FNSドキュメンタリー大賞
中国残留婦人三世の女性を追いながら、満州に関わる悲劇、親切な中国人民に救われた中国残留婦人の波乱万丈の人生を検証。
日本人と中国人の両方の血を受け継ぐ中国残留婦人の孫娘でなければ描けない日本と中国の激動の歴史を紹介し、これからの日中関係を考える渾身のドキュメンタリー!

第12回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『大地に生きた愛と運命 〜中国残留婦人三世の家族史』 (制作 テレビ宮崎)

<5月20日(火)深夜26:28〜27:23>
 日中戦争の歴史、敗戦、中国の大地に捨てられた残留孤児、残留婦人の存在が、歳月とともに、忘れ去られようとしています。そんな中、中国残留婦人三世の女性が、大学卒業を前に、時代に翻弄されながらも生き抜いてきた祖母の歴史と数奇な運命の家族史を卒論で発表しました。
 5月20日(火)深夜26:28〜27:23放送の第12回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『大地に生きた愛と運命 〜中国残留婦人三世の家族史〜』(制作 テレビ宮崎)は、祖母とたどった60年前の歴史の旅を通し、日本人と中国人の両方の血を受け継ぐ中国残留婦人三世でなければ描けないドキュメンタリーです。

 原田 静(はらだ しずか)さん(23)の中国名は、連静(LianJing)。中国残留婦人を祖母に持ち、日本に来たのは1990年5月、13年前のことで、11歳になる直前のことでした。1979年、ロシア国境に近い片田舎の農村(黒龍江省集賢県宏徳村)に生まれた原田 静さんは、日本人である祖母のルーツを知らずに、幼年期を過ごしていました。しかし、1982年に祖母は帰国。その後、祖母の後を追って、家族は次々に宮崎に移住することになり、8年後、原田 静さんも生まれ故郷中国を離れ、宮崎に住むことになります。日本語も日本の習慣も知らず、突然に始まった宮崎での生活。事情も考えず、戸惑いながらも、歳月は流れ、宮崎公立大学に進学。卒業を前に、時代に翻弄されながらも生き抜いてきた祖母の歴史と今の自分がある数奇な運命の家族史を卒業論文にまとめ発表しました。

 静さんの祖母(父方、宮崎市出身)・原田ミヤさんは、現在80歳。満蒙開拓団の花嫁として、中国東北地方(旧満州)の黒龍江省方正県の大羅勒密という松花江のほとりにあった開拓村に入植。そして終戦。逃避行の途中、生死をさまよいますが、親切な中国人に救われ、やがて結婚。静さんの父親他3人の子宝に恵まれました。
 「日本人の祖母、中国人の祖父、この2人の運命の出会いがなかったら、自分の生はない。祖母も祖父も父も母も大変な時代を生き抜いてきたと思う」と語る静さんを追い、満州に関わる悲劇、親切な中国人民に救われた中国残留婦人の波乱万丈の人生を検証しながら、国家レベルの不幸な衝突があっても、生きた人間同士の出会いがあれば新しい生命が生まれること、家族の存在自体も実は歴史の一部であることなど、日本人と中国人の両方の血を受け継ぐ中国残留婦人の孫娘でなければ描けない日本と中国の激動の歴史を紹介し、これからの日中関係を考えるドキュメンタリーです。

 中国と日本が戦争をした歴史、そして敗戦とともに中国の大地に捨てられた中国残留孤児、中国残留婦人の存在が、60年という歳月とともに、忘れ去られようとしています。しかし、その陰で、その二世三世が苦悩しながらも生きています。念願の日本帰国を果たしても、日本語、日本の習慣に苦しみ、なじめない人がたくさんいるのも現実です。
 言葉には表現できない苦労を経て、今の生活がある原田 静さんは、日本帰国者家族の成功例ですが、やはり、問題を抱えています。家族で日本移住を決めて13年、2人の子供を立派に育て上げ、大学まで出した二世であるお父さんには、番組では触れていませんが、かなりの無理と苦労を重ねています。80歳になる中国残留婦人のお母さんの世話、中国人である妻は中国の故郷を恋しがる、子供は、もう、中国には引き返せないほど、日本に馴染んでしまったことなど、親と妻と子供の間で、苦労は絶えないはずです。しかし、その苦悩を表に出すことなく、明るく家族をまとめています。

 そしてそこには、家庭内暴力、家庭崩壊など、現代日本の家庭が失いかけている「家族愛」がありました。今回の取材で行った中国・東北部の田舎でも、家族と地域の深い付き合い、絆があり、「日本にも30、40年前まではあったよなあ」と、懐かしく感じることができました。
 日本人の家族愛はどこに行ってしまったのでしょうか。今回の主役、静さんが、これから、どんな家庭を築き、日本と中国、どちらで生活していくのか、新たな家族史が非常に楽しみな女性だといえます。


<番組タイトル> 第12回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『大地に生きた愛と運命 〜中国残留婦人三世の家族史〜』
<放送日時> 5月20日(火)深夜26:28〜27:23
<スタッフ> 企 画 : 吉田啓之介
プロデューサー : 菅原正之
ディレクター・構成 : 坂元秀光
撮 影 ・ 編 集 : 立光正明
ナレーション : 岡本嘉子
<取材地> 宮崎市、高鍋町、東京、埼玉
中国黒龍江省(哈爾濱市、方正県日本人墓地、集賢県宏徳村、満蒙開拓団大羅密入植地)
<制 作> テレビ宮崎

2003年6月23日発行「パブペパNo.03-168」 フジテレビ広報部