フジテレビジュツの仕事

    シャーロック

    2019年10月〜12月 
    毎週月曜日 21:00〜21:54

    • 美術プロデュース
      三竹 寛典
    • アートコーディネーター
      山口 貴章
    • 大道具
      内海 靖之
    • 大道具操作
      吉田 精正
    • 建具
      岸 久雄
    • 装飾
      田村 一徳
    • 持道具
      村石 幸二
    • 衣裳
      吉村 悠
    • メイク
      外山 隼人
    • 視覚効果
      大里 健太
    • 電飾
      寺田 豊
    • アクリル装飾
      白勢 篤史
    • 小道具印刷
      石橋 誉礼
    • 植木装飾
      後藤 健
    • 生花装飾
      小柳 幸絵
    • フードコーディネーター
      住川 啓子

    ビジュツのヒミツ①

    美術セットでも、
    シャーロックVSワトソン

    犯罪コンサルタントの誉獅子雄(SH)と相棒の若宮潤一(JW)。
    あまりにも有名な2人と同じイニシャルを持つ最強バディの拠点がこちらのマンション。

    もともと若宮が一人で住んでいた部屋は、
    医師らしく清潔な空間が基本ですが、リノベーションのセンスがあちこちに。

    ガラスブロックをアール状に配置した仕切り壁を作ることで、
    光の反射を楽しめたり、

    “ティンシーリング”風にエンボス加工した壁紙が
    のっぺりしがちな天井にニュアンスを加えたり、
    すぐ使えそうなさりげないアイデアが満載。

    むき出しの配管や柱の接合部も
    ロフト風おしゃれ感を演出しています。

    一方、誉の部屋はモノがあふれる雑然の極み。
    一つ一つは“ベーカー街っぽい”アイテムなのですが、
    いきなり第1話から雨漏りがひどくて引っ越すハメに。

    雨漏りシーンでは大道具スタッフの「汚し」の技が冴えます。
    天井もエライことになっていました。

    第1話で同居することになった二人ですが、
    テレビジュツ的に見ると、ここから2つの世界観のぶつかり合いが始まっていくことになります。

    清潔だった部屋にぶら下がったサンドバッグ。
    おしゃれなテーブルの上に散乱する資料。
    これから“シャーロック”アイテムが
    どれだけ部屋を侵食していくのか注目してご覧ください。

    2019年10月

    ビジュツのヒミツ②

    事件の数だけ現場セットがある!?

    メガシティー東京で起こる様々な事件。
    そんな“アントールドストーリー”をモチーフに
    展開するドラマ「シャーロック」。

    事件の手がかりとなる小道具も一つ一つこだわって制作します。
    たとえば第3話に登場するこの木箱。
    演出のイメージ通りのサイズのものをオリジナルで作りました。

    帆船が彫られた蓋の材料は、MDFと呼ばれる紙圧縮ベニヤ。
    デザインデータをルーターマシンに記憶させ彫り込みました。
    重厚な木の質感はエイジング塗装の技です。

    さらに1話完結の「刑事・探偵ドラマ」につきものなのが、
    毎回違う事件現場、そして毎回違う登場人物の立ち回り先です。

    ロケーション撮影と組み合わせながらも、
    重要なシーンはセットでの撮影ということが多くなります。

    ということで、シャーロックの収録スタジオも
    舞台裏は色んな“現場セット”が激しく出入りすることに。

    容疑者の自宅だったり、勤め先だったり、犯行現場だったり…。
    もちろん予算がありますので、ユニットやセットパーツを
    駆使して効率的に建てていきます。

    大道具倉庫には第1話に登場した「クレオパトラ号」の
    キャビンセットの一部も保管してありました。

    通常、このようなイレギュラーセットは、
    大道具会社の工場である程度作ってから運び込みますが、
    最終調整を現場でやるので、修正用の材料も持ち込みます。

    “小口隠し”に使う材木や、セット制作で使ったものと同じ塗料、
    壁紙、床材などは必須アイテムです。

    もちろん飾り変え用の装飾・小道具も
    用意しなければなりません。
    毎回パズルのようなスタンバイが延々と続くのです。

    なので、書き間違いもたまにありますが、ご容赦くださいませ。

    2019年10月

    デザインのヒミツ

    シャーロック・ワトソンのマンション

    ー主人公2人のそれぞれの部屋のイメージは?

    柳川

    監督からの要望は、獅子雄の部屋はクラシックな雰囲気、そして精神科医の若宮の部屋は清潔感を重視したい、というものでした。セットデザインにあたっては、獅子雄の部屋は茶系の暗い色合い、一方の若宮の方には白と明るい木目を基調にしたセット、と対照的な印象の2つの空間を作ろうと思いました。

    ー特にこだわったポイントはありますか?

    原作でいうと、シャーロックに対して、ワトソンは女房役です。気遣いと優しさがあり、上手くシャーロックのフォローをしているイメージです。その部分をセットで表現しようとした時に、若宮の部屋はただ単に清潔感を表現するだけではなく、優しさも表現したいと思いました。清潔感は明るい色目で、優しさは曲線で表したのが、今回のメインセットである若宮の部屋の大きなこだわりです。それを監督に理解してもらうのにも一苦労しました(笑)。

    シャーロック 平面図

    ー第2話から2人は同居しますが、同居以降の若宮の部屋の変化はどう表現していますか?

    几帳面な若宮の部屋が、自分の家に住めなくなって突然転がり込んできた獅子雄によって一転してしまった――整った空間から、一気に秩序がなくなってしまった光景をイメージしました。獅子雄の自己中心的な空間づくりによって、若宮の部屋は完全に乗っ取られてしまった、いわゆるカオスの状態ですね(笑)。

    ーコナン・ドイルの原作のイメージを意識した部分はありますか?

    原作を意識したドラマ作りは番組プロデューサー、監督の領域です。デザイナーとしては、今まで放映されてきた数々のシャーロック・ホームズ作品は観てきましたが、時代背景も国籍も全く違うので、特に意識はしませんでした。

    ー視聴者に見てほしいところは?

    今は、我々世代にとって懐かしいとも言える1980〜90年代のトレンディーなファッションやアイテムが、一周回って斬新に捉えられている時代です。このドラマのセットにも、「懐かしい要素」を「新しい要素」と捉えて随所に取り入れました。今の時代のセットデザインに一石を投じることができたのではないかと自負しています。視聴者のみならず、若手のデザイナーにとっても刺激になればと思います。

    (2019年10月)