FNSドキュメンタリー大賞
山あいの豪雪の村を舞台にした定年間近の駐在さんと村民との心温まるふれあいの物語!

第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『4129番目の村人 〜駐在さんと沢内村〜』 (制作 岩手めんこいテレビ)

<10月2日(水)深夜27:20〜28:15放送>
 岩手県南西部に位置する沢内村(さわうちむら)。四方を奥羽山脈に囲まれた高原性の盆地に位置するこの村は、県内屈指の豪雪地帯として知られるところです。
 この村の中心部に北上警察署・沢内駐在所があります。所長はこの道37年、沢内駐在所勤務6年の佐藤將瑠(さとう・まさる)警部補(59)
 冬場、2メートルを超す雪に覆われるこの地。佐藤さんの1日は早朝の雪かきから始り、通学路の交通監視、書類の整理、そして巡回連絡と毎日村内を駆け回ります。そんな佐藤さんを地域の人々は親しみを込めて「駐在さん」と呼びます。
 第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『4129番目の村民 〜駐在さんと沢内村から』(制作 岩手めんこいテレビ)は、山あいの豪雪の村を舞台にした定年間近の駐在さんと村民との心温まるふれあいの物語です。

 そもそも佐藤さんが沢内村へ赴任したのは「好きな山菜取りにこの村を訪れ、その自然に惚れこみ、希望を出した…」のがきっかけだったといいます。現在は奥さんと息子さんの3人暮らし。もちろん、住民票も沢内村にあります。
 沢内村は人口およそ4,000人。春の野山は山菜やきれいな花々が咲き乱れる、豊かな自然に恵まれたのどかな村。しかし数年前に開通したトンネルにより幹線道路は以前に比べ交通量が増え、それと同時に事件、事故も増えているといいます。地域の小学校では不審者の侵入を想定した避難訓練も行われるほどです。  そんなある日、死亡事故が発生しました。早朝、玄関先の雪かきをしていたお年寄りが車に轢かれたのです。村民、佐藤さんが守り続けてきた「死亡事故ゼロ」の記録は、512日間で途切れてしまったのです。
 「交通監視、安全運転の呼びかけなどできることはやって来た…」
 佐藤さんもショックを隠し切れません。高齢者が多いこの村、特に冬場は雪のため道幅も狭くなり、視界も悪い…。この日を境に佐藤さんは以前にも増して、1人暮らしのお年寄りの自宅を中心に巡るようになりました。交通安全の呼びかけだけでなく、様々な会話を通し地域住民と触れ合い、村を知る、これが佐藤さんの目指す駐在の姿です。

 そしてもう1つ、佐藤さんがこの村を知るため、現在特訓中のものがあります。それは、この村で生まれ歌い継がれている民謡「沢内甚句」です。民謡好きの間では日本一歌いこなすのが難しいといわれ、全国的にも知られています。村では毎年この甚句の大会も開催されるほどです。実は佐藤さんは大の民謡好き、20年ほど前、別の駐在所勤務時代に町主催の大会で優勝したこともあるのです。勤務を終えた夜、村一番の名人に沢内甚句を教わる佐藤さん。
 「地域に入り込んで地域住民との信頼関係を築くには、その土地の歌の心を知ること」。それが佐藤さんの持論です。
 ある日曜日、駐在所の裏で工事用重機のエンジン音が鳴り響きました。聞くと駐在所の裏に屋根まで積もった雪を取り除き、その雪でカマクラを作って、パーティーを開くのだといいます。半日かけて完成したカマクラは、8畳ほどもあろうかという大きなもの。勤務を終えた佐藤さんも交え、冬ならではのささやかなパーティー。佐藤さんの周りはいつも笑顔が絶えません。習いたての沢内甚句も飛び出します。
 「定年まであと1年、できればこの駐在所で勤めあげたい…」と願う佐藤さんでした。
 3月、沢内村にも遅い春が訪れようとしていました。村が一番輝く季節。佐藤さんにとっても待ちに待った季節の到来です。しかし同時に、春は転勤の季節でもあるのです。
 「出来ればこの村で勤め上げたい…」。佐藤さんのそんな願いはかなうのでしょうか。
 番組は、民謡が好きで、山菜採りが好き、そして何よりもこの村が好き…そんな沢内村駐在所長・佐藤さんと地域住民の触れ合い。雪深い小さな村のひと冬を見つめました。

 取材を担当した千葉徳雄ディレクターは振り返ってこんなエピソードを紹介してくれました。
 「一番印象に残っているのが、佐藤さんが勤務の日にもかかわらず、周辺住民が朝早くから駐在所に詰め掛けたカマクラパーティーの日です。ご近所の方は除雪機を持ちより、工事用重機まで使って作り始めたカマクラ。聞けば『佐藤さんが沢内村に赴任した年にも同じことをした…。佐藤さんは、こういう素朴なことが好きだから…』。近所の方が教えてくれました。その言葉通り、佐藤さんはカマクラが気になるようで、作業の様子をたびたび駐在所の窓からのぞいていました。そんな佐藤さんを横目に地域の皆さんは楽しそうにカマクラ作り。取材する私たちもなんだか幼いころを思い出し、ついには取材を一時止め、カマクラ作りを手伝うことに…。なんとも心地よい汗、そして皆さんとの会話。佐藤さんが、この村で駐在を続けたいと願う気持ちが、少しだけ分かった気がした瞬間でした。  平和過ぎるほどの村だけに、死亡事故が発生した時には、佐藤さんの気持ちが痛いほど私たちにも伝わってきました。事故の後、佐藤さんから話しが出るまでは、事故について直接触れないようにしよう、とスタッフ間で申し合わせをしたほどでした」
 警察に対し不信感を抱くさまざまな事件が報道される今日。こんな駐在さんもいることを知って欲しい…。 警察官として37年、定年間近かの駐在さんと地域住民の心温まる物語です。


<番組タイトル> 第11回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『4129番目の村民 〜駐在さんと沢内村から』
<放送日時> 9月27日(金)深夜27:13〜28:08
<スタッフ> プロデューサー : 野崎一裕(岩手めんこいテレビ報道制作部)
ディレクター : 千葉徳雄(めんこいエンタープライズ)
構    成 : 千葉 悟(フリーランス)
撮    影 : 浅沼淳一(めんこいエンタープライズ)
音    声 : 野作 剛(めんこいエンタープライズ)
編    集 : 佐々木 浩(めんこいエンタープライズ)
選 曲・M A : 山内智臣(めんこいエンタープライズ)
<制  作> 岩手めんこいテレビ

2002年9月27日発行「パブペパNo.02-255」 フジテレビ広報部