FNSドキュメンタリー大賞
少子化問題がクロ−ズアップされているなか、広がる出産方法の幅。
大切な赤ちゃんを無事出産するために、あなたはどのような出産方法を選択しますか?

第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『平成助産婦革命 〜赤ちゃん誕生の最前線で〜』 (制作 福島テレビ)

<10月6日(水)深夜26時30分放送>

 かつて出産の主役は「助産婦」さんだった。彼女たちは自転車で一軒一軒の家を回り、妊婦さんだけでなく、その家の家族のことも全て知り尽くしていたものだ。顔馴染みの助産婦さんであれば妊婦との間に信頼感があり、それとともに安心感も得られ、精神的にだいぶ違ったようだ。
 それが今では「出産」は、“安全第一”の錦の御旗のもと、完全に医療の場に移り、助産婦も病院の一スタッフとして、一般的には看護婦との区別さえつかなくなっている。
 しかし、医療技術に頼り過ぎたり管理過剰での分娩に対し、疑問や不満を感じている妊婦さんも少なくないのではないだろうか?産む人自身の気持ちや、その家族の心が置き去りにされがちなのではという医療関係者の指摘も多い。そうした中、自然の営みという原点に立ち返り、「自然なお産」が今注目されてきている。それに伴い、助産婦の役割もまた見直され始めている。
 10月6日(水)26:30〜27:25放送の第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『平成助産婦革命 〜赤ちゃん誕生の最前線で〜』(制作 福島テレビ)は、「お産」とそれに関わる「助産婦」さん、さらに、その置かれた状況の移り変わりについて様々な角度から見つめ直した作品だ。

 福島県郡山市の助産婦・塩野美紀子さんは、助産婦歴27年のベテラン助産婦さん。去年12月ころ、出産を控えた妊婦さんから、自宅での水中出産を希望している、との依頼を受けた。しかし、すぐにそれを引き受けることはできなかった。なぜなら、水中出産ベビ−は全国で何千人も誕生しているが、福島県内で公表された例はなく、塩野さん自身も経験したことがなかったからだ。人の命を預かる仕事なだけに、安易な気持ちでは返事をするわけにはいかない。
 福島テレビの斎藤美幸ディレクタ−が取材に入ったきっかけも、この女性からの電話だったという。
「去年12月、水中出産をするので、是非取材に来て欲しいと一通のFAXが届きました。本人は、多分県内で自分が初めてではないか、また、こういう出産方法もあることを多くの人に知って欲しい、ということで取材を依頼してきたのです」(斎藤D)

 ところで、この水中出産にはどのようなメリットがあるのだろうか?水中出産は、約38度の温水プ−ルで出産する。その効果として、心身ともにリラックスした状態で望めるというメリットがある。
 さらに
(1)体をあたためて筋肉の緊張をほぐす。
(2)浮力がつくことによって出産が楽になる。
──という。赤ちゃんにとっても、羊水という水の中で過ごしていたわけだから、外気よりも水中に生まれてくるほうが負担がかからない。
 塩野さんは、いろいろ調べていくうちにこの様なメリットが多いことがわかり、今はまだ“自宅水中出産”の認知度が低いためか実際の出産数は全体の一握りにしか過ぎないが、これから先、同じような依頼が増えてくるかも知れない、また、出産する本人の選んだ方法を尊重して、介添えしてあげるのが助産婦の務めと考え、悩んだ結果、水中出産を引き受けることにした…。

 この番組では、水中出産のほか、自宅出産や病院内での助産婦主体の出産など、さまざまなお産を通して、産む人の人生に寄り添い、薬も機械も使わない自然出産の復活に、病院の内外で奮闘する助産婦たちの群像を描く。出産には個人差があり、その人に合った出産方法を見つけだすためには、医師との協力はもちろんのこと、時にはせめぎ合いもあるだろう。そして、何よりもお産についての「情報公開」が必要不可欠になる。
 「私自身、病院で2人出産していますが、お産については、わかっていないことばかりでした。自宅出産が減ったのは、戦後の占領統治下にGHQの圧力によってです。助産婦の存在に理解がなかったGHQの、『現代において自宅出産は遅れている、出産は設備の整った病院で…』という考えから、出産の場を自宅から病院へ移行していたこと、また、そのアメリカが最近では、日本の助産婦を見習おうとしていることも、全く知りませんでした」(斎藤D)
 水中出産や自宅分娩など、最近の妊婦のニ−ズは多様化しているが、それに対して助産婦はどこまで応えられるのだろうか。新しい出産方法が増えるなか、助産婦本来の腕前を発揮することはもちろん、妊婦さんに不安を与えないような内面的なケアも、今まで以上に必要となってくることは言うまでもない。これからの助産婦は、お産についての情報をもたらすと同時に、心身両面で妊婦をトータルにケアするという役割も期待され、活躍の場も増えそうだ。
「私自身、お産については医師側からの一方的な情報こそが正しいのだと思っていましたが、自宅で出産した主婦を目のあたりにしたことで、それまでの自分が、いかに偏見を持っていたかがわかりました。『出産は見るものではない、見せるものでもない』と情報公開から遠避けられてた結果、産む人がいかに無知な状況におかれていたか、身をもって知りましたね」
(斎藤D)

 それにしても、テーマがお産だけに取材上の苦労も多かったのではないだろうか。最後にその辺りについて聞いてみた。
「何しろプライバシーに関わってくるテーマなので、どこまで掘り下げていいのかのラインが、難しかったです。取材に協力して頂いた方とのお互いの信頼感や、人間関係を崩さないように、と気を遣いました。取材を終えて今思うのは、自然分娩は、意外と楽なんだな、ということです。また、自宅出産した人は、実生活にも前向きに生きている気がします。そして『次の子が欲しい』と出産に対し意欲的!?のようです」
 よりよいお産ができるよう、参考になるところは多そうだ。これから出産を控えた家族に、ぜひご覧頂きたい番組だ。


<番組タイトル> 第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『平成助産婦革命 〜赤ちゃん誕生の最前線で〜』
<放送日時> 1999年10月6日(水)深夜26:30〜27:25
<スタッフ> プロデューサー : 田村泰生
ディレクター : 斎藤美幸
ナレーター : 原田幸子
撮   影 : 野田美樹子
<制 作> 福島テレビ

1999年9月27日発行「パブペパNo.99-315」 フジテレビ広報部