FNSドキュメンタリー大賞
祖父・父・息子…親子3代で漁師を続ける一家の日々に密着!
荒々しい海を舞台に文字どおり命をかけて生きる男たちと、彼らを支える家族たち…
彼らの生き様を通して日本の漁業の現状に迫る迫真のドキュメンタリー!!

第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『神々の海 〜親子3代漁師の200日〜』 (制作 山陰中央テレビ)

<6月30日(水)深夜26時20分放送>

 第一次産業の衰退に伴い、漁業に携わる人たちも年々減り続け、漁師の人数は昭和28年をピークに、現在はその35%にまで減少してしまったという。そんな中、親子3代揃って漁師をしている一家が島根県大社町にいるという。
 6月30日(水)深夜26:20放送の第8回FNSドキュメンタリー大賞『神々の海 〜親子3代漁師の200日〜』(制作 山陰中央テレビ)は3世代で漁師を続ける一家の日常を追いながら、衰退していく日本の漁業の現状に迫る。
 番組を取材した中島 崇ディレクターは、実は去年の第7回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『風と語る 〜モンゴル大火災の少年〜』ではカメラマンとして酷寒のモンゴルで厳しい現実をつぶさに映像に収めたが、今回はディレクターとしての挑戦だ。
「山陰の海の中というのは実はこれまでほとんど放送されたことがなかったんです。そこで今回山陰の海をテーマに取材できないかと思いリサーチをしていたところ、親子3代で漁師をしている一家と知り合い、取材がスタートしました」と語る


 島根県出雲市の北側に位置する大社町は神話に彩られた出雲大社の門前町として今も賑わいを見せている。ここにある大社町漁協は古事記の国引きの綱の跡と言われている稲佐浜(いなさはま)に面した大社湾と国引きによって引き寄せられた日御碕(ひのみさき)を主な漁場として、昔からタイ、ブリ、アワビなどを採っていた。だが、大社漁協も漁師の高齢化が進み、後継者がいないのが大きな悩みだ。
 78歳になる斉藤寿之助(じゅのすけ)さんは波の静かな日御碕の湾内で船の上からガラスを張った箱で海底を見ながら、長さ4メートルの竿でアワビやサザエなどを突く出雲地方独特の“かなぎ漁”を60年以上も続けている。
「“かなぎ漁”をやる漁師は昔は結構いたんだが、今やってるのはわしと弟の2人だけになってしまった…」寿之助さんは昔を懐かしむように、また寂しそうにそう語る。寿之助さんの息子の友義さん(52歳)は新型船を購入し、ブリなどの高級魚を追いかける一家の柱だ。そして一昨年サラリーマンから転職して漁師になった彰さん(27歳)は友義さんの息子だ。現在は素潜りでアワビやサザエを採る新米漁師。高齢化が進み、平均年齢が56歳の大社漁協の期待の星だ
「漁師の世界にも高齢化の波が押し寄せており、50〜60代が一番脂がのっている世代で、70〜80歳でも現役でやっているケースが多いんですが、彼らは町のお年寄りと比べると日頃鍛えているということもあると思うんですが、非常に元気なんです。海の男たちはすごいなと改めて感じました」(中島ディレクター)
 彰さんの妻、瑠理子さんは彰さんとは水産高校の同級生だ。瑠理子さんは「自分も漁師になりたかった」だけに、彰さんがサラリーマンを辞めて漁師になることに大賛成だったという。寿之助さんも自分の後継者が出来たことを大いに喜んでいた。だが、友義さんだけは反対だったという。
「漁師の生活が経済的に不安定なことに加え、何よりも危険な職業だから…。親としては継いで欲しくなかった」と友義さんは複雑な表情だ。腕利きの漁師でさえ、息子を後継者にしたくない、という現実が現在の漁業の衰退を物語っていると言えるのかも知れない。一家の年収は3人合わせて約1300万円ほどだが、その中から船の燃料代に加え、3人の生命保険料を支払わなければならない。「保証が全然ないから生命保険料はたくさん払ってるよ!」と一家の家計を仕切る友義さんの妻、静世さんはそう語り、一家の苦しい台所事情を語った。

 この冬は海が荒れ、漁に出られる日も少なくなった。だが、漁に出られないということは、すなわち収入の減少を意味するのだ。そして追い打ちをかけるように斉藤さんたちに不幸が襲う。
 実はこの冬、斉藤家の近所の安田家の息子が遭難死したのだ。兵庫県に出稼ぎに行き、カニ漁をしている時にシケにあい、漁船が転覆。乗組員全員が死亡したというのだ。
 不幸はさらに続く。寿之助さんと共に“かなぎ漁”をしていた弟の末吉さん(71歳)も遭難死したのだ。今年3月に湾内の生け簀に入れておいたサザエを採ろうとした時、突然の高波を受けて船が転覆、海に投げ出されてしまったのだ。漁協にとっては10年ぶりの事故。漁協始まって以来という大規模な捜索が行われた結果、末吉さんは2日後に遺体で発見された。海の怖さを目の当たりにした新米漁師の彰さんが漁を続けるのかどうか…近所の人たちは心配した。しかし当の彰さんは周りの心配をよそに「末吉さんが亡くなっても、海に対する考え方は変わらない」と話し、5日後には漁に出かける姿が見られた。

 海が穏やかなある春の日、漁に出た友義さんは当てがはずれてしまい、朝から1匹も釣れない状況が続いていた。「ダメな時は家に帰る。身体が続く限り、漁師は出来るから…」と残念そうに語る友義さん。一方、この日別の船で漁に出た彰さんは違った。何とブリを8尾も釣り上げたのだ。彰さんの糸が別の漁師の糸に引っかかり、途中で切れてしまいうという不運に見舞われたにも関わらずだ。
「糸が切れなきゃ30(尾)は行けたのに…!」
彰さんが漁師の先輩である父・友義さんを追い越した瞬間だった。「釣れない時は釣れないが、大漁の時にはサラリーマンの1ヶ月分の金をたった1日で稼ぐことが出来る。それが漁師の魅力」と彰さんは力強く言いきった。彰さんには今年6月に待望の2人目の子供が生まれる予定だ。
 番組の見どころについて中島ディレクターは「山陰の海は結構寒々としたイメージがありますが、実は水産資源はかなり豊富なんです。特に冬はブリが採れるので、大漁の場合は1日に60万円以上の水揚げがあったりするんですが、ただ、冬はとても荒く、この1月に漁に出られたのは1週間程度でした。そうした荒々しい海を舞台にぎりぎりのところで生きている男たちと彼らを支える家族がいるというのを山陰の海の美しい映像と共に見てもらえればと思います」と話す。

 3世代の漁師の日常生活を追いながら、日本の漁業の現状を探る第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『神々の海 〜親子3代漁師の200日〜』(制作 山陰中央テレビ)<6月30日(水)深夜26:20放送>にご期待下さい!!


<番組タイトル> 第8回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『神々の海 〜親子3代漁師の200日〜』
<放送日時> 1999年6月30日(水)深夜26:20〜27:15
<スタッフ> プロデューサー : 横地秀和
ディレクター : 中島 崇
<制 作> 山陰中央テレビ

1999年6月17日発行「パブペパNo.99-194」 フジテレビ広報部