FNSドキュメンタリー大賞
「同じ生きるなら、楽しく生きたい…」
難病で失明した母親と目に障害を持つ父親が懸命に子育てに姿にカメラ密着!
家族3人と盲導犬1匹のある一家の300日を見つめた子育て奮闘記!

第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『スキンシップ 〜盲人夫婦の子育て奮闘記〜』 (制作 山陰中央テレビ)

<10月8日(火)26:53〜27:48放送>
 「一瞬でもいい、娘の顔が見たい」。だが、失明した母親にその顔は見えない…。10万人に1人という脳と脊髄の難病で失明し、再発の恐怖と隣合わせの岩谷みどりさん(26)は、同じく目に障害を持つ誠さん(27)と結婚。赤ちゃんが生まれ「涼花」と名づけました。難病と付き合いながら子育てに奮闘する夫婦。涼花が大きくなったら聞かせようと「声の日記」をつけ始めました。
 10月8日(火)深夜26:53〜27:48放送の第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『スキンシップ 〜盲人夫婦の子育て奮闘記〜』(制作 山陰中央テレビ)は、家族3人と盲導犬1匹。岩谷家の300日を見つめた子育て奮闘記です。

 岩谷 誠さん・みどりさん夫婦が住んでいるのは、島根県松江市の駅前商店街。目に障害がある2人は、交通や買い物に便利な駅前のマンションに住んでいます。
 みどりさんは、中学校2年生の時、10万人に1人という国指定の難病「多発性硬化症」と診断されました。多発性硬化症は、脳や神経系の病気で、ウイルスや細菌から体を守る「免疫」が、何かのきっかけで自分自身を攻撃してしまう難病です。みどりさんの場合は視神経を攻撃したため、失明にいたりました。やっかいなことに病気の原因は不明で、いつどこに再発するかわかりません。みどりさんは、いわば脳に爆弾を抱えたまま生活しているのです。
 14から15歳の間に、両親の離婚や、失明の宣告を受けるなど、人生の絶望をなめつくしたみどりさん。気丈にも、自分の運命を受け入れ盲学校に進学することを決めました。そして、そこで誠さんとの運命的な出会いを果たすことになりました。みどりさんが3年生の時でした。
 一方の誠さんは、19歳の時に「網膜色素変性症」という病気であることがわかり、会社を辞めて盲学校に入学してきました。この病気は視力が低下し、夜盲症や、視野が狭くなっていく国指定の難病で遺伝の可能性もあります。誠さんは将来失明することを考え、点字やマッサージを学ぶために、盲学校に入学したのでした。
 2人が、付き合い始めてからは、みどりさんがリードし「結婚しよう」と猛烈にアタック。誠さんの卒業と同時に、2人は一緒に暮らし始めました。
 みどりさんはこう言いました。
 「目が見えなくなってからの夢は結婚。こんな身体で結婚も出来ず、おばさんになってしまったら惨めだから。でも、夢は夢。無理だと思っていた。けれど誠さんと出会えた。こんなにうれしいことはなかった」。
 目が見えなくなったことでたくさんのことを諦めてきたみどりさん。でも、結婚だけはどうしてもしたかった。そして、その夢が叶ったのは23歳の時でした。
 それから半年後、みどりさんは妊娠しました。うれしさと同時に、不安も襲ってきました。みどりさんは、病気が発覚した14歳の時から、大量の薬を飲み続けていたからです。主治医は「生まれてくる子供に障害が出るかも知れない」と2人に話しましたが、2人の心は決まっていました。
 「何があっても産む…」
 2人は言います。「生まれてくる子供がどう思うかわからないけれど、たとえ子供に何か障害があったとしても、障害を持つ私達は子供の気持ちをわかってあげられるし、アドバイスもしてあげられるから、大丈夫」と…。そして、女の子が生まれました。
 検査の結果、赤ちゃんの身体に異常はなく、ひとまず2人はほっと胸をなでおろしました。
 赤ちゃんに涼花と名づけたみどりさんと誠さん。夫婦二人三脚の子育てが始まりました。疲れはみどりさんの病気にとって大敵なため、しばらくの間、涼花ちゃんは乳児院に預けることになりましたが、みどりさんの両親や兄弟が毎日送り迎えをしてくれました。
 夫の誠さんは仕事が終わるとまっすぐ家に帰り、涼花ちゃんをお風呂に入れたりオムツを替えたり。子育てから逃げ出すタイプの夫とは違います。  家族に支えられられながら、みどりさんは家事と子育ての両立を続けます。目が見えないことで、洋服を裏に着せたり、ミルクをこぼしたりと、苦労もありますが、たとえ健常者の2倍の時間がかかっても涼花ちゃんの世話は何でもします。
 2001年秋、みどりさんは大阪の関西ライトハウスに預けていた盲導犬チャプレィを迎えに行きました。みどりさんと再会したチャプレィは大喜び。何度もみどりさんに飛びかかっていました。
 4ヵ月ぶりに松江に帰ってきたチャプレィですが、家には、みどりさんの愛情を独り占めする「涼花」ちゃんがいました。初めはかまってもらえず、寂しそうにしていたチャプレィですが、今では涼花ちゃんの1番の友達。すっかり元気になったチャプレィはみどりさんの目の代わりとして、大活躍の毎日です。
 難病で失明し、脳に爆弾を抱えながらも、いつも前向きなみどりさん。急激に視力が低下し、視野が狭くなっていく誠さん。
 「不安」は常につきまといますが、岩谷家には、毎日笑い声が響いています。目が不自由なことで出来ないことは確かにありますが、夢を奪われたりはしないのだから…。
 誠さんの夢は、盲学校の仲間とマッサージのクリニックを作ること。みどりさんは子育てと家事、盲導犬の世話、そしてマッサージの仕事を両立させることが次の目標だと話しています。2人は目が不自由なこと、難病を抱えているということをあまり意識せず、幸せな生活を送っています。涼花ちゃんの成長が最大の楽しみ。みどりさんと誠さんは今、幸せの花園にいます。

