「人間にとって本当の豊かさとは一体何なのだろうか・・・」
ベトナムの子供たちを救うために家族を省みずに奔走する一人の僧侶に密着した渾身のドキュメンタリー
第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『わたしの・家族 〜お坊さんのベトナム往来〜』 (制作 サガテレビ)
<8月4日(水)深夜26時20分放送>
「番組を見てもらって自分とって何が一番大切なのか、幸せとは一体何なのかということをもう一度立ち止まって考えるきっかけにしれもらえれば…」(田島輝彦ディレクター)
一昨年暮れ、佐賀市で初めてベトナム料理店がオープンし、地元で大いに話題になったが、何とこの店の店主は浄土真宗の僧侶だというのだ。朝から晩まで店で働く毎日を送り、しかも、店の利益のほとんどを自ら設立した「ベトナム育英会」に送金し、恵まれない子供たちを支援しているというのだ。
8月4日(水)深夜26:20〜27:15放送の第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『わたしの・家族 〜お坊さんのベトナム往来〜』(制作 サガテレビ)は、この僧侶の日々に密着、彼の活動を通して、我々日本人が戦後の経済成長の影で忘れ去ってしまった本当の豊かさとは、幸せとは何なのかを考える。
佐賀県巌木町岩屋(きゅうらぎまち・いわや)にある浄土真宗至徳寺(しとくじ)の僧侶、秀嶋正孝さん(46)は、平成9年12月に佐賀市で初めてのベトナム料理店『コンビンザン』をオープンさせた。店はボランティアの助けを受けながら、正午前から夜10時頃まで毎日営業を続けている。
秀嶋さんがこの店を始めたのは大きな目的があってのことだ。実は店の利益のほとんどをベトナムの子供たちの支援のために送金しているのだ。「ベトナムの子供たちを何とか助けたい!」という強い想いから秀嶋さんはベトナム料理店を作ろうと考えたのだ。
秀嶋さんとベトナムとの出会いは8年前にさかのぼる。秀嶋さんはたまたま旅の途中でベトナムに立ち寄ることになったが、当時のベトナムは解放政策によって急激な経済成長を続けていた。だが、その華やかな表舞台の裏では日ごと貧富の差が広がり始めていたのだ。人口500万人を超えるベトナム最大の都市、ホーチミン市も例外ではない。第8区と呼ばれているスラム街を訪れた秀嶋さんは、学校にも行くことが出来ない子供たちが大勢いることを知る。その子供たちは街中に出て靴磨きをしたり、町工場で過酷な労働を強制されながら貧しい家庭を懸命に支えていたのだ。
この光景にショックを受けた秀嶋さんは、子供たちを取り巻くそんな環境を少しでも良くしようと立ち上がる。3年前、秀嶋さんは『ベトナム育英会』をたった1人で設立。募金集めに奔走する傍ら、現地の子供たちにバス旅行をプレゼントしたりしながら、活動を本格化させて行く。その一方で育英会の資金を捻り出すためにベトナム料理店をオープンさせた。これまでに店の利益や集めた募金などから500万円近くを送金したという。
秀嶋さんの1日は長い。朝は午前5時から6時の間に起床。檀家などに無理を言って法事などの勤行は早朝に終え、午前9時半には店に入り、仕込みを始める。正午前には開店し、午後10時頃まで営業を続ける。そして閉店後に店の片づけをし、帰宅できるのは深夜になるという。店を始めてから1年半、一日も休まずに働き続けているのだ。
こうした秀嶋さんの生活に、寺の住職でもある父親の正紀さん(74)と母親の幸枝さん(70)は良い顔をしない。これまで2人は力を合わせて、田舎町の小さい寺を必死で守り続けてきたからだ。2人にとっては、今の秀嶋さんの活動ぶりにはどうしても納得がいかないという。特に正紀さんにとっては寺の跡継ぎ問題も気になるところだ。秀嶋さんにしっかりと寺を守って欲しいのである。一方の幸枝さんも8歳と6歳になる孫のことが気がかり。活動そのものには理解を示しても自分の家族を放り出してまで活動にのめり込んでいる秀嶋さんに腹を立てている。どうやら、親子の間で家族のあり方やその意識にズレが生じてしまったようだ。こうした両親の不満に対して秀嶋さんは「こんな活動をしていて親から反対されるのは当然のことだと思います。反対せずにがんばれ!などと言われたらかえって変だと思います」と淡々とした様子。だが、どんなに反対されても、今の活動を止めようとは思わないというのだ。秀嶋さんは8年前にベトナムで会ったトゥアンさんという1人の女性の活動に大きなショックを受けたという。彼女は貧しい子供たちのために自費で保護施設を建て、さらに道に捨てられていた幼子を養女にして育てていたのだ。そんな彼女の生き方がその後の秀嶋さんの人生を変えたと言ってもいい。
「自分は寺に生まれて生きるということはどういうことかと真剣に考え続けていました。家を守るとか、幸せな家庭を作るというのは僧侶にとって本当に幸せなのだろうか…。自分には僧侶としてもっと違った役割を背負っているのではないか、というように考え始めたんです。自分で家族という壁を作るのではなく、自分と関わりのある人たち全員が家族と思って接しなければならないと考えるようになったんです」と秀嶋さんは話す。今の秀嶋さんにとっては、自分の子も、隣の子も今関わりを持つベトナムのストリートチルドレンも皆家族なのだというのだ。
番組は秀嶋家の様々な思いや秀嶋さんのボランティア活動を紹介しながら、ベトナムの施設の様子や子供たちの生活の様子を取材。戦後、日本人が経済的豊かさを求めて自ら飛び込んだ競争型社会、そんな社会の中で我々は一体何を目指してきたのか?そして我々が目指してきたものが果たして本当の幸せと言えるのかどうかについて、1人の僧侶とその家族を通して考える。
番組を取材したサガテレビの田島輝彦ディレクターは「日本は確かに経済的な豊かさを手に入れましたが、人間としての本当の豊かさや幸せは別のところにあるのではないか、ということを番組を取材して実感しました。やはり、人間は人生の最後に笑って死を迎えられるのが一番の幸せではないかと自分では思っています。ただこうした幸せを測る尺度は人によって様々だと思います。番組を見てもらって何が自分には一番大切なのか、何が幸せなのかということをもう一度立ち止まって考えるきっかけにしれもらえれば…」と語る。
8月4日(水)深夜26:20〜27:15放送の第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『わたしの・家族 〜お坊さんのベトナム往来〜』<制作 サガテレビ>にご期待下さい!
<番組タイトル> |
第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『わたしの・家族 〜お坊さんのベトナム往来〜』 |
<放送日時> |
1999年8月4日(水)深夜26:20〜27:15 |
<スタッフ> |
プロデューサー : 永尾三明
ディレクター : 田島輝彦
構 成 : 徳丸 望
撮 影 : 田中義治、花森 勇
録 音 : 安楽雄三
編 集 : 富石浩通 |
<制 作> |
サガテレビ |
1999年7月28日発行「パブペパNo.99-245」 フジテレビ広報部
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