FNSドキュメンタリー大賞
FNS各局がそれぞれの視点で切り取った28通りの日本の断面!

『第8回FNSドキュメンタリー大賞』参加作品いよいよ放送開始!!
各ブロック会議リポート(1)東日本編

  「近畿・中国・四国ブロック会議」
 3月26日午後、冷たい雨がそぼ降る新大阪駅に降り立つ。気の早い桜の何本かは、既に満開に近い。それを横目に見つつ関西テレビの新社屋に到着、鮮やかな色使いが印象的だ。 「よ〜し、行くぞ」。初めて足を踏み入れるところは、迷惑承知であちこち探検させていただくことにしており、8階の編成・制作・広報フロアをはじめ、7階の報道フロア、6階のスタジオなどを隈無く歩き回る。何人もの見知った顔に出会い挨拶を交わすが、何故かそそくさと社屋を後にする人が多い。
 「きょう午後3時からストなんです」
 「へっ!?」
 春闘のあおりで、会議は不成立?一体ど〜なるんでっか?などという心配はもちろん無用。関西テレビからは報道制作部の正木森三部長と田川欽也デスクチーフが出席、顔ぶれが全て揃ったところで、極めて真面目に、ブロック会議は始まった。


*関西テレビ(KTV) 『絆 〜それでも赤ちゃんが欲しかった〜』
 既に3月に放送済み。前回、精神医療の闇の部分に切り込んで、見事に準大賞を獲得した宮田輝美ディレクターが、今度は「体外受精」をテーマに選んだ。どのように映像化したのか楽しみだ。その辺りを是非聞きたかったのだが、残念ながらスト決行中!プロデューサーの正木森三・報道制作部長によると「取材に協力してくれたご夫婦から最終的にOKをもらうのに時間がかかりました」。その辺りの詳しい話については「夜まで待とう!!」

*山陰中央テレビ(TSK) 『神々の海 〜親子3代漁師の200日〜』
 テーマは山陰の美しい海とそこに生きる人々だ。祖父の代から3代続く漁師一家が縦軸になるようだ。今回担当する中島崇ディレクターは、去年「風と語る 〜モンゴル大火災の少年〜」ではカメラマンとして、酷寒のモンゴルで厳しい現実をつぶさに映像に収めた。「帰ってすぐに水中撮影なんです」。張り切って朝一番に松江に戻っていった。

*岡山放送(OHK) 『鏡の中の自画像』
 岡山県でただ一人の在日韓国人女性国語教師。全く母国語は話せない。戦中の朝鮮で寺を開いていた94歳の住職。朝鮮半島から強制連行された人たちの遺骨返還運動を続けている。そして、やはり遺骨返還運動をきっかけに韓国と交流を続ける女子高生たち。それぞれの思いを通して、日韓関係を考える企画だ。5月中旬に自局で放送の予定。注目は、戦前戦中の朝鮮半島で地元の人に日本人化教育をしていた「大和塾」という組織にスポットが当てられること。「統一地方選の取材から外れて、仕上げにかかります」(笠見武男ディレクター)

*テレビ新広島(TSS) 『アビよ、高く鳴け』(仮)
 古くから伝わる「アビ漁」を通して、瀬戸内海の環境破壊を訴える。県の鳥になっている渡り鳥アビに追われイカナゴが海中に逃げると、タイがそれを狙って浮上し、そのタイを漁師が一本釣りするという大変珍しい漁法だ。そのアビが激減している。海砂大量採取などによりイカナゴがいなくなったためだ。「漁師だけを追うとノスタルジーにしかならない。人とアビとの関わり、環境破壊をどう伝えるかですね」(西原 博・企画 制作部長)

*愛媛放送(EBC) 『平成の井戸壁(戦後民主主義を問う最終3弾)』
 今回の統一地方選で、12年ぶりの返り咲きを狙った73歳の元県議が主人公だ。彼は、戦時中に特攻で戦死した兄が、戦後の国のあり方などについて綴った感動的な遺書を拠り所にして生きてきた。と書くと何か重苦しさを感じてしまうが、山の中の小屋で仙人のような生活を送り、選挙運動では自転車で走り回って土下座を繰 り返す、かなりユニークな人物らしい。彼の選挙戦を通して政治とは、日本の民主主義とはを考える。「選挙に勝っても負けても、絵になるじいさんです」(窪田力雄・報道制作局次長)
 ここのところ旋風を巻き起こしている「笑ってドキュメンタリー」は今年も健在だ!

