FNSドキュメンタリー大賞
第10回FNSドキュメンタリー大賞でグランプリを受賞!!

橋本真理子ディレクター
『こちら用務員室 〜教育現場の忘れ物〜』 (制作 テレビ静岡)

2002年1月27日(日)午後4時から放送の『決定!第10回FNSドキュメンタリー大賞(仮)』(全国28局ネット)で全編を放送!!

<2002年1月27日(日)午後4:00〜5:25>
 「FNS各局がそれぞれの視点で切り取った28通りの日本の断面」「FNSの良心」。そんなキャッチコピーがすっかり定着した「FNSドキュメンタリー大賞」も回を重ね、今回で10回目となった。審査は2001年12月12日(水)に行われ、テレビ静岡が制作した『こちら用務員室 〜教育現場の忘れ物〜』が見事グランプリを獲得した。

 そしてこの番組を制作したテレビ静岡報道部の橋本真理子ディレクター(31)は、入社8年目のバリバリの放送記者だ。そんな彼女の仕事ぶりについて同僚に聞いてみると、「負けず嫌い」「任された仕事は確実にこなす」「取材先への食い込みはピカイチ」…といった話が返ってきた。
 橋本ディレクターは、横浜国立大学教育学部卒業後、平成5年4月にテレビ静岡入社。報道部で1年半の内勤記者生活を送った後、沼津支社に転勤になり、女性としては異例の駐在記者を経験。
 「記者1人、カメラマン1人という厳しい環境でしたが、駆け出しの記者として日々のニュースを追いかけながら、取材のイロハを実戦で学ぶことができました。それに伊豆東方沖群発地震やJR東海道線列車衝突事故、ヤオハン・ジャパンの倒産といった、全国に発信する大きなニュースにも立ち会うことができました」と話す。
 そして、そんな記者一筋の生活を送っていた沼津時代に橋本ディレクターに大きな転機が訪れることに…。地道に取材を続けてきた「ヤオハン硬式野球部の女子選手が公式戦デビュー」というネタを、フジテレビ系列の夜のニュース『ニュースJAPAN』の企画のコーナーで放送することになったのだ。
 「100本近い取材テープを持ってフジテレビの編集室で、6日間徹夜状態で編集作業を続けたんですが、構成作家から『何でこういうシーンが撮れていないのか』とら散々言われました。今まではデイリーのニュース取材ばかりで、長尺の企画取材や編集を経験したことがなかったので、本当に辛い1週間だったんですが、その時の経験が今こうしてドキュメンタリー番組に関わることになった原点だったような気がしています。でもOA後はしばらく東京には行きたくありませんでしたけど…(笑)」

 橋本ディレクターは、この企画の放送直後に沼津支社から本社報道部に戻り、県政や市政をカバーする一方で、翌年の第8回からドキュメンタリー大賞に挑戦し続けてきた。
 「実は、第7回のドキュメンタリー大賞の贈賞式の後に、翌年の参加作品のディレクターやプロデューサーが集まる会議があったんですが、その時に贈賞式の様子を見ながら、必ずあの表彰台に乗ろうとプロデューサーと誓いあったんです」(橋本ディレクター)
 そしてその誓い通り、最初にノミネートされた第8回で、『イーちゃんの白い杖 〜100年目の盲学校〜』が見事“特別賞”を受賞。そして続く第9回の『笑顔が戻るまで 〜定時制高校からのメッセージ〜』は惜しくも賞は逃したが、逓信協会東海地方本部が設けている東海4県のラジオ・テレビ局の番組の中で“広く文化教養の向上発展に寄与したもの”に贈られる「前島賞」を受賞。そして3年目の今回、3度目の正直ではないが、『こちら用務員室 〜教育現場の忘れ物〜』で、ついに第10回ドキュメンタリー大賞の“グランプリ”に輝いた
 「今回は特に素晴らしい作品が多かったのでまったく自信がなかったんです。グランプリをいただいたと聞いた時は正直言って信じられませんでしたが、ずっと教育問題にこだわり続けてきたので本当にうれしかった」
と喜びを隠さない。