 番組を取材した山陰中央テレビの奥村亜希ディレクターは、「みどりさんと誠さんと知り合ったのは、盲導犬チャプレィが縁です。盲導犬の取材を続けていた私は、ある日島根県内の盲導犬ユーザーの会で2人に出会いました。誠さんは、私と同じ年齢で26歳、すでに子持ち! みどりさんは若くて綺麗なお母さんでした。年齢が近い私たちはすぐに仲良くなりました。全盲のみどりさんと目の悪い誠さん。この夫婦は一体どうやって子育てをしているのだろう? それが知りたくて、岩谷家の取材を始めました。岩谷家はとにかく明るいんです。母親は全盲で脳と神経の病気で再発の可能性もあるし、父親も失明するかも知れないのに、難病という運命を背負っているとはとても思えないんです。2人は運命を悲観することなく楽しく生きています。それは、みどりさんも誠さんも決して諦めないからだと思います。2人は出会い結婚し子供も生まれた。人の2倍の時間がかかっても夫婦力を合わせて子育てをするし、盲導犬の面倒もみています。さらにマッサージのクリニックを作るという夢もあります。『同じ生きるなら、楽しく生きたい』。そんな2人の生き方を私はかっこいいと思いました。自分以外の何かのせいにして、いつも逃げている自分を恥ずかしいと思いました。障害があるとかないとかは関係がない、自分の心ひとつだと気づきました。全盲のみどりさんは娘さんと目の会話ができない。その分、名前を呼び話しかけ、抱いてスキンシップをとっています。お母さんのぬくもりはしっかりと伝わっている。誠さんも子育てに協力し、みどりさんをサポートしています。そんな2人の愛情を一身にうけ、涼花ちゃんは元気に育っています。障害があっても子育てはできるんです。」と番組を取材しての思いを話しています。

 10月8日(火)深夜26:53〜27:48放送の第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『スキンシップ 〜盲人夫婦の子育て奮闘記〜』(制作 山陰中央テレビ)をどうぞよろしくお願い致します。


<番組タイトル> 第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『スキンシップ 〜盲人夫婦の子育て奮闘記〜』
<放送日時> 10月8日(火)深夜26:53〜27:48
<スタッフ> プロデューサー : 野津富士男(山陰中央テレビ)
ディレクター・編集 : 奥村亜希(山陰中央テレビ)
サブディレクター : 宍道正五(TSKエンタープライズ)
撮    影 : 田辺福省(山陰中央テレビ)
構    成 : 平岡磨紀子(ドキュメンタリー工房)
ナレーション : 紺野 美沙子
<制  作> 山陰中央テレビ

2002年9月30日発行「パブペパNo.02-257」 フジテレビ広報部