FNSドキュメンタリー大賞
「子供たちの詩からは、彼らの叫びやつぶやきが聞こえてくる……」
「青い窓」と名付けられたショーウインドウに飾られた子供たちの詩と「青い窓」を支え続ける1人の全盲の詩人の活動を通して時代と社会の変化を描く渾身のドキュメンタリー!

第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『お母さんはテレビゲームの主人公 〜青い窓からみた世界〜』 (制作 福島テレビ)

<11月1日(水)深夜26:25〜27:20放送>

 福島県郡山市。JR郡山駅前通りに面したお菓子屋さんに、ちょっと風変わりなショーウインドウがある。ウインドウの名前は「青い窓」。毎月1つ、子供たちの詩が飾られている。澄みきった青空に、子供たちの無限の可能性を開きたいという願いを込めて名づけられた。
 「青い窓」が開かれたのは、今から42年前の昭和33年。もはや、戦後ではないといわれたこの時代。街は都市化が進み、子供たちの思い出の場所である路地裏はどんどん消えていった。このままでは、子供の頃を振り返って共通の話をできる場所がなくなってしまう…。そんな思いが「青い窓」の誕生につながっていったのだという。
 そして、この「青い窓」が設置されて以来、ずっと子供たちの詩を見つめ続けてきたのが、郡山市に住む詩人の佐藤浩さん(78)だ。佐藤さんは旧制中学3年の時に、鉄棒の事故が原因で視力を失った。だから、子供たちから届いた詩はアシスタントの女性にひとつひとつ読んでもらい、耳で確かめるのだ。「飾りのない子供たちの言葉にこそ、真実の力がある」と佐藤さんは話す。
 全国各地の子供たちから寄せられた詩は、これまでに30万以上。子供たちの詩は毎日詩集にまとめられ、その中で印象に残った詩が「青い窓」に飾られるのだ。
 「青い窓」からは、子供たちの叫びやつぶやきが聞こえてくる。中には大人に面と向かっては言えない本音を詩に託した子供もいる。そして、時代と社会の変化を見つめる子供たちの鋭い視線もある。

 今から19年前の昭和56年にこんな詩が届いた。

「とうめい人間」
  このごろお父さんは とうめい人間
  ぜんぜん見えない
  会社で
  とうめい人間目薬をさす
  そうすると体が消えて見えなくなる
  だいたい10時間ぐらいもつ
  はやく目薬のききめがきれてほしい
  お父さんの姿が見たい


 これは、福島県いわき市に住んでいた福原武彦さん(31)が、小学6年の時に書いた作品だ。世のお父さんたちが会社人間になってしまい、家庭の中でその姿が見えにくくなった時代でもある。この詩を書いた福原さんは、今何をしているのだろうか、そして子供の頃の思いをどうとらえているのかを聞こうと思い、訪ねてみた。
 福原さんは現在親子4人で東京に暮らしていた。仕事はコンビニの店長。勤務は不規則で、2人の子供と触れ合う時間もほとんどないのが現状だ。子供の頃、“こんな大人にはなりたくない”と胸に刻んだはずだったのに、気づいてみれば、父親と同じように仕事に追われる日々を過ごしていた。いつしか忘れてしまった子供の頃の思い…。そんなある日、長女の弘菜ちゃんがお父さんをテーマに作文を書いた。そこには、福原さんが思いもよらなかった言葉がつづられていた…。

 番組には、子供の頃「青い窓」に詩を寄せた大人たちが、次々に登場。「勉強のない自由な星に住みたい」と訴えていた子供が、今では皮肉にも高校の教師になって、生徒に勉強を強制する毎日。また、母親が働きに出るようになって「お母さんが遠ざかってゆく」と嘆いていた子供は、これまた、お母さんと同じ美容師の道を歩んでいた。何と不思議な世の中なんだろう…。

 番組を取材した仲川史也ディレクター(32)は、「詩を読んだ時、この子供たちが大人になった時、改めて自分の書いた詩と直面し、当時の子供の頃の思いをどうとらえているのか、ということにとても興味が出てきました。もちろん今の時代を伝えるのに、今の子供たちの詩を紹介するのが1つの方法。それともう1つ、様々な思いを詩に託した子供が、大人になった時、何を思うのかで、今の時代の社会像・時代観が描けるのではないかと考え取材を始めました」と話す。

 実は、この番組のタイトルの『お母さんはテレビゲームの主人公』は、2年前に小学3年生の女の子が書いた詩の一節をとったものだ。

 「お母さん」
 お母さんはテレビゲームの主人公だ
 ふとんたたみのステージ1
 お洗濯のステージ2
 おかたづけのステージ3
 茶わん洗いのステージ4
 お料理のステージ5
 でも、つぎの日にはリセットが押してある
 毎日 毎日 大変だね

 ありがとう


  佐藤さんは、子供たちの詩を前に「技巧でも何でもない。自然に思ったことを表現するその力が心に響く」と話す。

 仲川ディレクターは「子供たちの詩に心を揺さぶられるのは、大人の常識がそこにはないからかも知れません。でもそこには、子供の頃、感じたことと重なりあっているところがたくさんあります。時代を生きる子供たちは、その時代時代の言葉を巧みに使って、自分の思いを詩に託しているんです。いつの時代も変わらない子供たちの、家族や社会を見つめる視線をタイトルに表しました。息詰まったように見える社会。そんな時、子供の頃の思いをちょっと振り返ってみる…。この番組がその1つのきっかけになればと思います」と番組の見どころについて話している。

 11月1日(水)深夜26:25〜27:20放送の第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『お母さんはテレビゲームの主人公 〜青い窓からみた世界〜』(制作 福島テレビ)を宜しくお願いします。


<番組タイトル> 第9回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『お母さんはテレビゲームの主人公 〜青い窓からみた世界〜』
<放送日時> 11月1日(水)深夜26:25〜27:20
<スタッフ> プロデューサー : 田村泰生(福島テレビ)
ディレクター : 仲川史也(福島テレビ)
撮影・編集 : 長瀬勝喜(福島テレビ)
ナレーション : 岩田雅人
<制 作> 福島テレビ

2000年10月17日発行「パブペパNo.00-341」 フジテレビ広報部