FNSドキュメンタリー大賞
ドナーが現れるまで待てない!

第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『いのちといのち 〜臓器移植と「示された道」〜』 (制作 高知さんさんテレビ)

<11月15日(水) 深夜26時25分放送>

 法律によって認められた国内初の脳死による臓器提供が行われた高知県。全国でも特に、脳死や移植に対して関心が高いといわれている。「臓器の移植に関する法律」、いわゆる「臓器移植法」(1997年6月施行)が成立して3年が経つが、日本における移植医療はどう変わったのか?
 11月15日(水)深夜放送の、第9回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品『いのちといのち 〜臓器移植と「示された道」〜』(制作 高知さんさんテレビでは、移植医療の取材に当たった高知さんさんテレビの小野典子記者の目を通して、日本の臓器移植の実態を探る。

 これまで「臓器提供者(=ドナー)の心臓が停止した後に臓器移植が可能」とされていたが、「臓器移植法」が施行されてからは、「脳死」と判断されたら移植が可能となった。だが、それでもまだ多くのの課題が残っているのが現状だ。
 先ず、ドナーの数が圧倒的に少ない、ということだ。日本では心臓の移植が必要とされる患者が約1,000人いるとされるが、年間でそのうちの半数が臓器提供を待つあいだに死亡しているという。
 もう一つの課題は、15才未満の子供は臓器提供が出来ない、ということ。裏を返せば、子供の患者は提供が受けられないということだ。心臓移植しか助からないと宣告された子どもたちは、命の希望をつなぐため、海外へ渡らねばならない。
 そんな中、小野記者は高知県内の2つの家族と出会う。

 拡張型心筋症(心臓の筋肉がゴムのように伸びて心臓が拡大する原因不明の難病。移植するしか治療法がない)に苦しみ、心臓移植に望みをつなぎながらも、国内では、ドナーが現れるまで生きられるかどうかわからない…。絶望と不安のなか、海外での移植手術の道を選択する三好豊治さん(46歳)夫妻。他人の臓器をもらうことに、やはり葛藤はあった。「示された道で、精一杯がんばりたい…」。アメリカ行きの飛行機に乗り込む時、三好さんはカメラに向かって静かに語った。一ケ月後、三好さんの手術は成功。帰国後は、リハビリに励んでいる。
 もう一方は、4歳の女児・宮久保阿未ちゃんとそのご両親。三好さんと同じ、拡張型心筋症に苦しんでおり、心臓にはペースメーカーが埋め込まれている。刻一刻と小さな体を蝕む病魔。不安と希望を胸にやはり家族はアメリカへ向かった。そして、ドナーは現れた。幼い命を救ったのは、幼いアメリカの少女だった。

 病院近くで療養する阿未ちゃんの家族と会うため、小野記者はコロラド州デンバーへと飛んだ。そして、そこで彼女が見たものは、移植先進国アメリカの素顔だった。彼女は、優れた移植技術を持ちながら、なかなか定着しない日本の移植医療の未来をあらためて考える。
 最先端の移植技術、精神的なケアまで行うスタッフ、移植に関する理解を深めるため活動する非営利団体“Donor Alliance”の存在、そして何よりも移植に対する問題意識…。小野記者は日本との差を目の当たりにすることになる。阿未ちゃんの担当医・キャンベル氏は「日本でも子供が臓器提供が可能になれば、阿未ちゃんのようにわざわざ遠い外国で手術を受ける必要性はなくなります。子供達はもっと安心できるし、ご両親の負担も軽減される」と術後語っている。また、アメリカの移植コーディネーターは「アメリカでも思想上の理由で臓器提供を拒否する人は多い。臓器を提供するのも、臓器を提供しないのも、それは、個人の権利であり、そのいずれも尊重されなければならない」とも言っている。
 現在日本では、子供でも臓器提供できるよう、また、本人の意思にかかわらず、家族の同意だけで臓器提供ができるよう、法律を欧米型に改正することが検討されている。しかし、欧米型の法律を取り入れただけで、本当にドナーの数は増えるのか。
 小野記者は番組の最後で「一人でも多くの尊い命が救われる未来のために、“示された道”を改めて見つめ直す時期にきている」と締めくくった。


<番組タイトル> 第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『いのちといのち 〜臓器移植と「示された道」〜』
<放送日時> 11月15日(水) 深夜26:25〜27:20
<スタッフ> ナレーター : 小沢良太
プロデューサー : 鍋島康夫
取 材 担 当 : 小野典子
ディレクター : 明神康喜
カ メ ラ : 中屋慎二  ほか
<取材協力> 岡山大学医学部附属病院
ロッキー時報
The Children's Hospital
<映像協力> フジテレビ・関西テレビ
<制 作> 高知さんさんテレビ

2000年10月19日発行「パブペパNo.00-345」 フジテレビ広報部