フジテレビジュツの仕事
踊る大捜査線 N.E.W.
メトロポリスを駆け抜けろ!
2026年9月公開
- 美術プロデュース
- 三竹 寛典
- 美術助手
- 山本 瑠香
- 美術進行
- 大倉 謙介
- アートコーディネーター
- 日下 創太
- 大道具
- 永井 武
- 大道具操作
- 中本 晃幸
- 建具
- 岸 久雄
- 装飾
- 田村 一徳/宮崎 弦季
- 持道具
- 村石 幸二
- 電飾
- 須藤 希
- LED
- 齋藤 淳之介
- アクリル装飾
- 鈴木 竜/早坂 健太郎
- 小道具印刷
- 佐藤 好治
- 植木装飾
- 後藤 健/小笠原 了平
- 生花装飾
- 牧島 美恵/小柳 幸絵
- アートフレーム
- 曽根原 潤
- フードコーディネート
- はら ゆうこ/山﨑 千裕
デザインのヒミツ
ー久しぶりの美術スタッフ再集結ですね。
大倉
前作(「踊る大捜査線THE FINAL」2012年)から14年も経っていますし、美術の面々も随分変わりました。連続ドラマからだと30年近くになるので、同じ立場で関わっているのは、デザイナーと私くらいかもしれません。みなさん管理職になっていたり、引退されていたりしますから。映画版から関わった人もいますし、当時アシスタントだった人がチーフになっているケースもありますが、初めて参加する若手も多いです。
ー日下さんもそのうちの一人です。
日下
誰もが知っている作品なので、参加できて光栄です。アートコーディネーターの仕事として、モノを借りるとか、許可どりをすることがあるのですが、「“踊る”ならばぜひ協力を」と言われることも多くて、さすが「“踊る”ブランドはすごい」と実感しました。
ー今回、美術部門として苦労した点は?
麻布中央署
大倉
今回は副題にもあるように「メトロポリスを駆け抜けろ!」ということで、主人公の青島が活躍するエリアが、湾岸署のあるお台場からメトロポリスへとスケールアップしています。ということは、訪ねる所轄署が複数登場するわけで、デザイナーもそれぞれの特色が出るようにデザインを工夫していました。その上時代は令和なので、最先端のデータ処理施設もありますし、合同捜査本部も当時と同じというわけにはいかない。湾岸署がベースだった頃とは違って、セットもロケ飾りも作業の分量はかなり増えたと思います。
八重洲警察署
台東警察署
警察庁円卓会議室
警視庁モニター解析ルーム
日下
特に合同捜査本部の設営・装飾が大掛かりでした。巨大なスペースを借りることができたので、めいっぱい飾る必要がありました。美トラ20台分の物量がありましたし、大道具はもちろん、装飾、電飾、ビジョンなどほとんどの部門が関わったので、スタッフも総勢80人、アルバイトも30人はいたと思います。相当数のビジョンに囲まれたシャープな空間になっていて圧巻です。
ー『踊る大捜査線』といえば小道具へのこだわりも話題です。
大倉
そもそも連続ドラマの頃から、制作サイドやキャスト(特に織田裕二さん)から小物についてのいろいろな提案があったんです。すべての小物がキャラクターづくりに結び付くわけで、「青島だったらこれは持たないだろう」とか「普段の行動から考えると引出しにはこれが入っている」など、美術スタッフとの会話から始まった小道具もかなりあります。その後、コアなファンの方が細かいところまでチェックして話題にしてくれて、美術スタッフもどんどん気が抜けない状況になっていきました。
有名なものとしては、映画版で青島が使った「平成14年度湾岸署総合運動会」と書かれた景品のボールペン。織田さんに「何か書く物ある?」と言われて普通のボールペンを渡したところ、「何か個性が欲しいよね」と振られまして。高級な物でなく、「刑事なんだから使い捨てのボールペンを引き出しにため込んでるんじゃないか?」と話し合って、“署内の景品の余り物”に落ち着きました。平成14年度の物は『movie2』の時に作りました。その後の作品でも平成21年度版を追加して、古い物と新しい物を混ぜて小道具としてデスクに入れていました。青島にも歴史があり、何年経っても性格や癖が変わらないことを表現したつもりです。織田さんが見つけて喜ぶのを見たいということもあります(笑)。かつて爆弾装置解除で使用したマルチツールナイフも、織田さんからのリクエストで作ったものです。
保管されていたバッジ
ーそういう小道具類は保管しているものなんですか?
