あらすじ
<第10回> <第11回>

<第10回> 「さよなら小津先生」
 小津(田村正和)は、男子バスケ部の新人戦出場のために辞職することを決心した。出場決定を加藤(ユースケ・サンタマリア)を通じて練習中の浩二(森山未来)、光(脇知弘)、淳(忍成修吾)、健太(勝地涼)、剛(EITA)に伝えると、5人は小津のもとへ駆け寄って来て、興奮した口振りで口々に決意を語る。小津は、何も答えられず複雑な思いでそれを聞くしかなかった。
 島谷(大杉漣)は、小津が学校を辞職すると聞いて、銀行に復職することをさらに説得した。小津は、島谷らが本気で銀行を立て直す気があるのかと、島谷を問い詰めた。島谷も「自分のしたことから逃げない。お前が学校でしていることと一緒だ」と意志を語る。だが小津は「ただ、やり残していることがある。カトケンを私の代わりにするまで・・・・・・」と呟くのだった。
 そんなころ加藤は、みゅー(瀬戸朝香)を自分の部屋に誘って小津の高級ワインを開けていた。みゅーは加藤が少し逞しくなっているのを、感じていた。そこへ小津が帰ってきた。ワインを開けるいるので、慌てる加藤。だが、オヤジ臭いギャグを連発し、「そろそろ出て行くか・・・・・・」と柄にもない弱気なところを見せてしまうのだった。
 学校に、新人戦の案内が届いた。男子の1回戦は、先日、道場破りに行った柳沼教諭の学校が相手だった。まなび(西田尚美)は、光蔭学園の顧問の欄の小津の名前が消されていることに気がついた。『辞職』となっている。佐野(小日向文世)、一葉(京野ことみ)はじめ、加藤もみゅーも、小津を問い詰めた。何も答えない小津。
 放課後になって、生徒たちにも囲まれた。「おれは銀行屋だ。ずっと付き合う気はない」と憎まれ口を放つ小津。生徒も、加藤、みゅーも呆れ果てるのだった。
 だが、一葉だけは、小津の深意を探っていた。「誰かのために嘘をついている」と喝破した。それを聞いた加藤は、絵里(水川あさみ)を呼び出し、小津のことを訊ねた。絵里は「学校ですることがあるから、と、銀行行きは断ったはず」と言う。
 部屋に戻った加藤は、小津を問いただした。「何があったんです。隠してないで話してくれ」
 隠し切れないと踏んだ小津は、「去る者はどう思われてもいいんだ。後は君がやる。おれの代わりになるんだ」と加藤を激励する。しかし、別れを実感した二人は、悲しみの笑みを漏らすしかなかった。
 小津の真意を知らない生徒たちは、愛想を尽かして小津の授業も指導も無視し始めた。小津は、心の中で「これでいい」と自分に言い聞かせるのだった。さらに、練習に出向き「お前らは下手だ。わがままで自分勝手。もう、裏切られずにすむ」と心と裏腹な罵声を浴びせ、“別れ”のためのだめを押した。
 別れの時が来た。実は、佐野は、小津の真意をお見通しだった。「あんたは、やることが一々ひねくれている。やっと、スリッパが似合ってきたのに・・・・・・」と名残を惜しむ。まなびも鹿松(谷啓)校長に真実を明かされ絶句した。みゅーは怒りと悲しみが合い半ばしていたが、事細かなバスケの作戦帳を渡され、真意を察する。小津はタクシーに乗った。

