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〜 第1話 運命の出会い

 それは速水有季子(藤原紀香)と魚住新児(豊川悦司)の「危険な」運命の出会いだった。
 その朝、有季子は川瀬鷹男(稲垣吾郎)と共に自宅のベットで目を覚ました。その前夜が初めての「男と女の」関係だったが、刑事である有季子とフリージャーナリストの鷹男は、恋人というより親友プラスα。二人は持ちつ持たれつ、公私に渡って悪くない関係にある二人だった。
 「仕事終わったら電話して」「しない。月に29日は一人で寝たいの」。そんな素っ気ない別れ方をして、有季子はいつものように警視庁へ。だが、そこには有季子の出勤をてぐすね引いて待ち構えていた捜査二課の上司がいた。
 上司は、有季子が大手スーパーの不純物入りワインにからむ横領事件について先走った捜査をしていることを責め、有季子の言い分も聞き入れず、処分が出るまで自宅謹慎を言い渡したのだ。有季子は、いいようのない悔しさに、こぼれ落ちそうになる涙をぬぐうと、部屋を飛び出した。金を借りに戻ってきた鷹男に何とか仕事の、人生の、「出口を見つけたい」との切実な本音の言葉を残し、彼女はやってきた運命のタクシーを止めた。
 魚住新児(豊川悦司)は、いつものように弁当とコーヒーの入った魔法瓶を持つと、自転車で職場に向かった。妻と別れてからは、いつもと変わらない淡々とした日々が繰り返されている。タクシードライバーとして働く新児は、その日も街中を走っていた。そして警視庁の前で運命の女性を乗せた。
 「白金まで」。有季子はドライバーの新児に行き先を告げた。間もなくタクシーは渋滞に巻き込まれ有季子はぼんやり外を眺め「出口がない」ともう一度つぶやく。「急いでいる」と転回を指示する有季子にドライバーはその車線から「もう引き返すことはできない」と告げる。
 白金には、有季子がいきすぎ捜査を指摘された問題の「都屋スーパー」がある。有季子は、店内に入ると一本のワインを万引き同然で持ち出そうとした。そして呼び止める店員に対して彼女は「危ないワインが売られてるから調べてあげようとおもっただけ」とうそぶく。
結局有季子は、同僚の野々村(モロ師岡)が現れたことで、帰される事になったが「都屋スーパー」への疑惑は以前くすぶり続けた。
 新児は、白金で客を下ろした後、成田空港まで走った。そして、今度は東京まで行って欲しいと強引にいう客を乗せた。
 「どお?最近の東京は」その男性客(石黒 賢)は、19年振りに戻ってきたという東京の様子を尋ねてきた。
 「さぁ、どうでしょう」。客は新児の素っ気ない返事に反応、咄嗟に乗務員証に目をやり、『魚住新児』の名前を確認すると、突然ククッと笑い始めたのだ。そして、不思議そうにミラーから後ろを伺う新児に、「俺だよ。都築雄一郎。覚えてるよな?運命のいたずらなんていうなよ」とおもしろがるように言った。雄一郎は新児の高校時代の同級生で、両親の離婚後香港に移り住んだおちこぼれの生徒だった。
 雄一郎は、目的地の高級ホテルに到着するとボーイの案内を断り、代わりに新児に荷物を運ばせ、スイートルームに入った。
 新児は、いいようのない屈辱感を味わっていた。だが雄一郎は、香港から帰ってきたのは、親父の店を継ぐためだと自分の立場を優越感たっぷりに話してきかせ「お前はどうなんだ?わからないもんだな。成績優秀の魚住新児がタクシー運転手。落ちこぼれて中退した俺が大企業の後継者」とわざと挑発するような口ぶりで続けた。何をしていても人間は結局中身という新児に、雄一郎は「男は、器次第。どんな家に住み、どれだけの金を持ち、何人が頭を下げるかで全てが決まる」と勝ち誇ったように言う。横柄な客に文句を言われ安アパートで毎日を過ごす新児に対する明らかな嫌味。しかし新児は相手にしなかった。新児は、仕事を口実に、なんとか部屋を出た。
 だが雄一郎は「わすれもの」と言って駐車場に新児を追いかけてくると、手袋で窓を叩いた。そして「これからお前を指名してやるよ」と言うと手を振って送りだした。新児は、極めて静かに駐車場の出口まで車を動かした。だが、新児が平静でいられたのもそこまでだった。不足している駐車料金。そしてバックミラーにいつまでも手を振り続ける無邪気な雄一郎の姿。新児は何かに弾かれたように雄一郎に向かって、車を猛スピードでバックさせていた。
 早朝。営業所に戻った新児は、車を洗車機にかけた後、ゴミ廃棄場で雄一郎の衣服を燃やした。それから、自分が居た証拠を消すため、再び雄一郎のホテルの部屋に戻った。
 しかし、そこで若林ちひろ(篠原涼子)という女性と鉢合わせしてしまったのた。ちひろは新児を見ると、ためらわず言った、「秘書の若林です。お迎えに参りました。都築雄一郎さんでいらっしゃいますね」。
 「・・・・・・ええ」。新児は咄嗟にそう返していた・・・。
 新児はもう引き返すことができなかった。そして有季子の運命も。彼女が追いかけ、いつしか魅入られていく新児のもう一つの人生の誕生。鷹男も巻き込むことになる「危険な関係」。三人の運命に出口はあるのか。


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