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〜 第3話 栄光と転落の足音

 その日新児(豊川悦司)は、都屋スーパー東京本社の役員会議室を訪れていた。副社長の松宮(鹿内孝)、専務の東上(津村鷹志)、常務の栗原(山田明郷)らが品定めするような視線を投げ掛けている。
 だが新児は、「昔話はやめましょう。僕は未来にしか興味がないんです」と悠然と言ってのけ、社長としての度量をためさんとする役員たちをたじろがせた。
 そんな中、「この男は一体何者であるのか?」と半ば恐怖心をもって新児を見つめている人物がいた。義母の綾子(余貴美子)だ。綾子は、これ以上対立する連中たちと新児が接触することを避け、二人きりで新児の正体を確かめたいと、対面の場をきりあげ、そそくさと都築家に向かった。
 しかし綾子は、今の時点で正体を確認することをとどまった。「雄一郎と名乗るこの男、ひょっとしたら自分の立場に有利に振る舞ってくれることになるかもしれない・・・」。綾子は、亡き勇三と雄一郎の並ぶ写真をそっと見つめると、秘書室長の結城(小原雅人)に香港からの雄一郎の足取りを調査するよう命じた。
 同じ頃、雄一郎(石黒賢)は、仁美(床嶋佳子)がいる双葉会病院で生死の堺を迷っていた。「やはり殺人未遂事件・・・? 犯人は死亡したと思い捨てたんでしょうか・・・」。傍らに立つ刑事たちの会話が聞こえた。
 一方、有季子(藤原紀香)はグランヒルズホテルで新児を待ち続けた。「つつけばなにか出てくる」。それは都屋スーパーの後継者である雄一郎として新児と接した有季子のカンだった。
 そんな有季子を見ていた鷹男(稲垣吾郎)は言った。「刑事としてというよりも女のカン?あいつに惹かれたなら女として近付けば」。
 「くだらないこと言わないで。私は確かなものが欲しいだけ」。少しむきになって返した有季子の態度を見た鷹男は、「この件から手を引く」といい残しその場を後にした。
 「どうしたの? 昼過ぎから全然稼いでないじゃないじゃない」。
 「すみません。腰が痛くて車止めてました」。
 早朝、みどりタクシーで上司から指摘された乗務不振をうまく受け答え、新児は再び都屋スーパーの役員会議室に出向いた。取締役たちの信任を得るためである。非の打ち所のない経歴が発表され、「父の栄光を捨て、失敗を認め、スタートラインに立ちたい」。堂々と挨拶した新児を認めない者はいなかった。新児は、ちひろ(篠原涼子)に改めて礼を言うと、社長室に入った。 
 その後、ハイヤーで会社を出る新児を有季子は待ち伏せ、尾行を開始した。


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