シエラレオネ共和国 現地取材に同行して
 
photo ユニセフが毎年発行している「世界子供白書」の統計によると、シエラレオネ共和国は、「世界最悪」の数字が記されていることが多い国のひとつです。2008年版の統計では、5歳未満児死亡率が1,000人出生あたり270人、4人に1人が5歳の誕生日を迎えることなく命を落としています。その死因の多くが、下痢性の病気やマラリアなど、予防可能な病気によるものです。そこからも、子どもが成長するにはとても厳しい国であることは明らかで、取材中に過酷な現実を見ることになるのだろうと思っていました。

実際に自分の目で見たシエラレオネの人々が生きる現実は、数字以上に過酷でした。働く場所がない大人たち、内戦で両親を亡くし居場所がなくて路上で暮らす子どもたち、病気になってもお金がなく治療が受けられない子どもたち、電気などの基礎的なインフラの欠如や専門スキルのある医師の不足などによって満足な処置がなされずに命を落としていく子どもたち…。
中でも、ダイヤモンド鉱山で出会った少年の姿が強く心に残っています。学費が払えずに学校を中退した彼は、家族のために、そしていつか学校に戻るための学費を稼ぐために、ダイヤモンド鉱山で働いています。しかし、現金はほとんどもらっていませんでした。取材中、「学校に行って勉強したい。状況を何とか変えたい。」という彼の強い気持ちを感じ、そして貧困が阻む現実の残酷さを痛感することになりました。貧困は、金銭的な欠乏だけを指すのではなく、子どもたちにとってあらゆる機会が奪われることだと思います。生存する、成長する、教育を受ける、保護を受ける、などの機会が奪われることによって、貧困は連鎖するのだと思います。

そして、滞在が終わりに近づくにつれて強く感じたこと、それは政府のキャパシティを高めることの重要性です。10年以上にわたる内戦の終結から7年が経ち、国の状況は、緊急支援が必要な状況から持続可能な開発支援が必要な状況に移行しました。しかし、国が抱える問題は多く、また複雑化しているので、シエラレオネ政府が単独で取り組むには、政府のキャパシティを超えています。政府レベルでの人材能力の育成や政策策定などのサポートが必要です。

シエラレオネのすべての子どもたちが健やかに成長できる環境をつくるため、ユニセフ・シエラレオネ事務所は、保健、教育、そして子どもの保護の分野に重点を置いて取り組んでいます。この取材を通じ、シエラレオネの子どもたちの現状を広く皆さまに知っていただき、子どもたちの明るい未来に繋がっていくことを願っています。

(財)日本ユニセフ協会 個人・企業事業部 小野ちひろ