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<第4回> 『暴行』
 実那子(中山美穂)の記憶が徐々に戻りつつある―――。記憶のフラッシュバック現象が実那子に起こったことに直季(木村拓哉)は危機感を覚える。
 記憶している過去は、本当に自分の過去なのか?実那子は、故郷だと思いこんでいた群馬の新聞を閲覧する。しかし、交通事故で次女を残し家族全員が死んだ事件など、どこにも見あたらない。次に出生地である福島の新聞を調べると・・・。
 そこには市会議員一家惨殺事件の記事があった。「貴美子さんと交際していた大学生・国府吉春容疑者は、警察に通報した第一発見者であったが、事件から3日後、殺人容疑で逮捕された。貴美子さんとの交際を父親の明仁さんに反対されたため、衝動的に家に押し入り、次女の実那子さん以外の3人を殺したと警察は見ている」という記事を見て愕然となる実那子。
 実那子は輝一郎に全てを告白する。「今と未来だけで人は生きていける。実那子の苦しみは半分、俺が引き受ける」と輝一郎は言い、実那子は胸を熱くする。帰り道、輝一郎は白いドレスをなびかせて走り去る女の姿を見る。「母さん・・・」惚けたように立ちつくす輝一郎。
 直季は何かを知っている。実那子は自分の過去を明らかにするために、直季のアパートを訪れる。しかし、風邪を引いて寝込んでいた直季の看病をさせられる羽目になってしまう。実那子の追求をのらりくらりとかわす直季。しかし、直季と会話している内に実那子は、直季の過去、好みなど、あまりにも多くのことで自分との間に共通点があるののに気付く。
 輝一郎は父・正輝(岡田眞澄)のアトリエを尋ね、そこで母・麻紀子(原田美枝子)の肖像画を見る。走り去ったあの女は果たして麻紀子だったのか?麻紀子は、正輝の売れない時代を支えたモデルだった。夫が成功した後は、輝一郎を夫を超える画家に育てることが麻紀子の夢だったが、それが叶わないと知ると、クリスマスイブに酒瓶を持ったまま家を出て、そのまま行方不明になっていた。
 出勤途中の実那子。横断歩道でガラス屋の車が止まり太陽の反射光が実那子の目を射抜いた途端、実那子はー廊下に這い蹲る瀕死の父、母、そして部屋から逃げだそうとして引き戻される姉―――突如襲ってきた衝撃の記憶に立ちつくす。
 知らなくてもいい過去かもしれない。でも、過去は生きていくための道しるべになる。本当の自分を探したい。実那子は意を決して、アパートの前で直季を待ち受ける・・・。

<第5回> 『隠れ家』
 実那子(中山美穂)は輝一郎(仲村トオル)と共に眠れる森へ向かう。実那子の記憶の中では、そこは中嶋敬太(ユースケ・サンタマリア)とターザンごっこをして遊んだ森だった。しかし思いだそうとすればするほど、記憶は曖昧になる。
 森の奥で出会ったのは伊藤直巳(夏八木勲)。直季(木村拓哉)の父親だった。直巳は実那子に「あなたは15年前の患者さんだ」と言う。直巳は催眠療法の大家で、この森で精神の治療を行っていた。
 15年前、実那子の叔父、大庭善三は、家族を亡くし殺人現場に取り残され心を閉ざしてしまった実那子を、直巳のもとに連れてきた。直巳は実那子に催眠療法を施し、記憶の埋め込みを行った。実那子が生まれ育った土地を群馬だと思いこんでいたのはそのためだった。
 にわかに信じることが出来ない実那子に、直巳は15年前のビデオを見せる。そこには12歳の実那子が、直巳から精神療法を施されている様子が映し出される。そして実那子に埋め込まれたのは直巳の息子、つまり直季の記憶だった。治療が終わり、実那子がコテージから去った後、直巳は直季に、実那子に施した治療について説明した。埋め込んだ記憶は15年が耐久性の限界であること、そしていつか本物の記憶が甦ることを。
 「直季は本当の記憶、その恐怖の体験を思い出したときにあなたの役に立ちたいと思ったのかもしれない。あるいは15年前の殺人犯、国府(陣内孝則)が出所したのを知ってあなたを守るために姿を現したのかもしれない」と語る直巳。
 輝一郎と実那子は眠れる森を去る。「今なら誰も知らないところへ行けるぞ」と輝一郎。しかし実那子は勇気を持って過去を受け入れ、輝一郎との結婚へ踏みだそうとしていた。
 入れ替わりに直巳のもとに直季が現れる。「もうあの子にお前がしてやれることはないはずだ」と直巳。
 帰宅した直季はアパートの窓越しに実那子と語り合う。今は素直な気持ちで言葉を交わせる二人。実那子と直季は子供時代の記憶を共有していた。「私はあなたの一部だった・・・。本当にそんな感じがする」実那子の言葉に、直季は取り残されたような気持ちだった。  
 実那子と輝一郎は当時の公判資料で一家惨殺事件を検証する。それによると、検察側が用意した証拠で国府を有罪に出来る決め手は、ほとんどないに等しかった。「国府がもし無罪だとしたら・・・」実那子は思う。保護司の前から姿を消した国府が、今、いったい何を考えどこに潜伏しているのか。実那子に漠然とした不安がよぎる。

