FNSドキュメンタリー大賞
世界で公式に認められた“イタイイタイ病”のカドミウム原因説を覆そうという
日本の政官財学のミステリアスな“鉄の絆”の動きを追い続けたサスペンスタッチの渾身のドキュメンタリー

第7回FNSドキュメンタリー大賞受賞作品
『30年目のグレーゾーン 〜環境汚染とこの国のかたち〜』 (制作 富山テレビ)

<1999年1月31日(日)午後4時放送>
「“イタイイタイ病”というひとつの公害病を通して露呈したこの国の形というものをぜひ出したかった…」(富山テレビ青柳良明プロデューサー兼ディレクター)

 『第7回FNSドキュメンタリー大賞』はこの度審査が行われ、富山テレビ(BBT)制作の『30年目のグレーゾーン〜環境汚染とこの国のかたち〜』が見事大賞に輝いた。そしてこの大賞受賞作品が1月31日(日)午後4時から『決定!第7回FNSドキュメンタリー大賞』<全国28局ネット>の中で全編放送される。
 この作品は“イタイイタイ病”の原因として世界的に公式に結論づけられたカドミウム説を覆そうというミステリアスな日本の“政官財学の鉄の絆”の動きを追ったサスペンスタッチのドキュメンタリーだ。取材期間は10年以上。取材班は日本国内だけでなく、アメリカやヨーロッパにも飛んで取材を続けてきた。
 “イタイイタイ病”とは神岡鉱業が廃液としてタレ流した有害重金属カドミウム汚染によって富山県の神通川流域で発生した公害病だ。腎臓障害や多発骨折を引き起こすと共に全身に激しい痛みを伴う。環境汚染の恐ろしさを世界へ初めて知らしめたこの“イタイイタイ病”も裁判開始からすでに30年。だが、この間、この“イタイイタイ病”を巡って真実を覆そうとする驚くべき陰謀が企てられてきたという事実は意外に知られていない。

 国内で二度にわたって提訴された裁判やWHO(世界保健機関)など国際機関や国際的な学会でも、“イタイイタイ病”の原因は神岡鉱山が神通川にタレ流していた有害重金属カドミウムであることが、公式に結論づけられている。
 ところが日本国内では、なんと“政官財学”の鉄のピラミッドが形成され“イタイイタイ病”の原因はカドミウムではない”とする説が世界に向け発信されていたというのだ
『30年目のグレーゾーン〜環境汚染とこの国のかたち〜』は国内外の学者たちの動きを軸に世界の常識とは大きくかけ離れた“ニッポンという国の奇妙な形”を追った超大作だ。
 “イタイイタイ病”の発見者である富山県婦中町の開業医・萩野昇医師は、患者の救済にあたりながら、“イタイイタイ病”を否定する見えない圧力と戦い、死去した。その直後から、“イタイイタイ病”を歴史の陰に葬ろうとする動きが静かに潜行することになる。動物実験結果の隠匿。ジュネーブにあるWHO(世界保健機関)でのドキュメント決定に際して日本政府代表をつとめる学者による執拗な反対。こうした中で、1人の動物学者が猿の実験データをもとに“真実の姿”を告発した。ところが、この学者は実験班をはずされ、同時にストックホルムで何とも奇異な学説が発表される。さらに日本国内には“日本の説”認められたという手紙が送りつけられてきたのだ・・・。これまでの定説を覆す日本の主張が本当に認められたのだろうか・・・丹念な取材で解き明かされるひとつひとつの事実経過はまさにサスペンスドラマであると言っても過言ではない。そして、去年5月、とうとう世界の学者らが立ち上がり、富山に集ってきた。そして“30年目のグレーゾーン”を巡って直接対決が行われることに・・・。
 このドキュメンタリーを制作した富山テレビ第二報道部の青柳良明プロデューサー兼ディレクターは48歳。根っからのドキュメンタリストだ。富山テレビ入社以来、県政担当記者、ニュースキャスター、取材デスク、報道部長、編集長などを担当しながらドキュメンタリーの取材を続けてきた。“イタイイタイ病”の取材を始めたきっかけについて青柳ディレクターは「県政担当記者だった10年以上前、“イタイイタイ病”の認定に関する国の仕事を県が請け負ってやっていたが、患者がいくら申請してもなかなか認めてもらえませんでした。これは一体どういうことなのだろうという率直な疑問が取材のスタートでした」と語る。富山テレビではこれまでに同テーマで30分、及び1時間のドキュメンタリーを制作、放送しているが、「番組で放送してしまうとその時は問題提起できてもそれで終わってしまう」のがいやで暇を見つけては継続取材してきた、という。
 そしてその集大成がこの作品になる訳だが、“ドキュメンタリーは給与以外のロマン!”と語るドキュメンタリストだけに、今回のドキュメンタリー大賞受賞を心から喜んだという。「最近ドキュメンタリー番組は肩身の狭い思いをしているが、ドキュメンタリーもテレビの中で重要な役割を担っているという気持が自分の中にある。自分が目指したこうした番組を認めてもらったことが本当にうれしい」(青柳ディレクター)
 また番組の見どころについては「“事実は小説よりも奇なり”というが事実を丹念に1つ1つ積み重ねていったらサスペンスドラマになった。“政官財学”の思惑から国際的にも決着がついている“イタイイタイ病”の原因を世界の舞台で再び強引に押し戻そうとするニッポンの非常識、いわゆるグローバルスタンダードから大きくはずれたこのニッポンという国の“形”というものをどうしても出したかった。55分間、ただひたすら黙って見て頂きたい」と力強く語った。  1月31日(日)午後4時から放送の『決定!第7回FNSドキュメンタリー大賞』ではこの渾身の力を込めたFNSドキュメンタリー大賞の大賞受賞作品『30年目のグレーゾーン〜環境汚染とこの国のかたち〜』を全編放送する他、準大賞に輝いた関西テレビ制作の『忘れられた精神病棟〜大和川病院が消えた日〜』、佳作に選ばれた石川テレビ制作の『麻酔〜医療被害者たちの叫び〜』さくらんぼテレビ制作の『神の座す里〜悩める「黒川能」の末裔〜』、フジテレビ制作の『私の子供を育てませんか?〜“沈没家族”という試み〜』の4作品のダイジェスト版も併せて放送する予定になっている。
 また、放送に先立って1月28日(木)正午から銀座東武ホテル(中央区銀座6−14−10)2階桜の間で「第7回FNSドキュメンタリー大賞」の贈賞式が行われる予定。


<番組タイトル> 第7回FNSドキュメンタリー大賞受賞作品 『30年目のグレーゾーン 〜環境汚染とこの国のかたち〜』
<放送日時> 1999年1月31日(日)午後4時放送
<スタッフ> プロデューサー : 青柳良明(富山テレビ第二報道部長)
ディレクター : 青柳良明(富山テレビ第二報道部長)
撮  影 : 井村大蔵
構  成 : 前 貴史
ナレーション : 須田真理
<制 作> 富山テレビ放送(BBT)

なお、上記作品が放送される番組タイトル名及びスタッフは以下の通り
<番組タイトル> 『決定!第7回FNSドキュメンタリー大賞』
<放送日時> 1999年1月31日(日)16:00〜17:25(全国28局ネット放送)
<スタッフ> プロデューサー : 岡崎洋三(フジテレビ第三制作部)
ディレクター : 市川雅康、野中哲也(以上、フジテレビ第三制作部)
<制 作> フジテレビ第三制作部

1999年1月8日発行「パブペパNo.99-10」 フジテレビ広報部