チャド共和国
 
現場取材に同行して

チャドは、国民の6割以上が1日1.25米ドル以下の暮らしをし、世界で最も5歳未満時死亡率が高い国のひとつです。この国を昨年、異常なほどの雨不足、いわゆる干ばつが襲いました。その結果、食糧不足が起き、チャドの人びと、特に子どもたちは深刻な栄養不良による命の危険に晒され続けています。
今年、その厳しい状況の下で暮らしているチャドの子どもたちへの支援を決定し、2012年6月、FNSチャリティキャンペーンと「とくダネ!」取材チームと共に、アフリカ・チャドを訪れました。

 

栄養不良の子どもを抱える家族、20以上の家族を訪問しました。その家族の多くが、食糧庫の備蓄は尽きてしまってありませんでした。食べ物を手に入れるためには、市場で買わなければなりませんが、薪売り、水売り、などから収入を得るその日暮らしの生活、得られる収入も不安定な状況です。ある家族のお父さんは言いました。「食費はわかりません。早朝から夕方5時まで水売りをして働いて、得られた現金分がその日の食費になります。1000CFCA(約1.5米ドル)で買える食料が10人以上いる私の家族の食事です。」大家族で暮らしが基本のチャドの人びと。圧倒的に食べ物が足りていません。また、栄養不良の子どもの母親自身も栄養不良状態にあるという家族も何家族もありました。
「清潔で安全な水へのアクセス」も大体の家庭にとって難しいことでした。訪問した家庭のほとんどで、家庭にある水がめには汚れた水が溜めてありました。そして、その水を飲む子どもたち。焼け付くような日差しの酷暑のチャドで、のどを潤す水は汚れた水しかありません。
栄養不良に陥る危機に加え、感染症などの病気への高いリスクに日々さらされながら、子どもたちは暮らしています。病気になってしまうと、保健施設にアクセスできるか、保健施設で十分な治療やケアを受けることができるか、親が子どものために通院を続けることができるか、などの子どもの命を守るために必要な様々な条件があります。しかしチャドにおいては、これらすべてが課題です。

 

ユニセフ・チャドのマーセル・ウッタラ副代表の言葉がとても印象に残っています。「チャドは、生まれてくる子どもにとって大変厳しい環境です。この国で成長して大人になることはチャレンジなのです。」
人として生きるうえで守られなければならない権利、人として持つべき最低限の選択肢を人は持っているのだということを、改めて思い、その考えが強くなりました。
生きて、育つことが「チャレンジ」ではなく、「当たり前」となる環境を。

 

滞在の終わりごろ、雨季本番と思わせる大雨が降るようになっていました。1度に降る雨の量は非常に多いのです。干ばつとなることもあれば、洪水という自然災害になる可能性もあります。もともとが脆弱な国。気候変動による頻発する自然災害の影響は、人びとに苦しみしか与えません。自然災害に強い社会の構築を含めた開発支援が重要です。

 

チャドの子どもたちの状況を改善するため、ユニセフ・チャド事務所は、水と衛生、栄養、教育などの分野に重点を置いて取り組んでいます。チャドの子どもたちの現状を広く皆さまに知っていただき、チャドの子どもたちの健やかな成長のため、あたたかいご支援をお寄せいただけましたら幸いに存じます。

 

(公財)日本ユニセフ協会
個人・企業事業部 小野ちひろ