美樹の透析に付き添っていた。病室に戻った美樹は、ふいに、生きていてもいいことなんて何もない、と言い出す。美樹は、世の中もどんどん悪くなっていっているのだから、自分だけが辛い境遇ではない、と自分に言い聞かせて、無理矢理納得していた。実は、美樹の右腕はもはや切断するしかない状態だった。美樹も、手術には同意しているのだという。藤川はショックを隠せなかった。

 ドクターヘリが戻り、患者が初療室に運び込まれた。が、ヘリを降りたときから青ざめた表情をしていた白石は、動脈を確保し、ラインにつなぐことができない。それをフォローしたのは藍沢だった。

 廊下で藍沢とすれ違った黒田は、ヘリに乗りたいかどうか尋ねたときに、何故手を上げなかったのか、と声をかけた。藍沢は、1本でも多く乗りたいが、お情けで選んでもらっても意味がない、と答えた。黒田は、そんな藍沢に、白石が現場で何もできなかったことを伝えると、「明日はお前が乗れ」と言い残して去っていく。

 あくる日、珠代の手術が行われる。西条から見学を許された緋山は、ふいにその準備を止めると、自分がいまやらなければいけないことをやる、と言って出て行く。

 そのころ、美樹もオペに向おうとしていた。エレベーターを待っている間、藤川は、美樹に向って、フライトドクターになる夢を絶対に掴んでみせる、と話す。美樹は、そんな藤川に、最後の握手をしてほしい、と告げた。「私も…この感触、忘れない。ずっと」。美樹は、藤川にそういって笑って見せた。

 緋山は、珠代の息子たちだけでなく、親類らの電話番号が書かれたメモを手に、何度も電話をかけていた。珠代が目を覚ましたときにせめて誰かが側にいてほしい、という思いからだった。

 そんな中、ドクターヘリの出動要請が入った。工場で、若い作業員が工作機械に右腕を巻き込まれたのだ。レスキューによる救出作業は難航していた。黒田、冴島とともに現場に急行した藍沢は、大量血胸による心停止を危惧し、患者を助けるために右腕を切断する。搬送途中の藍沢からその報告を受けた白石たちは驚きを隠せなかった。三井は、そんな彼らに、早期の切断は賢明な判断だ、と告げた。

 緋山が手術を終えた珠代の元に向うと、そこにひとりの中年女性が立っていた。その女性は、怒ったような表情で緋山に近付くと、不意に手を差し出して感謝の言葉を述べた。その女性は珠代の姪だった。緋山は、涙を堪えた。

 手術を終えた美樹は、布団を被って泣いていた。藤川は、声をかけることもできなかった。

 白石が乗っていたエレベーターに、藍沢が乗り込んできた。白石から現場のことを尋ねられた藍沢は、暑かった、と答えた。普通の病院の1年の経験がフライトドクターなら1ヵ月でできるから凄い、と高揚したようすで話す藍沢を、複雑な思いで見つめる白石。「ここでワンミッションでも多くヘリに乗って、たくさんの症例をこなす。そして誰よりも早く…俺は、名医になる」。藍沢は、そう白石に告げ…。

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