フジテレビジュツの仕事
人事の人見
2025年4月~7月放送 毎週火曜日 21:00~21:54
- 美術プロデュース
- 吉田 敬
- アートコーディネーター
- 武田 俊介
- 大道具
- 内海 靖之/村山 美咲
- 大道具操作
- 小野 将志
- 建具
- 白岩 竹雄
- 装飾
- 西村 徹
- 持道具
- アライリエコ/瓜田 琴子
- 衣裳
- 西牧 奈浪/森本 茉由
- メイク
- 上野山 聖菜
- 視覚効果
- 川上 勝大
- 電飾
- 寺田 豊
- アクリル装飾
- 石橋 誉礼
- 小道具印刷
- 石橋 誉礼
- 植木装飾
- 後藤 健
- 生花装飾
- 牧島 美恵
- フードコーディネーター
- はらゆうこ
デザインのヒミツ
ー「日の出鉛筆」のオフィスはどういうイメージでデザインしたんですか?
大石
大きな文具メーカーなので今っぽくセンスのいいオフィスに仕上げていますが、一方で社長がワンマンっぽいとか古い体制も残る老舗のニュアンスもところどころに忍ばせています。あとはメインの舞台が人事部なので、ちゃんとオフィスというか“事務作業場感”が漂う空間になるように意識しています。

人事部
ー人事部の美術セットにはどういう特徴がありますか?
ここの人事部は、きっちりした人から軽めのキャラまで色んな個性が集まっているので、それぞれデスクに向かって仕事に没頭するというよりは、みんなが入り乱れて話す場面が多いですよね。ということもあって、撮りやすいようにデスクの配置を“斜め”にしたり、デスクのかたまりである“島”の間隔を空けて、様々な動線を確保したりできるようにしています。色の面では、人事部のキーカラーは「ネイビーブルー」にしました。それを中心にしつつ、「オフィスワークの中にも人としての温かさ」を感じてもらえるように「ブラウン」と「オレンジ」を配色しています。
あとは、それぞれのキャラクターが際立つようにデスクの“飾り”も細かく工夫しています。主人公は“元バックパッカー”なので、海外で出会った人からもらったと思われる“変テコ土産”がデスクに置いてあったり、自由奔放な性格なので職場にカプセルトイを持ってきていたりします。あまり仕事をしないキャラには、週替わりの美容グッズを用意しています。

人見のデスク

須永のデスク

人事部・大会議室
ードラマに出てくる他の部署はどのようにデザインしたんですか?
実は人事部の会議室セットを建ててある空間を飾り替えて、いろんな部署のオフィスにしているんです。キーカラーも商品企画部は「紫」、マーケティング部は「黄色」というように変えましたし、デスクや棚の配置はもちろん小道具・装飾も思い切って変えて、5、6パターンの部屋をデザインしました。ですから、舞台裏の装飾置場は全ての部署分のアイテムが置いてあるのでえらいことになっていまして、その都度スタッフ総がかりで作業して別部署に大変身させています。結果、随分違って見えると思いますが、実はどの部署にも共通して置いてあるものがあります。それは文具のディスプレイ棚。つまり「日の出鉛筆」の商品を陳列している場所なんですが、文具って「使ってみたい楽しさ」がおもちゃっぽくデザインされているものもありますよね。カラフルなマーカーのキャップなど、色彩の面でもオフィスに置いてあるといいアクセントになるんです。どこに置いてあるのか、探してみるのも面白いかもしれません。

人事部・大会議室

商品企画部

文具棚

セットとの繋がりに違和感が生まれないように一部、躯体の蛍光灯を隠す美術スタッフ
ー今回はスタジオではなくて、全編ロケセットなんですね。
そうなんです。なのでお借りしたオフィスの雰囲気をうまく活かすようにデザインしています。オフィスセットの一部の壁も、躯体部分を活かしているところがあります。壁のコンセントもちゃんと使えるんですよ。人事部内の白い柱もそのままですし、床もカーペットもベースは活かしつつ一部にテーマカラーを入れるなど、ちょっとした装飾テクニックでオリジナルの空間になるように工夫しました。元のスペースの照明は蛍光灯なんですが、そこは照明スタッフがこだわってフィラメントが見える「エジソン電球」を足すなどして、いい感じに仕上げています。また、オフィスセット内での撮影以外でも、吹き抜けの渡り廊下やフリースペースもよく登場しますし、もともと置いてあったおしゃれなアートをそのまま使っているところもあります。ただ、スタジオと違って建物をお借りしてセットを組む場合に苦労するのは「搬出入」です。セットパーツをエレベーターに載せられる大きさにしなければならないので、大道具スタッフの緻密な計算が必須なんです。

