ポルトープランスの街角で見えたもの
 
FNSチャリティキャンペーン推進室 小林晴一郎
小林晴一郎 わずか4日間に満たない強行スケジュールでハイチの首都ポルトープランスを取材した。訪れたのは大地震で壊滅した首都のほんの一部に過ぎないが、矛盾に満ちたこの国の一端を見た思いを抱いている。

まず驚いたのが、ほとんど瓦礫の撤去が進んでいないこと。地震から半年が経過しているのに、市内の中心部でも重機をほとんど見かけなかった。撤去作業はほとんど手作業だ。これでは作業が進むわけもない。この国の人は、瓦礫があることを受け入れているように思えた。瓦礫の前に露天を連ねて新たな商売を始めているたくましい人たちがいた。聞いてみると、この国では土地の登記が進んでおらず、正当な権利者が誰なのか分かり辛い。そこに居座り続けないと他人に土地を横取りされてしまうこともあるという。地震で2階部分が崩落した家屋の残った2階の床部分にテントを張っている人を多く見かけたが、身の危険を感じながら瓦礫の上で生活せざるを得ないのも、この国の現実の一つなのだろう。

街を見下ろす小高い丘に上ると、厳重に鉄条網まで敷設してある塀に囲まれた高級住宅が点在している地区があった。建物は無傷で、敷地内にヨーロッパの高級外車が停まっている。そこから一本道を隔てて幾千ものテントが並ぶ避難民キャンプが広がる。その対比はどう表現すべきか言葉が出なかった。ハイチは極端な格差社会であるという事実を思い知らされた。この国には上流階級と最下層しかないのでは、と。

「破綻国家」。ハイチをこう呼ぶ人がいる。独立した一つの国を形容する言葉として、あまりにもネガティブな響きだが、この国の政府は腐敗にまみれ機能せず、リーダーが不在のまま、常に海外からの支援頼みだったのだ。地震前につぎ込まれた巨額の支援も、政府をまともなものにすることはできなかった。その当事者能力のない国の首都が地震で壊滅してしまったわけだ。半年たっても政府主導の震災対策で目につくものはない。

あらためて国際社会は、3月に国連本部で59の国と機関が総額99億ドル(およそ9200億円)にのぼる額の支援を表明した。地震を機にハイチ政府を国際社会の監視の下、根本から立て直すことを宣言したわけだ。地震以前にも巨額の支援をしてきた国際社会にとっても、もう待ったなしだ。

ユニセフが展開する「臨時の学校」でわれわれの取材に、目を輝かせて将来の夢を語ってくれた子どもたちを思い出す。国の将来にとって最大の宝は人材だ。あの子たちが成長し大人になるころには、ハイチが正常な国として歩んでいることを心から願ってやまない。