*高知さんさんテレビ(KSS) 『四万十川メッセージ 〜清流の現在・過去・未来〜』
 最後に残された清流・四万十川と真っ向から取り組む。上流から下流へ移動しながら、15年前と現在の移り変わりや、流域の住民が清流を残すために行っている様々な取り組みなどを紹介し、「共生と循環」という視点で川を見つめ直す。「あまり知られていませんが、上流・中流は結構、護岸工事も進められています。それ と、上流の愛媛県からの養豚の屎尿が川を汚している実体もありますし…」(鍋島康夫・報道制作局長)これに対し、「愛媛県を強く叱って下さい」(愛媛放送 窪田力雄・報道制作局次長)


 以上がこのブロック6局の制作状況だ。既に自局で放送済みの関西テレビ以外の局もかなり制作は進んでおり、スケジュール的な問題はなさそう。また個人的に嬉しいのが、テーマが多岐にわたっていること。まさに様々な「日本の断面」が見られそうだ。  ここのところ中部ブロックに名を成さしめているが、前々回は準大賞と佳作、前回も準大賞獲得と、近畿・ 中国四国ブロックのレベルは高く、今回も大いに期待できそう。
 最後になりましたが、ブロック会議全体(もちろん夜の部を含む)をとりまとめていただいた関西テレビの正木森三報道制作部長と田川欽也デスクチーフに、改めてお礼を申し上げます。(晴)


「九州ブロック会議」
 九州・沖縄ブロックの制作担当者会議は4月9日(金)小雨の降る中、テレビ西日本の役員会議室で行われた。各ブロック会議の中では一番最後の開催だっが、特に今回試験的にある試みを導入した。それは会議の席でそれぞれの局の作品の内容を一部VTRでプレビューしようというものだ。事前にフジテレビネットワーク局から各局に「映像を見ながら会議を進めてはどうか」という提案を行った結果、ほとんどの局がVTRもしくは写真持参で駆けつけてくれた。そして会議ではVTRを見ながら現在の制作進行状況や直面している問題点などが議論され、大いに盛り上がった。“百聞は一見に如かず”とはまさにこのことなのか!というのが会 議出席者の共通した意見だったと言える。その盛り上がりは会議後の懇親会までもつれ込み、それぞれのドキュメンタリー論を闘わせながら時間が経つのも忘れて酒を酌み交わした。中締めでテレビ西日本編成部の小城 忠担当部長が「実は今年ぜひ大賞を取ってもらいたい局がある。それはTNCではない。サガテレビだ!」とブロックの中で最年少の田島ディレクターにエールを送ると会場は拍手の渦・・・田島ディレクターも「前からずっと番組を作りたいという希望があったが、今回制作部に異動してやっと夢がかなった。一生懸命がんばりたい」とエールに応えた。
 ところで話は変わるが、実は会議や懇親会の席上、非常に印象に残った言葉がある。それは「普通の生活を普通に撮影して普通に放送したいと思っている」という一言だ。「あえてヤマを作らず、淡々と生活の一部を切り取り、それを見せる。そうすることで見ている人たちに何かを感じ取ってもらえるはずだ。今年はあえてドキュメンタリーの原点にかえってみたい」と力強く語るディレクターが少なからずいた。 “ドキュメンタリーとは一体何なのか?”そんな答えを九州ブロックの作品が見せてくれるのかも知れない。「このところ賞から遠ざかっているから今年こそこのブロックの中から賞を取りたい!」(テレビ西日本  寺崎一雄編成制作局長)という九州ブロックの気合いに乞う!ご期待!

会議の出席者及び作品は以下の通り


*テレビ西日本(TNC)菅野英雄プロデューサー、尾登憲治ディレクター 『心配せんでもよか! 〜美野島界隈・老いの光景〜』(仮)
 福岡市博多区美野島はお年寄りが際だって多い。最近元気がないこの街だが、若い世代を巻き込んで新しい地域共同体を作り、お年寄りに優しく、しかも元気のいい町作りを行うための方策を模索し始めている。これからの高齢化社会を迎えるにあたり、お年寄りにとって優しい町とは一体どういうものなのかについて美野島の老いの光景、地域あげてのお年寄りに優しい町作りへの挑戦を通して考える。