<第11回> 「本当のさよなら」
小津(田村正和)は、銀行に戻った。赤い絨毯が敷き詰められた役員会議室で「債務者優先の経営改革」を役員たちに約束させた小津は、島谷(大杉漣)とともに、新たな仕事に着手した。
 そんなころ、光蔭学園では、加藤(ユースケ・サンタマリア)やみゅー(瀬戸朝香)、一葉(京野ことみ)らが、バスケ部員の浩二(森山未来)、光(脇知弘)、淳(忍成修吾)、健太(勝地涼)、剛(EITA)、遙(一戸奈未)らと練習に励んでいた。しかし、小津がなぜ辞めたか知らない、光たちから、"逃げ出した"小津に対する怒りは消えていなかった。
 職員室に戻った、加藤は、みゅーと佐野(小日向文世)に、小津から渡された指導ノートを大切にしていることを見破られ、厳しく追及される。加藤は踏ん張ったが、加藤とともに真相を知っているまなび(西田尚美)が堪らず「白状します」と、洗いざらい、辞職の顛末を話してしまった。
 それは、すぐに部員にも知らされた。小津の心中を察する部員たち。その時、みゅーが言った。「あんたたち、悔しくないか?」。みゅーと浩二ら部員は、小津の銀行へ向かった。
 小津は島谷と銀行立て直しの素案作りの真っ最中であった。あきらめかける島谷を「学校も大変だ。だが、先生は格闘しているぞ」と小津が元気付ける。その時、みゅーたちが部屋へ入ってきた。
 小津はみんなを豪華な役員食堂へ案内した。洒落て贅沢なフランス料理が並ぶ。「ここも廃止することになる」と小津。みゅーが切り出した。「謝りたかったの」。淳たちも続く。「水臭い」「かっこつけすぎ」「練習見に来てよ」・・・・・・。「帰ってきて」とみゅーが受けた。小津は無言である。だが、浩二が気を取り直してしめた。「カトケンとやるよ。だから新人戦、見に来て」。小津は答ようもなく、静かにその場を去っていった。
 小津が加藤の部屋に荷物を引き取りに来た。「俺は、バスケットコートに忘れ物をしたんだ。ずっと取りに行けなかった。あいつらには、忘れ物をさせるなよ」。小津は背中で加藤に別れを告げた。
 それから1週間。小津たちはオフィスと泊まり込みのホテルで、浩二たちはコートで、目的のために必死で自分たちのエネルギーを燃やした。
 銀行改革案の草案が出来上がった。小津と島谷は、それを役員会に提出するために、ホテルのロビーまで降りた。そこには、一葉が待っていた。新人戦の日だったのだ。取り敢えず、一葉を会場である体育館まで送ることにしたが、小津は、島谷に待つように頼み、中をのぞくことにした。
 コートでは、浩二たちの試合が始まるところである。加藤が、小津のノートを読み上げる。「相手の思い上がりが隙になる」。対戦チームは因縁の柳沼(渡辺いっけい)の高校である。「相手は5人だ。怪我をさせろ」。試合開始。小津は、彼らの活躍を目に焼き付け、第一クォーターで外へ出た。そこへ現れたのは章夫(池田貴尉)であった。
 「親父が見て来いって」
 ほほ笑む小津に「急げ」と島谷が声を掛ける。「この子が銀行の被害者なんだよ」と小津。察した島谷が言った。
 「ここにいろ。お前の思いは伝える。俺もいつまでも、お前に助けてもらうわけにはいかない。生きる場所が見つかってよかったな」。島谷は車を銀行に向かって走らせた。
 試合は、柳沼のチームがファウル覚悟で、襲い掛かっていた。淳が倒され動けなくなってしまう。そこへ章夫が応援に飛び込んできた。「小津先生に笑われるぞ」。目を開ける淳。その先のスタンドには、小津が座っていた。加藤もみゅーも浩二も光も、皆がそちらを凝視した。勇気づくチーム。だが、柳沼も小津に気付いた。
 小津のそばにまなびと佐野が座った。加藤は小津譲りの的確な作戦を指示する。じわじわと敵チームを追い上げていく。焦る柳沼は、生徒をどなりまくる。心が離れていく生徒たち。
 3点ビハインドで最終クォーターが始まる。小津の横で佐野が呟いた。「勝負はラスト3分だ」。それを聞いていたまなびは、コートに降り、加藤に「最後の3分勝負」と伝えた。柳沼はそれを見逃さなかった。タイムを掛け審判を呼び、すぐにオフィシャル席へ向かった。役員が加藤を呼んだ。
 「なぜ小津先生がコーチをするのか?約束違反だ。協議する」
 佐野たちの抗議も虚しく、しばらくして役員がアナウンスした。
 「この試合は没収します」。柳沼のチームが不戦勝となった。浩二たちは負けたのだ。
 体育館に残ったのは、光蔭チームと柳沼のチーム、それに小津だけになった。しかし、浩二たちは、落胆していなかった。納得した笑みがこぼれていた。
 「早く帰るぞ」。柳沼が生徒を呼んだ。しかし、生徒は動かない。
 「最後までやらせて下さい」。キャプテンが柳沼を睨み付けた。「ずるしないで勝ちたいんです」。自分の生徒に取り囲まれ怖じ気づく柳沼。
 「やろうぜ」。浩二がキャプテンに声を掛けた。生徒たちだけの試合が再開した。楽しそうに試合をする浩二たち。小津に加藤が言った。「これで、やつら、コートに忘れ物しないですみます」。小津が受ける。「教わったのは、私の方だったな・・・・・・」
 激闘が続く。小津もコーチに参加する。だが、柳沼のチームはベンチに帰らない。柳沼は苦々しげに生徒を睨むしか術はなかった。
 ホイッスルが鳴った。光蔭学園は勝った。すべてが弾けたように歓喜が渦巻く光蔭ベンチ。選手たちは、コートに転がり大の字で笑っている。柳沼が小津に近づいてきた。「最高の試合だった・・・・・・。あんたの勝ちだ」。「・・・・・・勝ったのは子供たちだ」。小津がそう言うと柳沼は静かに去っていくのだった。
 その時、はしゃいだみゅーたちがシャンパンを開けようとした。「まだだ・・・・・・」。小津は有無を言わさぬ調子で言うのだった。
 翌年の4月。コートでは、浩二たちが練習している。コートの脇では、だらだらとした新入部員がたむろしている。その一人がボールを蹴った。その時、小津が入ってきた。
 「一つ教えていいか。それはバスケットのボールだ・・・・・・」。小津の子供が、また増えた。


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