FNSドキュメンタリー大賞
信仰心の希薄化、参拝客の激減、そして観光化…
信仰の山“出羽三山”と山伏たちに忍び寄りつつある危機とは?

第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『消える山伏 〜岐路に立つ出羽三山〜』 (制作 さくらんぼテレビジョン)

<10月6日(水)深夜25時35分放送>

 山形県のほぼ中央部、朝日山地の北端に位置する月山(がっさん・1984m)、湯殿山(ゆどのさん・1504m)、羽黒山(はぐろさん・414m)は“出羽三山”と呼ばれ、古くから修験道を中心にした山岳信仰の山として栄えてきた
 修験道とは、日本古来の山岳信仰に神道などが結びついて生まれた密教の一派だ。鬱蒼とした杉木立に覆われた山では、山伏とも呼ばれる修験者たちが、霊験を体得しようと荒行で心身を鍛えている。
 “出羽三山”は「信仰の山」として地域の人たちだけでなく、広く東日本一帯から参拝者の列が途絶えることはない。古くからの“出羽三山”の繁栄は、人々の先祖への敬い、自然への畏敬が深く関わってきている。だが、実は今“出羽三山”に存亡の危機が訪れているというのだ。

 10月22日(金)深夜27:50〜28:44放送の第8回FNSドキュメンタリー大賞『消える山伏 〜岐路に立つ出羽三山〜』(制作 さくらんぼテレビジョン)は、人々の信仰の薄れとともに参拝者が激減している現状を取材、生き残りをかけて模索を続ける“三山”の今に迫る。
 番組を取材したさくらんぼテレビの太田 健ディレクター「私は三重県出身で、取材に入るまでは全く“出羽三山”のことを知りませんでした。ネタ探しをする中で“出羽三山を世界遺産にしようと町が動いている”と聞いて、出羽三山に初めて足を運びました。しかし私が目にした“三山”はあまりにも世俗化していて魅力が感じられませんでした。何故、日本に唯一残る修験の山がこんな風になってしまったのか?そんな疑問を解き明かしたいと考えたのが、取材を始めたきっかけでした」と語る。
 まず目についたのが参拝者減少の問題だ。“出羽三山”は、修験の山、信仰の山として人々の畏敬を集めてきたが、年を追って減り続けてきた参拝者が、ここ数年は激減しているというのだ。三山を管轄する神社はこの事態を深刻に受け止めながらも、抜本的な解決策を打ち出せないまま、観光化に活路を見出そうとしている。これは参拝者の減少を世間に知らせるのはまずいという思惑があったかららしい。

 参拝者の減少は、さらには麓で山伏の末裔が営む宿坊の経営にも大きな影響を与えている。あと5年か10年もすれば、崩壊する宿坊が出てくるに違いないとまでいわれるほどだ。昔ながらの形態を守ろうとする宿坊にも危機感が漂い、中には、「生活していく為には、時代に応じていかなくてはならない!」と、旅行会社と提携してドライブインとしての機能を持つところも出始めている。そこには、信仰の山に忍び寄る深刻さが垣間見える。神社も宿坊も必死に自分たちや“三山”の生き残り策を模索しているのだ。
 それ以外にも問題は山積している。
「取材を進めるうちに“三山”への参拝者の減少は、神社や宿坊だけに原因があるとは必ずしも言えないことがわかってきました。“三山”への信仰登山は、東日本一帯の『霞場(かすみば)』と呼ばれる檀那組織を通じて、信者を講中の形で集めて行われてきました。つまり集団参拝登山を霞場が仕切るということですね。ところが、いわば“在家山伏の集団”であるこの霞場にも、高齢化という深刻な問題が押し寄せています」(太田D)
 霊験を体得しながら人里で暮らす里山伏(さとやまぶし)たちが、高齢化から引退を迫られているというわけだ。しかし、霊験の使い手である里山伏は簡単に後継者を決められるものではない。番組では、高齢化が理由で近く崩壊する青森県三戸郡の霞場の例を取り上げる。そしてどの霞場も同じ悩みを抱えている…。「もっと深刻な問題があります。それは、信仰心すらも継承されていないことです。信仰心の継承には社会の変化が大きな影響を与えています。西洋文化が渡来し、科学万能主義が浸透した現代社会においては、この信仰心の継承が一番の問題でしょう」(太田D)

 “三山”が抱える問題の解決策は簡単には見当たらない。しかし、“三山”には今でも細々と修験そして信仰の世界が息づいている。もしかすると、ここから古来の日本人の精神文化が覗き見る事が出来るかも知れない。そして、そこには“三山”が忍び寄る危機から身をかわすヒントが隠されているかも知れない…。そんな思いを胸に、太田Dは取材を進めたという。
「今まで“出羽三山”はPR用の番組しか取材を認めていませんでした。取材は頑迷とも言える神社との駆け引きの連続で、それは今も続いています。神社は東日本一円に広がる信者に支えられているということに気づいていません。参拝者の減少という大きな問題を、神社は頑なに隠そうとしているのです。ここから“三山”を描くことにしました。2人だけのクルーでの取材は困難の連続でしたが、山を駆け、山籠りの取材を通して、修験者の方から『君たちの方が修験だなー』とお褒めの言葉を頂きました。山形の人たちも知らなかった“出羽三山”の姿を全国に向けて発信するつもりです。そして番組の中で神社ですら気づいていない生き残り策を探してやろうと思っています」
太田Dは番組に賭ける熱意をこう締めくくった。
 危機の迫る現状を踏まえて、必死に生き残り策を模索する“出羽三山”の今を描いた第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『消える山伏 〜岐路に立つ出羽三山〜』(制作 さくらんぼテレビジョン)<10月22日(金)深夜27:50〜28:44放送>にご期待下さい!!


<番組タイトル> 第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『消える山伏 〜岐路に立つ出羽三山〜』
<放送日時> 1999年10月22日(金)深夜27:50〜28:44放送
<スタッフ> プロデューサー : 冨澤弘行
ディレクター : 太田 健
ナレーター : 東野英心
撮影・編集 : 庄司 誠
構   成 : 高橋 修
<制 作> さくらんぼテレビジョン

1999年10月12日発行「パブペパNo.99-337」 フジテレビ広報部