*サガテレビ(STS)永尾三明プロデューサー、田島輝彦ディレクター 『瞳輝くとき 〜ベトナム・そしてある僧侶の半生〜』(仮)
 佐賀市内に初めてベトナム料理店「コンビンザン」を開いた秀嶋正孝さん(44歳)はお寺の長男で本職はお坊さんだ。8年前にベトナムへ行った際、ベトナムの子供たちの生活苦を見て何かをしたい!という強い思いから「ベトナム育英会」を設立。檀家の理解を得て勤行は早朝に回し、それ以外のほとんどの 時間を店で過ごす秀嶋さんは 店の収益を全額ベトナムに送っている。ただ自分の家族を犠牲にしてまでも ベトナムの子供たちへの支援活動を続けていることに迷いがない訳ではない。番組では彼の活動を通 して家族の絆や本当の豊かさについて問題提起を行う。

*テレビ長崎(KTN)山浦政弘プロデューサー、大浦 勝ディレクター 『茜さす海 〜五島列島・10人家族の日々〜』
 吉田正人さん(48)一家は6人の子供と72歳のおじいちゃん夫婦3世代10人の大家族だ。一家はクリスチャン。漁業・農業の他、家畜を育てて五島の海水を原料に塩を作り、苦汁から豆腐も作っている。
 長女の茜さん(21歳)は軽度の知的障害者。正人さんは娘が自立できるよにと塩作りを始め、塩の名前も茜と付けた。自給自足に近い一家の暮らしぶりを通して本当の豊かさとは、また家族とは何かを問いかける。

*テレビ熊本(TKU)徳永幹男ディレクター 『生きて、そして生きぬいて 〜開拓村に綴られる命の絆〜』(仮)
 戦後、旧満州から引き揚げてきた熊本出身の東陽開拓団は内地で第三の故郷建設を夢見て阿蘇外輪山の麓に鍬をふるった。その開拓村は再入植を果たして50年を迎えた満州開拓、敗戦後の難民暮らし、そして内地への引き揚げ、再入植と東陽開拓団の数奇な流転の半世紀を検証しながら人の命の絆を描く。

*テレビ大分(TOS)辻 広平プロデューサー兼ディレクター 『なしの花の咲くころ』(仮)
 農場を経営する卯野英治さんには4人の娘がいる。幼い頃から祖父母や両親の仕事ぶりを見て苦労を理解しながら農業を受け継いでいる。三女のさゆりさん(22歳)は農業を愛しながらも親から独立し、他の果樹園に嫁いだ。さゆりさんの3年間の姿を通して、家族の絆、姉妹の考え方、現代の親子関係と農業の現状を描く。

*鹿児島テレビ(KTS)下本地章人ディレクター 『夢はベッドから・・・麻理・絵理青春日記』(仮)
 岩崎麻理子・絵理子さんは双子の15歳。2人は「骨格形成不全症」という重い病で車いすとベッドの上での生活を強いられている。身長は1メートル足らずだが、2人は明るい普通の女の子。将来の夢はイラストレーターだという。番組では2人が毎日欠かさずその日の出来事を綴っている日記を縦軸に多感な少女の奮闘ぶりを追う。

*テレビ宮崎(UMK)坂元秀光ディレクター 『石の証言 〜平和の搭の真実〜』(仮)
 昭和15年に建設された「八紘一宇」の搭は軍国主義の象徴として造られた。だが、戦後この塔が「平和の塔」として「八紘一宇」の名で再復活した。軍国主義の象徴だったものが戦後になって平和の象徴とすり替えられていく過程を探りながら、日本人の国際感覚の矛盾、戦争に対する心理を追及。平和への問いかけを行う。

*沖縄テレビ(OTV)石川洋一ディレクター 『よみがえる幻の泡盛』(仮)
 沖縄戦で壊滅したと見られていた戦前の黒こうじ菌が実は東大の研究室に保管されていることが判明した。沖縄にある咲元酒造の先代の社長が東大に菌を提供していたというのだ。戦前の泡盛復活に夢をかける咲元酒造の現社長佐久本政雄さんら戦前の泡盛復活に夢をかける男たちの情熱を描く。(み)


 各ディレクターの訴えをどのような映像で見せてくれるのか?またその中でどんな魅力的な人間に出会わせてくれるのだろうか?
 間もなく放送が始まる『第8回FNSドキュメンタリー大賞』に乞う!ご期待!


1999年4月21日発行「パブペパNo.99-137」 フジテレビ広報部