セットとの繋がりに違和感が生まれないように一部、躯体の蛍光灯を隠す美術スタッフ
ー第5話では、建物全体を使った「ファミリーデー」が催されましたね。
山本
その飾りは私が担当しました。「日の出鉛筆」の社員になったつもりでコンセプトワークから始めて、まずはメイングラフィックをデザインしました。ポスターの図柄としては、「文具の楽しさ」をカラフルな色使いや鉛筆で描く曲線で、「ファミリー感」を大人と子供の腕のイラストで表してみました。そのフレームを案内板やチラシなどに展開して、催し物全体のイメージをつくろうと考えました。建物のあちこちがロケ場所になるので、フラッグや風船でイベント感を出したり、各コーナーでの企画を考えたり。お子さんが楽しめるように、スタンプラリー用の台紙もちゃんと作りましたし、「自分の名刺を作ってみよう」コーナーもあります。輪投げの台もスタッフの手作り、鉛筆型のバルーンは美術プロデューサーが膨らませてくれました。「ポスターの図柄をTシャツにプリントして、洗濯物みたいにロープに吊るすのはどう?」なんて思い付きを実際にやってみるとか、文化祭の準備をしているような気分で飾っています。

5話「日の出鉛筆ファミリーデー」メイングラフィック

5話「日の出鉛筆ファミリーデー」グラフィックもの
ー小さなステージもありましたね。
はい。そこも手作りイベント感が出るように、あえて細かく作りこまないようにしています。鉛筆の素材感とつながると思って、背景にはフォークリフトでの作業で使う「ウッドパレット」を利用しています。“在りモノ”を組み合わせるニュアンスですが、密かに注目してほしいと思っているのは、背景に置いてある三角オブジェ。これはもともと“アゲ”と呼ばれる三角形の平台で、三角定規に見立ててカラフルにペイントしました。「意外と可愛い」とスタッフの中で話題になったんですよ。

5話「日の出鉛筆ファミリーデー」ステージ

「アゲ」の平台で作った三角定規オブジェ

5話「日の出鉛筆ファミリーデー」道具帳
ー文具メーカーとしては、グラフィックデザインはとても重要です。
そうですね。今回は「日の出鉛筆」の社名ロゴデザインも私たちが担当しました。エントランスのシーンでよく映っていますが、鉛筆っぽい3本の線の下に「HINODE pencil」と書かれているあれです。ドラマでは、台本に書かれていなくても美術スタッフが色々と想像を巡らせて設定やイメージを提案していくという作業がよくあって、そこが腕の見せ所であり難しい点でもあるんですが、今回もちょっとそういう作業をしました。それは、今っぽくセンスのいいイメージ戦略に切り替える前、「日の出鉛筆」のロゴはどんなだったんだろう、という点。私たちなりに想像を巡らせ、ちょっと古臭いロゴもあわせて考えてみて、そこからの進化系ということで今回のロゴを提案しました。もちろん以前のロゴがドラマに登場することはないんですが、そういう作業も楽しみながらやるようにしています。時間的に余裕があれば、という条件付きですけれど(笑)。

日の出鉛筆のロゴを使用したグラフィック

日の出鉛筆株式会社ロゴ

主人公のリュックにぶらさがる「並行世界うさぎ」
ーほとんど「日の出鉛筆」の専属社員デザイナーという感覚ですね。
その流れでは、第2話に登場した作家の「あさきゆめみ」さんにもなりきってやっています。主力商品の「シルキーボール」のリニューアル企画でコラボしようとしている方なんですが、主人公がスマホカバーに貼っていたシールや、バッグにぶら下げているマスコットチャームのキャラクター「並行世界うさぎ」の作者なんです。今後の展開では、彼女の生み出す違うキャラクターも登場するかも?

主人公のリュックにぶらさがる「並行世界うさぎ」
(2025年6月)