日下
そのまま使うことはあまりないのですが、今回もリメイクしたものはいくつかあります。たとえば署員が胸につけているバッジは、デザインデータを残していたので再現しました。実物も持道具の会社に保管されていて、材質や凹凸などをチェックするのに大変役に立ちました。青島の緑のコートも歴代のものを衣裳部が一部残してあったので、この夏のフジテレビイベントで展示することになりました。会場では、湾岸署内の自動販売機で売られていたカップ麺「ザ・湾岸ラーメン」のパッケージも展示されていますよ。
保管されていたバッジ
大倉
再現するものもありますが、30年の時の流れがありますので、映画が製作されるごとにその時代に沿ったアイテムが必要となります。ニュアンスは残しながら新たにデザインしていくというのが基本でしょうか。お台場の様子もその時代その時代で変化していますし。
ーお台場というエリアを強く印象付けた作品です。
大倉
連続ドラマを撮影していた時は、まだフジテレビは引っ越しが終わっていなくて(1997年3月完了)、新社屋で一番大きなV4スタジオでドラマを撮るのは『踊る』が最初だったんです。できたばかりのスタジオを下見に行った時は、何て広いんだろうと思った記憶があります(300坪)。そこにみっちり巨大セットが建つわけです。当時のスタジオドラマは、狭い空間にいかに効率よく撮影できるセットを建てるかという工夫がされていました。「こっちから撮る時はこの壁を外して」とか、「この廊下の先は隣のセットのここにつながる設定」とか。ところがデザイナーは、湾岸署の1フロアを丸ごと天井付きで建ててしまったわけです。オープンセットでもない限りなかなかないケースで、普通にセット内で迷うこともありました。その中をステディカムが縦横無尽に動き回る。当時のフジテレビドラマとしては、画期的な空間でした。
刑事課(1997年)
喫煙所(1997年)
拳銃保管庫(1997年)
拳銃保管庫(1997年)
湾岸署廊下(1997年)
ーロケ撮影では、当時のお台場が背景としてよく出てきました。
大倉
はい。ドラマの設定でも湾岸署は“空き地署”と呼ばれていたくらいで、まわりにも商業施設はほとんどありませんでした。居酒屋も1軒しかなくて、行くとたいていいつもの面子(笑)。なので役者さんもスタッフも、行くところもないのでずっとスタジオにいるんです。まるで“合宿”のような状態ですので、どっぷりドラマ漬け。ずっとドラマの内容のことばっかり話していましたから、小道具や衣裳など美術に関するアイデアも、そこでの会話から生まれたものが多いですね。私も当時は20代でしたし、制作も美術も同年代の若いスタッフが集まっていましたから、面白がって次々と採用されていくんです。熱もあったし、ノリがよかったので、美術サイドからもどんどん提案しましたし、スペシャル版や映画へと進んでいく中でも、引き継がれたり展開したりするんです。宅配便の「カエル急便」やスリーアミーゴスの手土産「台場レインボー最中」など定番化したものもあります。
大倉
衣裳もかなりの人数が出る中で、一人一人のキャラクターを考えて用意していました。最初は遊び心でやっていたようですが、たとえば「係長の動物柄ネクタイ」などは、出演者から「次は何の動物?」と期待とプレッシャーをかけられるようになっていき、当時の衣裳スタッフは動物柄のネクタイを見つけるととにかく購入していたそうです(笑)。そんなふうに想像力を働かせて面白がりながら、細かいところまでこだわってクオリティを落とさずに作り続けたことで、コアなファンの方のアンテナにも引っかかったんだと思います。
ー今回の映画でも現場の空気はそんな感じでしたか?
日下
今回はロケ撮影がベースでしたから、スタジオで“合宿”ということではなかったんですが(笑)。でも役者さんの演技や画づくりに美術の演出が大きく影響するということは、現場でもひしひしと感じていましたので、緊張感をもって臨みました。特に先輩たちには小道具や飾りの“ニュアンス”の確認をすることが多かったですね。長い間続いている作品なので、制作サイドからも時々「あん時のアレの感じで」みたいな指示もあるんですよ。とはいっても同じものを用意するというのとは違うので、意図する“ニュアンス”をつかむのが大変でした。
大倉
今回はデザイナーもさんのほかに3人加わり、アートコーディネーターも私と日下という態勢なので、ある程度作業分担をしました。全体はベテランが見ますが、舞台が今の東京なのであらゆるアイテムがアップデートされています。そのあたりは若手の感覚でアプローチした方がいい、という考えです。
日下
それぞれのキャラクターが使うデバイスなどのアイテム、チラシや名刺のデザイン、令和の時代の街並みや流行りのスポットの飾りは現代に合わせていきますが、それらが“踊る”の世界観にマッチするのかどうかは確認が必要です。ですからデザイナーたちもそうだとは思いますが、「当時はどういう理由でこの小道具をチョイスしたのか」とか「美術セットのこの部分はどういうコンセプトに基づいてデザインしたのか」とか、目に見える表面的なことではなくて“考え方”を聞くことが多かったです。それを分かったうえで、現代アレンジをしていくというプロセスですね。
ー美術として注目してほしいところは?
大倉
たとえば、かつて青島と室井が語っていた喫煙所のシーンを覚えている人もいると思いますが、今回の映画では警視庁の喫煙所が“休憩コーナー”に作り変えられています。どう見ても「前は喫煙場所だったよなあ」という感じですが(笑)。そんなふうに30年前から幾度となく作品が制作される度に、その時期の社会の変化が美術の飾りに反映されています。長い間愛されてきた作品だからこその、美術スタッフの思い入れも感じ取ってもらえると嬉しいです。
警視庁休憩コーナー
警視庁MOC
セブンベアイベント会場 バックヤード
セブンベアイベント会場 バックヤード
警視庁クリニック
旧湾岸署・表
(2026年8月)




