FNSドキュメンタリー大賞
60年の眠りから醒めた黒麹菌!
東大の研究所で保存されていた黒麹菌を使って戦前の泡盛を復活させようという試みに挑戦する酒造所の若き職人たち…
果たして“幻の泡盛”は誕生するのだろうか?!

第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『幻の泡盛 〜よみがえる黒麹菌〜』 (制作 沖縄テレビ)

<10月13日(水)深夜26時25分放送>

 沖縄の酒、泡盛造りに使われている黒麹菌…。沖縄戦で多くの酒造所がダメージを受け、それぞれの酒造所の黒麹菌も消滅したと見られていた。だが、実は去年、東京大学の研究所に戦前の沖縄から採取された黒麹菌が保存されているということが明らかになったというのだ。
 10月13日(水)26:25から放送の第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『幻の泡盛 〜よみがえる黒麹菌〜』(制作 沖縄テレビ)は、この黒麹菌を使って戦前の泡盛を復活させようという沖縄の酒造所の若き職人たちの挑戦を描いた渾身のドキュメンタリーだ。

 戦前の沖縄の黒麹菌を採取していたのは、発酵学の権威、東京大学の故・坂口謹一郎名誉教授の研究グループ。採取した600株あまりの黒麹菌のうち19株は海を渡って戦禍をくぐり抜け、現在でも東大の分子細胞生物学研究所に保存されていたのだ。坂口名誉教授は著書の中で、“君知るや名酒泡盛”と題し、中国や本土にないユニークな酒・泡盛の魅力を書き記している。そして現在残っている19株のうち、今でも沖縄で泡盛作りを続けている咲元酒造と瑞泉酒造から採取された2株が含まれていることが判明したのだ。中でも咲元酒造の菌株は“実用上優れている”と研究所に記録されていた。先代の黒麹菌が現存することを知った咲元酒造の佐久本政雄社長(63)は「親父が生きていたらワーっと飛んでったかもしれないよ!!」と喜びを隠さない

 この黒麹菌を東大から譲り受けた両酒造所は、戦前の泡盛を復活させるべく、泡盛酒造メーカーの技術指導にあたる沖縄国税事務所の須藤茂俊主任鑑定官に取り寄せた菌の培養試験と分析を依頼。ところが、当初“優秀な菌株”と研究所に記されていた咲元酒造の黒麹菌は、米に繁殖しないということがわかったのだ。培養試験は約2ヶ月続けられたが、事態が好転しないまま終了してしまった。この結果について須藤主任鑑定官は「戦前の工場で使われていた麹菌はおそらく複数の菌が混ざっていたと考えられ、今回のように単菌ではなかっただろう」と推測した。そして明暗を分けた培養試験の結果、瑞泉酒造のみが酒造りに取り掛かることになったのだ。
 戦前から酒造りに携わっていた瑞泉酒造の佐久本政敦会長(90)は喜びを新たに「大変貴重なものだ。故郷に帰ってきたという格好じゃないか」と黒麹菌を手にする。しかし改良された現代の製造法、麹菌に比較すると戸惑いがない訳ではない。瑞泉酒造の製造課長を務める我那覇生剛さん(44)は「技術者として(この黒麹菌は)はっきり言って使えないんじゃないか」と懸念するが、須藤主任鑑定官の指導を仰ぎながら、自らも夢の実現に取り組む。これまでまったく経験のない手作業での麹作りや成分分析…。“いい味と香りの泡盛”を目指して、職人たちの情熱が注がれる。だが、“寝かせて美味しい古酒”を造る目的で、モロミの発酵温度をこれまでより低く押さえたため、思うようにアルコール濃度が上がらない。試験データをもとに試行錯誤は繰り返され、コンピューターによる徹底した温度管理で、何とか最悪の事態は切り抜けることができた。
 瑞泉酒造の佐久本武社長は「60年の眠りから醒めてアルコールをこんなに作り出すとは…」と改めてよみがえった黒麹菌のパワーに驚きながらも「いい酒だと思うよ」と自信の表情を見せた。
 いよいよ蒸留の日。工場内は報道陣や泡盛業界の関係者で熱気に包まれていた…。戦前の黒麹菌と現代の技術で“幻の泡盛”は誕生するのか、張り詰めた緊張感の中、ついにその瞬間を迎えることに…

 60年の眠りから醒めた黒麹菌を使って戦前の泡盛を復活させようという試みに挑戦する若き職人たちの姿を追った第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『幻の泡盛 〜よみがえる黒麹菌〜』(制作 沖縄テレビ)<10月13日(水)深夜26:25〜27:20放送>にご期待下さい!!


<番組タイトル> 第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『幻の泡盛 〜よみがえる黒麹菌〜』
<放送日時> 1999年10月13日(水)深夜26:25〜27:20
<スタッフ> プロデューサー : 山川文樹
チーフディレクター : 仲尾 久
ディレクター : 石川洋一
撮  影 : 赤嶺一史
音  声 : 上原 誠
<制 作> 沖縄テレビ

1999年9月28日発行「パブペパNo.99-319」 フジテレビ広報部