<第6回> 『真犯人』
 直季(木村拓哉)は、出所した国府吉春(陣内孝則)の足取りを掴むために、吉春の兄・和彦と会い、横浜中華街に住むという刑務所時代の友人・玉置(山路和弘)を訪ね、国府がすでに実那子(中山美穂)の職場をつき止めていることを知る。さらに国府とは夫婦同前の玉置の妹、春江(横山めぐみ)からは「あいつに地獄をおしえてやる」と失踪前の国府が不気味につぶやいていたということも聞かされる。殺し損なった一人を殺そうというのか?
 一刻も早く国府を捕まえなければ!直季は再び敬太(ユースケ・サンタマリア)と共に国府を探し始める。
 一方、輝一郎(仲村トオル)は週刊誌に、会社には内密に不正取引をしている実態を暴かれ、それでも絵をさばいて利益を上げるよう上司に迫られる。ギリギリのところでふんばりながら、輝一郎も、二か月後に迫った結婚式を何とか無事迎えたいと考えていた。
 そんな時だった、輝一郎の前に再び、白いドレスを身にまとった母・麻紀子(原田美枝子)が姿を現したのは。
 行方をくらませすでに死んだことになっていた麻紀子は、今までずっと輝一郎を見ていた。実那子のことも知っているというのだ。朦朧とする輝一郎の脳裏に、22年前の記憶がよみがえる。「あなたを惑わす人間は、お母さんが許さない」麻紀子は輝一郎にそう言っていた・・・。我に返った輝一郎の中に、恐怖とともに母の言葉がリフレインしていた。
15年前のあの日、いったい母、麻紀子ははどこにいたのだろうか?
 数日後、引っ越し準備のため輝一郎のマンションで片付けをしていた実那子は、クロゼットの中から輝一郎の大学の卒業証書を見つけ、愕然となる。そこには、『福島学院大学文学部』とあった。「国府吉春と同じ大学だったなんて・・・」始めて知る真実にショックを受ける実那子に、輝一郎は国府との意外な関係を打ち明ける。
 「実は僕も小学生だった実那子と会っているんだ」実那子の姉と国府との付き合いは父親から反対されており、小学生の実那子は二人の橋渡しをしていた。「あのイブの夜に福島にいたら、国府のすることを止められたかもしれない」と悔やむ輝一郎だった。
 オーキッド・スクエアで働く実那子。暗雲立ちこめる空には、稲妻が走る。その一つが実那子の目の前で砕けた瞬間、実那子にあのフラッシュバックが襲いかかった。
 それは鏡に映る自分の姿。手に握られている鋭利な刃物がギラッと光る。鏡に浮かぶ稲妻に照らされた実那子、その魔物めいた笑み―――。


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