テレビ美術界最高峰の賞 
第45回伊藤熹朔賞・本賞を受賞!!
「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- THE THIRD SEASON」
授賞式レポート

第45回伊藤熹朔賞・本賞を受賞!!

聞きなれない賞かもしれませんが、「伊藤熹朔(きさく)賞」は、テレビ番組のすぐれた美術セットをデザインしたデザイナーを表彰する、テレビ美術に特化した日本で唯一の賞です。
文学界における「芥川賞」のように、舞台美術の専門家として今日の演劇・映画美術に多大な功績を残した故・伊藤熹朔氏の名前を冠しています。

そして、このたび「コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命- THE THIRD SEASON」が、フジテレビの番組としては7年ぶり6度目の本賞を受賞!!栄えある授賞式が9月8日に都内で開催され、受賞者の飯塚洋行デザイナー(株式会社フジアール)が喜びを語りました。

飯塚洋行デザイナー(株式会社フジアール)

「この素晴らしい賞がとれたのも、周りの皆さんのおかげだと思っています。
プロデューサーの増本さんと監督の西浦さんのお二人には厳しくご指導いただき、本当に“千本ノック”のように図面を描き、気づいたら、終わるころには“タウンページ”ぐらいの厚みになっていました(笑)。だからこそ、このクオリティの高い美術セットが、美術スタッフ、協力会社や色々な方のお力を結集して具現化できたのだと思い、とても感謝しています」と述べ、「常に高いレベルのクオリティを求められていた番組でした」と振り返りました。
また、「『コード・ブルー』をやっていて常に考えていたのは、まずリアルをとことん追求して、その上でいかにデザイン、画作りをしていくかということ。それが臨場感や緊張感につながったと思います。『コード・ブルー』に日々全力で向き合ってきて、それがデザインやセットに現れて評価していただけたのかなと思います。『コード・ブルー』だからこそとれた賞だと思うし、この作品に参加できたことに感謝したいです」と喜びをかみしめていました。

増本淳プロデューサー

また、「コード・ブルー」シリーズ全3作と現在公開中の「劇場版」も手掛けたフジテレビの増本淳プロデューサーは、
「フジテレビの受賞が7年ぶりということで、飯塚さんの大先輩のデザイナーに聞いたところ、その先輩は一言、『病院のセットでこの賞をとった人はいない』と仰った。まさしくそうで、個性が出しづらい大学病院のどこをどう作れば、うまいセットになるのかと僕自身思っていました。」と語り、セットに込めた思いと制作の舞台裏も披露しました。
「『コード・ブルー』は自分の中で医療ドラマとしては最後かなと思い、これで全部出し尽くしたと思いたかったので、それだけ思い入れが強かったのです。そこで、飯塚さんには早い段階で打ち合わせをしたいと、クランクインの半年ぐらい前に初めて会いました。
たいして広くもないスタジオで、どうしても大病院に見せてほしいとリクエストしたのです。見えているセットがかっこいいのは当たり前ですが、彼に求めたのは、手前のセットの奥に抜けて見える使っていないセットも成立するように、どこから撮っても背景に別のシーンで使うセットが見えるようにすることで大病院に見せるようにしたいということ。言うのは簡単ですが、そのリクエストに応えるうちに“タウンページ”になった、と(笑)。最終的にそれを実現してくれて、僕は今では彼をすごくリスペクトしています。窓の位置も柱の1本1本まで全部自慢できるセットになったなと心から思います。
これからも飯塚さんのような優れた美術デザイナーが腕を振るう場を提供できればと強く思います。“タウンページ”のような大変な作業でも、出来上がった番組を見て、それをやってよかったと思えるような企画や台本を持ってまた飯塚さんのもとに行きたいと思います。」と祝辞を述べました。

授賞式では、最終審査の審査員を務めた放送ライブラリーの峰野千秋さんにより、「コード・ブルー」が満場一致で本賞に選ばれたことが明かされ、審査員が評価したポイントが解説されました。

今回の3rdシーズンは前作から7年ぶりの放送とあって、病院が「フルリニューアル」されたという設定でセットを一新。最終審査では「本当の病院の中のロケと思えるほどリアルで緊張感のあるセット」「このセットは一つの機能的な建物である。機能美を感じる。余計な装飾がなく、クールで清々しい」など、建築学科出身のデザイナーの力量を発揮した素晴らしいセットだったと総評されました。

医療ドラマは、「進化し続ける医療設備に追いついていく苦労もある上、今回の病院のセットは、スケール感と共に、綿密な色彩計画による洗練されたグラフィックデザインが素晴らしかった。特に、デザイナーがこだわった各階のカラーリングが秀逸。シリーズを通して、エレベーターのシーンが効果的に使われていますが、今回、エレベーターの扉が開くと、各階のテーマカラーが一瞬で目に飛び込んでくる事が印象的でした」とのコメントを披露。

色分けプラン

これまでのシリーズ同様、2階建てのセットについては、「さまざまなカメラアングルにより、どのシーンでも広々とした病院の奥行が感じられた」との評価はまさに、制作側の狙い通りのセットとなったことが裏付けられました。また、「空間の使い方と共に、光を通す素材を多用したことにより、セット全体が明るく、現在の大学病院らしい清潔感が表現されている」と、7年の歳月を経てアップデートされたセットを高評価。

病院のセットへの高い評価のほか、「この作品のもう一つの見せ場の事故現場の再現もきちんとされていて、ドラマに厚みがある」「骨太でありながら、デザイナーの若々しいセンスが感じられる、フジテレビらしい洒落た作品」といった意見も紹介されました。

「衣裳、ロゴ、ヘリポートなど、番組全体に統一されたイメージがあり、昨年の夏、話題となったこの番組の高評価は、この洗練されたイメージを作り上げた美術の貢献度が高かったと思います」と美術スタッフ冥利につきるお褒めの言葉を頂戴し、「『コード・ブルー』の伝統、チームの力を感じる作品だった」と、絶賛されました。