 橋本ディレクターは、3年連続で「教育」という1つのテーマで挑戦し続けたわけだが、これは10年にわたるドキュメンタリー大賞の歴史の中でも、非常に稀なケースだったといってもいい。彼女がこれほどまでに教育にこだわる理由は一体何なのだろうか…?
 「実は私、教師になりたかったんです。小学校のころに親身になって相談に乗ってくれたり、一生懸命頑張っている先生の姿を見て、自分もそういう仕事がしたいと思うようになり、大学は教育学部を選びました。ただ、教育実習などを通して、今の教育現場が以前とは大きく変わってしまっていることに気づきました。そして、このまま教師になると今のシステムに飲み込まれてしまうような気がして…。それで、教育とは離れた立場から教育を見つめ続けたいと考えて放送記者の道を選んだんです。1本目の盲学校、2本目の定時制高校、それに今回の用務員さんのいずれも“教育現場で忘れ去られているもの”がテーマになっています。今後も引き続き、こうしたテーマを追いながら教育問題を見つめ続けていききたいと思います」と語る。

 橋本ディレクターは現在、静岡県庁の記者クラブに所属し、主に県政をカバーしながら、教育と原発という2つのテーマを追いかけている。この3年は記者とディレクターという二足の草鞋をはいてきたわけだが、今回のグランプリ受賞を機に今後は記者とディレクターのどちらに軸足をおくことになるのだろうか…?
 「やはり基本はニュース取材だと思っています。日々の取材を通して、これは変だぞ、という疑問を感じたところから番組が生まれてくるのではないかと考えています。でもドキュメンタリーも好きなので、これからも番組として作り続けていきたいと思います」
 そして次回追いたいテーマについては、
「次はぜひ『教師から見た学校』という視点で取材をしてみたいと考えています。今教育現場で教師たちがどういう気持ちで子どもたちと接しているのかということを、教師側の視点で見てみたいんです。学級崩壊が叫ばれて久しいですが、教室から飛び出したり、動き回る子どもたちの存在を隠し、穏便に教科書通りやっていれば教師としての成績も上がるのかも知れません。でもそれが本当の教育なのかというと疑問が残ります。教師たちが教育現場で何を悩み、どう子どもたちと接していこうとしているのかという視点で今の教育現場をドキュメントしてみたいと思います。それから教育以外の分野では、一度調査報道を取り入れた番組を作ってみたいと考えていますが、ネタについては秘密です(笑)」
と意欲満々だ。

 橋本ディレクターが制作し、第10回FNSドキュメンタリー大賞のグランプリに輝いた『こちら用務員室 〜教育現場の忘れ物』(制作 テレビ静岡)は、1月27日(日)午後4:00〜5:25放送の『決定! 第10回FNSドキュメンタリー大賞(仮)』で全編放送される予定。
 皆さんお見逃しなく!!

『こちら用務員室 〜教育現場の忘れ物』
 無人の学校に入り、門や校舎のカギを開け、やかんで湯を沸かしゴミを回収する。剪定・ゴミ出し・机の修理…仕事は多種多様で、先生やこどもから依頼があればすぐに飛んで行く。本来、用務員は、「縁の下の力持ち」という存在だ。しかし静岡市立城北小学校の用務員、佐々木健治(ささき・けんじ)さん(54歳)と、杉山敏郎(すぎやま・としろう)さん(50歳)の2人のもとには、不登校気味のこども、転校してきたばかりでクラスになじめないこどもも来る。先生も、無理矢理クラスに帰そうとはせず、気分が落ち着いたら帰ってくればいいと考えている。「用務員室に来れば、本当のこどもの姿が分かる」と話す先生も多い。しかし、行政は財政難から、用務員を削減しつつあるのが現状だ。
 番組では、特に行動が多動な新1年生、不登校気味のこども、転入してきたばかりで友達ができないこどもを中心に、用務員がどう関わり、そして悩む先生をどう助け、ほっとさせていくのかを描く。そして学校には、先生ではない立場でこどもを見守る、第三者が必要な訳、そして、学校の中にも、逃げ場所が必要な理由を伝えていく。


2002年1月7日発行「パブペパNo.02-002」 フジテレビ広報部