フジテレビジュツの仕事
Mr.サンデー
2019年4月〜
毎週日曜日 22:00~23:15
- 美術プロデューサー
- 古川 重人
- アートコーディネーター
- 服部 孝志
- 大道具
- 新屋 貴之
- アクリル装飾
- 今井 輝彦
- 電飾
- 石井 誠
ビジュツのヒミツ①
スタジオセットにも「波紋」が
広がる!?

スタジオのデザインはロゴと同じく「輪」が
モチーフ。

大小様々のリングを組み合わせた世界では、
あちこちで“波紋”が広がっています。

MCが立つステージからは階段状に。

背景のオブジェは、斜め方向に輪がのびています。
それぞれのリングはすべてオリジナル。
アートフレームのスタッフが軽量の金属で作りました。

導光板まで曲げてしまいました。ちゃんと均等に光るのか、
ヒヤヒヤものでしたが何とか成功です。

微妙な角度で立つ不安定なオブジェ。
バランスを保つには、吊り点の位置と床への固定が
重要です。

見栄えとともに
安全対策をきっちり考えて慎重に設置。
毎週末の建て込み作業で、神経を使うポイントです。

壁にも波紋、床にも波紋。
プレゼンテーブルにもモチーフが活きています。

番組内容に寄り添うスタジオセットで
今週も「波紋が広がる話題のスクープ」に乞うご期待です。
2019年9月
ビジュツのヒミツ②
3次元のCGでニュースを
わかりやすく

たとえ映像がなくても、状況をわかりやすく伝える。
ニュース・情報番組にとって、なくてはならない表現となって
いるのが、CG映像による状況解説です。

取材でわかった状況をビジュアル化するには、3DCGが主流。
まず3次元の座標軸上に、
複数の面によって立体を
モデリングしていき、
仮想の3D空間を構成します。

次に、モデリングした立体に様々な質感を与えたり、コンピューター上でライティングを加えたりしながら仕上げていきます。

さらにアニメーションを加えれば、
1つの
ストーリー性のあるCG映像が完成するのです

イメージCGの制作では、たとえば昼間の現場画像を夜の情景に
するなど、元の画像素材をCG技術で
加工して、より伝わりやすくすることもあります。

見出しテロップのデザインにも番組ならではのこだわりが。
例えばこのタイトル。「もっと迫力のある効果を」ということで、こんなカンジのCGデザインに。

番組のオープニング、その日のトピックス紹介では
バーチャルCGチームが大活躍。

かつてはレンダリングに時間がかかることが問題でしたが、
今では作画ソフトやPCスペックの向上で、
リアルタイムでも画像生成ができるまでになりました。

もちろん手間をかければかけるほどクオリティーは
上がりますが
迅速さを求められる生放送の現場では、
「伝えるべき情報とは何か」を見極めシンプルに作るのも
重要なのです。
2019年9月
デザインのヒミツ

制作過程の案
ー4月からの新セットのコンセプトは?
齋田
番組が10年目に入って、プロデューサーから「斬新で、かつ情報番組として芯の通ったセットにしたい」との要望がありました。それを受けて、ディレクターが「“波紋”をモチーフにしたらどうか」と。各地の波紋を追跡して伝える、宮根キャスターが波紋を起こす……とさまざまな意味合いの“波紋”です。
新しいセットはその“波紋”を象徴した「円」をちりばめたデザインにしました。一番大きいオブジェはもちろん、MCが立つ台も円形。“波紋”はセットだけでなく番組の統一コンセプトとして、名前のテロップを乗せる座布団(=ベース)やワイプ(=画面の片隅で出演者の表情を映す小さな窓)の枠も、四角形の角を取った形にしています。モニターだけはさすがに角を削るわけにもいかないので四角のままですが(笑)。
ー色味のテーマは?
キーカラーはピンクと黄色です。「波紋」だと「水」を連想して水色にするのが自然なのかもしれませんが、寒色のセットだと冷たい空気感になってしまうんですよね。
「明日から明るく一週間を過ごしましょう」というメッセージを込めて、ピンクと黄色という明るい2色をメインに据えて、そこに薄ピンク、白、グレーを施しました。

ー“波紋”以外に特徴的なところはありますか?
MCが動けるスペースを出来る限り広くしています。通常の情報番組ではMCがカウンターの後ろに座って話すスタイルが多いのですが、カウンターを作らず、モニターも1台しか置かず、宮根キャスターが動き回れる空間を最大限まで設けました。モニターを減らした分、出しもののクオリティの高さが強調できます。
週末の情報番組なので、一週間に起きたことをわかりやすく噛み砕いて伝えなくてはなりません。踏切事故現場や沈没船の内部、火山の噴火口の模型など、いろいろな“作りもの”をふんだんに使える空間を確保しています。
ー特に苦労した点は?

「全部のパーツが円のセット」って、自分でイメージ図を描いてみたのはいいけど、どうやって建てよう、と……。アートフレームのスタッフに発注、というよりほとんど悩み相談でした(笑)。鉄骨や木(モク)のいくつもの輪を組み合わせる際、それらを支えるのにどうしても1本のまっすぐな芯が要るんです。“波紋”が広がっている世界の中にその棒が入ってしまうのが嫌で、その支え棒の表にも小さな円をたくさん貼り付けて、棒を見えなくしています。円だらけのセットが建った後、あるスタッフには「本当に建ったんですね。こんな形のセットは無理かと思ってました」と言われました(笑)。
ーこだわったポイントはありますか?
リング状の電飾ですね。導光板を使っているのですが、普通、導光板は板状のまま光らせたい素材にくっつけるところを、今回は輪の形に曲げたものを鉄骨に付けて光らせています。電飾スタッフとしても初の試みだったようです。
きれいに光るのを見て、ディレクターが「もっと導光板が欲しいなあ」と言ってましたが、もっとお金があれば、ですね(笑)。
照明スタッフも触発されたのか、“波紋”柄の照明をノリノリで作ってくれました(笑)。

ー視聴者に気付いて欲しい“遊び”の部分は何かありますか?
オブジェの輪はどれも、実はぐるっと完結した円になっていなくて、少し切れているんです。水面に広がる波紋って、完全に閉じた丸の形になっていないような気がして。それと、これらは実は正円ではなく、正円に見せかけた楕円なんです。正円だと大きさ的にスタジオに収まらなくて、だからといって小さくしてしまうとイメージとは違うものになってしまうので。閉じ切っていないひらけた空間、終わっていない、まだ伸びしろのある波紋――それを見つけて、“波紋”の広がりを感じていただけると嬉しいですね。
(2019年9月)

