FNSドキュメンタリー大賞
世界で初めて、死亡したオスの凍結精子を使った人工授精で誕生したチンパンジー「ナナ」
ナナの誕生が投げかけた「種の保存」の必要性と課題を考える

第10回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ナナは方舟に乗った〜種の保存と動物園〜』 (制作 テレビ新広島)

<5月2日(水)深夜26:55〜27:50放送>
 乱獲、密猟、自然破壊…。20世紀、われわれ人間は多くの野生動物たちとの共生を拒んだ。そして、多くの野生動物たちを絶滅させ、あるいは絶滅の危機に追いやった…。
 そんな反省に立ち、今、注目される試みが進行しつつある。人間の手によって絶滅しつつある多くの野生動物たちの種を救おうと、動物園が立ち上がっているのだ。
 5月2日(水)放送の第10回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『ナナは方舟に乗った 〜種の保存と動物園〜』(制作 テレビ新広島)は、世界で初めて、死亡したオスの凍結精子を使った人工受精で誕生したチンパンジー“ナナ”と、その誕生に隠された秘密、そして、飼育係とともに成長していく過程でぶつかる喜びと苦悩を通して、「種の保存」に挑戦している動物園の姿を伝える。そして、動物園先進国・アメリカの現状を紹介し、日本の動物園の目指すべき姿を浮き彫りにする。
 番組を担当した岩崎美幸ディレクターは、「チンパンジーという動物の面白さと魅力にとりつかれました。撮影は『何を考えているのか』と観察する楽しみがありました。番組で触れる彼らの感情や行動に、感心していただけることと思います。ただ、3年にわたる取材、収録テープ数300本を編集するにはとても苦労しました。カットするには惜しい映像も山ほどありましたが、その中から厳選した映像を楽しんでいただきたいと思います」と語る。

 1998年、広島市安佐動物公園でチンパンジー「ナナ」が誕生した。ナナは世界で初めて死亡したオスの凍結精子を使った人工授精で誕生したチンパンジーである。しかし、ナナを産んだ母親は1週間後に死亡、ナナは飼育係の手で育てられることになった。人間の温もりの中で、すくすくと愛らしく成長していくナナだが、その成長の前に大きな壁が立ちふさがった。経験を積んだ飼育係たちの目には、ナナがこんな風に映りはじめたのだ。
“チンパンジーらしくないチンパンジー…”
「このままでは人間でもチンパンジーでもない生き物になってしまう」。そう危惧した飼育係たちは熟慮の末に、ある決断を下すことになる。
「ナナがチンパンジーとして生きる道はただ一つ、同園にいるもう一頭のチンパンジー“ユウコ”の手に委ねるしかない!」
 しかし、それはナナにとっても飼育係にとっても予想を越えたハードな道のりだった。取材カメラは、ナナ誕生の前から動物園の動きに密着、ナナの成長を2年半にわたり、じっくりと撮影していった…。
 ナナの成長ぶりとともに、この番組のもう一つの柱になるのが、動物園の「種の保存」に対する取り組みだ。
 安佐動物公園は、死亡したオスの凍結精子をメスに人工授精し成功した。しかし、その成功の影には長い年月、メスの排卵周期を毎日のように記録し続けてきた飼育係たちの地道な努力などがあった。レクリエーション施設だと思われている動物園の裏には、日々絶滅しそうな動物の「種の保存」に取り組む地道な活動がある。しかし、それは欧米に比べ、日本ではほとんど知られていない姿であり、動物園やその関係者のこうした活動は、まだまだ手弁当で行われている。なぜ動物園が「種の保存」に取り組んでいるのか、その課題をアメリカの動物園をヒントに探る。

 取材を終えた岩崎ディレクターは、
「この手の動物成長ものは『可愛らしさ』だけの成長記になりがちですが、取材の中で、『種の保存』という動物園が取り組んでいる裏の仕事を知り、私自身もその必然性を感じるようになりました。『種の保存』という、特に日本人にはかけ離れた耳慣れないこと、しかし人類が考えなければならない課題を、ナナの可愛らしい成長を軸に訴えたいと考えました」と番組の狙い、見所について語る。

 21世紀、われわれ人間は野生動物たちと共存できるのだろうか?


<番組タイトル> 第10回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『ナナは方舟に乗った 〜種の保存と動物園〜』
<スタッフ> プロデューサー : 山中敏治(テレビ新広島)
ディレクター : 岩崎美幸(TSSプロダクション)
構    成 : 森 成礼
ナレーション : 池内淳子
編    集 : 地蔵堂 充(TSSプロダクション)
撮    影 : 山 本 龍(TSSプロダクション)
M    A : 広瀬康詞(TSSプロダクション)
<制 作> テレビ新広島

2001年4月11日発行「パブペパNo.01-125」 フジテレビ広報部