フジテレビジュツの仕事

    世にも奇妙な物語

    1990年~ 不定期放送

    • 美術プロデュース
      大倉 謙介/吉田 敬
    • アートコーディネーター
      平田 貴幸/渡邊 康典/矢島 幹之/青木 陽太郎/岡村 正樹
    • 大道具
      内海 靖之/永井 武
    • 装飾
      宮崎 弦季/松山 紗希/錦織 洋史
    • アクリル装飾
      國母 淳一
    • 持道具
      網野 高久/佐々木 ちほ/藤嶋 祐樹
    • 衣裳
      森岡 美代/西脇 穂乃香/木村 美姫
    • ヘアメイク
      染川 知美/對馬 晶子/藪西 智美
    • 美術車両
      ショウビズクリエイション

    デザインのヒミツ

    ー1990年から続くオムニバスドラマシリーズで長い歴史がありますが、いつからデザインを担当しているのですか?

    竹中 健

    竹中

    以前担当していたデザイナーからメインを引き継いで、約4年になります。ドラマ自体に関わり始めて20年位です。“奇妙”はオールロケーション撮影が基本なので、美術デザインの仕事としては「ロケ飾り」がメイン。というところから、かつては“若手デザイナーの登竜門”的な番組でしたが、僕が担当した頃はメイン監督の顔ぶれも決まってきていて、長く付き合うようになったので、今もまだやっています。若手にシフトしたいのですが、勝手がわかっているからか、なかなかそうはさせてもらえません(笑)。

    ーテーマ曲とともに、ストーリーテラーのシーンのイメージが強烈ですね。

    これまでもストーリーテラーの場面だけはスタジオに美術セットを組んで、番組の世界観を表現するやり方が続いていました。最近では簡易的に黒幕で覆った空間に、奇妙な小道具でアクセントをつけたり、床材でニュアンスを出してみたり、照明効果を駆使してみたりと、抽象的なイメージづくりを工夫する回も増えてきました。今回の「‘23秋の特別編」でもそのあたりを見てもらえれば。

    世にも奇妙な物語

    ー最近でスタジオに美術セットを建てたケースはありますか?

    2021年と2022年に建てました。2021年の美術セットは「無限に続く階段」がモチーフです。監督から出たキーワードは「無限に続く時間」「時間軸がおかしい空間」というものでした。“時間”がテーマのお題でしたが、安易に時計などの分かりやすいもので表現することはやめて、階段をメインのシンボルとして使うことにしました。
    タモリさんの身長ギリギリの天井を作ったり、全体的にオーバーパースでデザインしたりして、現実にはありそうでなさそうな空間を狙いました。階段の大きさや高さを考えて歩幅を乱し、歩く時間が変わるように計算した“奇妙な空間”です。

    世にも奇妙な物語
    世にも奇妙な物語
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    ー特に意識した点は?

    仕上げは、奇妙だからといっておどろおどろしくならないようにしました。その分、明かりが当たるところと影ができるところを意識して構成しています。照明スタッフと話して、奥の空間は暗くして影が出るようにライティングしてもらい、何かが潜んでいそうな怖さを演出しています。

    世にも奇妙な物語
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    ー2022年の美術セットはどういうものですか?

    不思議な駅のホームをイメージした空間です。監督からは「いろんな人生があって、いろんな道があるので、“道”をテーマにしたい」という話がありました。それを踏まえて、物語がいろんな方向へ出発する「駅」をモチーフにしました。
    美術セット内に線路を敷くことも考えましたが、もっと抽象的にしたいと思い、パイプや配管などを使い、地下鉄やトンネルの暗さや怖さを表現してみました。駅によくあるプラスチック製のベンチや、ホームにある時計、数字の入った看板などで駅のニュアンスを加えています。あとは、ホームの天井を表現するために大きな天井セットを作り、規則的に並ぶ蛍光灯が印象的に映るように考えました。

    世にも奇妙な物語
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    ードラマ撮影の際には、どういう仕事をしていますか?

    奇妙はロケーション撮影が基本なので、もともと撮影場所にない壁や建具が必要であれば持っていきます。デザイナーとしては、現地で組み上げられるように図面を描いたり、小道具や看板など飾りの配置などをチェックしたりします。意図した映像が撮れるように、照明スタッフと打ち合わせることもあります。各話で監督が違いますが、ベテランになるとそれぞれ長い間チームを組んでいる技術スタッフと美術スタッフがいるので、監督の指向性やクセなども理解していて、コミュニケーションはスムーズです。

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    ー美術の立場から、今回の「‘23秋の特別編」で見てほしいところは?

    「時間を止める装置」でしょうか。監督のイメージでは量子コンピューターのようなものということだったのですが、そもそも現実には存在しない装置なので、色々なものを取り入れてオリジナルの物体を創造しました。特殊装置担当で金属加工もできる美術協力会社のスタッフと一緒にあれこれ試行錯誤して、コード類やシリンダー類、様々な機械のパーツなどを組み合わせた合成図を作ってプレゼンしました。しかも「上から垂れ下がっている装置」という注文もあって、苦労の末何とか形にした「世にも奇妙な小道具」なのでぜひ見てもらいたいです

    世にも奇妙な物語
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    ーその他デザイナーとして心掛けていることはありますか?

    これはフジアールデザイナーに脈々と伝わっていることだと思いますが、出来上がったセットの中で「自分で動いてみる」ということです。セットにしても小道具にしても、頭で考えただけでは不十分で、自分で使ってみないと分からないことがたくさんあります。たとえばドラマの場合、朝起きて、トイレに行って・・・という一連の動きを役者さんの立場でやってみると、「この家具の配置だと間は狭くて通りにくいな」とか「歯ブラシの置き方はこっちの向きの方が使いやすいな」とか、犯人だったら「まず何を持つのが自然か」とか「どう逃げるか」とか、実感として理解できます。そこで、安全面を考えた微調整もできますし、自然な演技を支えるセッティングも可能です。デザイナーに限らず美術スタッフ全員に必要な心得かなと思います。

    (2023年11月)

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