2016.11.16

第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『縫う人~着物から洋服へ~』
(制作:テレビ大分)

「ごめんね」思い出振り袖の新生魔術師

<11月26日(土)27時20分~28時15分>


 大分県大分市で45年ほど洋裁を続ける都築映子さんが主人公。都築さんが洋服の材料にするのは、もう誰も袖を通すことがなくなった「着物」。タンスの中に眠ったままになっている着物や、古着屋で売られていた着物を洋服に生まれ変わらせる。都築さんは着物を作った人、そして大切にしていた人の思いを縫いつなぐ人。今の時代に合わせた「仕立て直し」を行っている。その活動の様子を約1年追ったドキュメント。

 主人公は洋裁師の都築映子さん。都築さんは大分県国東市安岐町に生まれ、高校卒業後に服飾の専門学校へ。そこから洋裁師として働いていた。結婚後は別府市や大分市内で活動していたが、今から20年ほど前に友人から1枚の着物を預かったことがきっかけとなり、着物を洋服へと生まれ変わらせることが主になった。
 現在は都築さんのうわさを聞きつけた大分県外の人からも依頼を受けることが増えている。また洋裁教室も開いていて、多くの生徒に洋裁を教えている。着物にハサミを入れることに対して最初は抵抗があったという都築さん。切ってしまえば「2度と元には戻らない」というためらいと、着物を作った人、大切にしていた人のことを思ってのことだ。しかし徐々に「着ない方がもったいない」と思うようになり、今では何度も着てほしいと願いながら、多くの人に気に入ってもらえる服を作り続けている。都築さんの目標は「死ぬまでずっと縫い続けること」。今も日々たくさんの着物を生まれ変わらせている都築さんのその活動に感銘を受け、取材をお願いすることになった。
 番組の中では1枚の古い振り袖をシャツに変えるシーンを撮影。その振り袖は都築さんが古着屋で見つけてきたものだったが、今でも十分に着ることができる美しい振り袖であった。その糸をほどき、1枚の布に戻し、いざハサミを入れる瞬間を、撮影中はドキドキする気持ちでそばでみていた。高価な着物にハサミを入れるなんて「もったいない」と思う人がほとんどだと思う。しかし出来上がっていく洋服を見て「着なくてそのままにしているよりも着られる形に変える」ということが、着物にとってもいいことなのではないかと感じるようになった。

 都築さん自身も「ごめんね」と言ってハサミを入れていたが、着物に対して申し訳ないという思いで洋服を作り続けているからこそ、ステキな洋服に仕上がっていくのだと思っている。後に映像を通して裁断のシーンを見てみると、その瞬間の布を断ち切るハサミの音が、不思議と何とも言えない心地いいものであった。取材を通して、もったいないと思うよりも、どんな洋服に仕上がっていくのだろうかという期待に変わっていった。
 さらに都築さんに縫ってほしいと着物を持ち込む人の多さにも驚いた。着物を預かるとき、都築さんはそれぞれにどんな由来の着物であったのかを聞く。それぞれ着物にはいろんなエピソードがあるが、着る機会がなくタンスにしまいっぱなしになっている着物のことを、心のどこかで気にかけている人が今の時代には本当に多くいるのだとあらためて感じた。
 また都築さんは人から譲ってもらったり、古着屋で購入したりと手元に多くの着物を保管しているが、その中から作る洋服は作品展を開いて展示販売もしている。珍しい漆の型染めの羽織をシャツにしたものや、打ち掛けから作ったウェディングドレスなど、着物の面影を残しながらも見事に変身した作品の数々を紹介している。

 番組では、美しい着物の柄の映像や、着物にハサミを入れるときの音などにこだわり制作しているので、その点を特に楽しんでもらいたいと思う。そして都築さんの洋服作りのシーンは、子供の頃の記憶に残る自分の母親や祖母の姿と重なるような、どこか懐かしい雰囲気を感じてもらえるのではないかと思っている。日本の伝統衣装である「着物」。ゆっくりと流れる都築さんの日常や、着物から洋服へと変わりゆく様子を通して、着物の良さもあらためて感じていただければという思いから今回の番組を制作した。

ディレクター・野島亜樹(テレビ大分報道部)コメント

「自分自身も手芸が好きで、いつか手芸についてのドキュメンタリーを制作したいと考えていました。その時に出会ったのが都築さんで、その作品を見たときに、出来栄えのすばらしさに感動し、ぜひ都築さんの活動を追いたいとお願いしてこの番組ができました。都築さんに洋服作りを依頼する人たちも取材しましたが、実際に撮影を進めていく中で、着ていない着物をどうしようかと気にしている人たちが本当に多くいるなと感じました。番組の中では都築さんの裁縫シーンがたくさん出てきますが、その姿が子供の頃の記憶に残る自分の母親の姿と重なるような、どこか懐かしい雰囲気を感じていただけるのではないかと思っています。都築さんのお人柄の良さもそうですが、全体的にゆっくりとした時間が流れている番組に仕上がりました。それとカメラマンが一眼レフカメラを使って撮影してくれています。まるで映画のような美しい映像もご堪能いただければと思います」


番組概要

◆番組タイトル

第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『縫う人~着物から洋服へ~』
(制作:テレビ大分)

◆放送日時

11月26日(土)27時20分~28時15分

◆スタッフ

プロデューサー
佐藤幸治
ディレクター
野島亜樹
撮影/編集
大下太

2016年11月15日発行「パブペパNo.16-456」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。