松本清張スペシャル殺人行おくのほそ道
2007年12月7日(金)放送終了

放送内容詳細

 その日、倉田麻佐子(菊川怜)は婚約者の西村五郎(細川茂樹)と共に、叔母である芦名隆子(床嶋佳子)が持つメゾンを訪れていた。有名人気デザイナーである隆子の手によるウエディングドレスを試着、近く行われる式の準備をすすめるために。
 隆子と大学で植物学を研究する叔父の信雄(鶴見辰吾)夫婦は麻佐子にとっては憧れの夫婦。結婚を間近にした麻佐子は、五郎とも互いを尊重しあい助け合う、そんな隆子夫婦のようになりたいと思っていた。
 そこへ偶然、隆子の友人で女優の下沢江里子(畑野ひろ子)がウエディング会社を経営する横山(名高達男)を伴って現れた。「先生のお若いころによくにてらっしゃる」。横山からそう言ってもらい嬉しそうにほほ笑む麻佐子。だがその時、信雄の姿を離れた所に見つけた江里子が、「そうそう、あちらとはうまくいってるのかしら?」と意味深なことを隆子にささやいたのだ。
 麻佐子と五郎は、表情をこわばらせた隆子をけげんそうに見つめた。
 数日後、麻佐子は五郎と叔父の信雄と共に、信雄の実家・平泉へ向かっていた。先祖が殿様という家系である叔父は、5年に1度の祝いの席に決まって顔を出していた。隆子は急な仕事で来られなくなったと聞いた。だが、麻佐子は出発の前日に、隆子が都内のホテルで見知らぬ男といるのを目撃していたのだ。先日の江里子とのことといい、最近叔母の様子がおかしい?
 そして、そんな不安な思いを駆り立てるように村の長老が、芦名家の杉林が5年前に売りさばかれたことを信雄の耳に入れてきたのだ。財産管理を引き受ける隆子が、信雄に内緒でやったことだった。麻佐子は、長老から、茅ヶ崎の業者が3億で買ったことを聞きだすと、先日隆子の家を訪れた際、「また会うことになるでしょう」と言った男から渡された名刺を確認した。そこには、茅ヶ崎不動産社長 海野正雄(冨家規政)とあった。
 隆子との関係を知りたい一心で、麻佐子は海野と日光のホテルで会う約束を取り付けた。だが、約束の場所で見たのは、おびただしい血の中でこと切れていた海野の死体だった。そして海野のカメラのデータはすべて削除されていた。
 麻佐子はその時、秘密を暴露されることを恐れた隆子の犯行では…というよからぬ思いが頭をよぎった。
 しかし、メゾンの支配人・杉村(黒田アーサー)から隆子は仕事で京都に行っていると聞かされ、ひとまず胸を撫でおろした。だが、その後麻佐子は隆子の手帳から、事件当日のタクシーのレシートを発見してしまう。やはり、隆子は京都ではなく日光にいた。しかしその後、旅館の仲居の証言から、当日隆子と一緒に泊まったのは、海野ではなかったことが分かる。
 第2の男の存在の浮上。隆子はその男とも関係があったのか…。
 さらに麻佐子は、事件当日には江里子も仕事で日光に来ていたことを知り、何らかの手掛かりを求めて江里子と会う約束を取り付けた。
 しかし、その江里子も麻佐子と会う直前、何者かに殺害されてしまった。
 そして麻佐子は、その日に同じく江里子に会うためにやってきたという岸井(大石吾朗)と出会った。
 実は京都で骨董(こっとう)商を営む傍ら、高利貸もしているという岸井は、1億もの大金を隆子に工面していた。そして隆子に岸井を紹介したのが江里子だったのだ。
 それを聞いた麻佐子は、商売も好調で経済的に困っている様子のなかった隆子が、一体何のためにそこまでして金を作ったのかと悩んだ。
 そして、それが何のためであるかを掴んだという岸井からの連絡を受け、会う約束を取り付けた直後、またしても岸井が犠牲者となった。
 寸でのところで逃げてしまう真実への糸口。だが、このとき麻佐子は、今回の連続殺人事件の大きな関連性に気づいていた。
 海野は日光、江里子は自宅で殺害され福島に運ばれ、そして岸井も福島の須賀川で発見されている。いずれも現場は、その昔芭蕉が旅した「奥の細道」に登場する地なのだ。
 10年前、叔父の信雄と奥の細道を辿る旅をしたことのある麻佐子は、大学院でも「奥の細道」を研究していた。自分と関係の深い「奥の細道」とを関連づけた事件…。
 突然、不安に駆られる麻佐子。とそこへ、叔母の隆子が容疑者として連行されたとの知らせが入った。憧れの叔母の転落を耳にして打ちひしがれる麻佐子。それでも隆子の無実を信じる麻佐子は、五郎の止めるのも聞かず事件の真相を掴もうと動きはじめた。
閉じる
もっと見る

出演者

倉田麻佐子 … 菊川 怜

西村五郎 … 細川茂樹

芦名隆子 … 床嶋佳子

杉村武雄 … 黒田アーサー

下沢江里子 … 畑野ひろ子

倉田安子 … 黒田知永子

岸井亥之吉 … 大石吾朗

海野正雄 … 冨家規政

羽村芳夫 … 鈴木祐二

芦名信雄 … 鶴見辰吾

横山道夫 … 名高達男

ほか

スタッフ

■原作
 松本清張
 「殺人行おくのほそ道」(講談社刊)

■脚本
 三浦有為子

■プロデューサー
 清水一幸

■演出
 松山博昭

■制作
 フジテレビ