2016.9.23

第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『戦地に渡った教え子たち
~軍事郵便1000通が伝える戦争・満蒙開拓~』

(制作:長野放送)

軍事郵便がひもとく教え子との絆

<9月24日(土)27時40分~28時35分>


 飯田市川路で見つかった1014通の軍事郵便。教員を務め、後に旧川路村の村長になった故・今村正業さんが、戦地に渡った教え子の兵士や満蒙開拓団員から受け取っていたものだ。絆が簡単に引き裂かれたあの時代。軍事郵便や埋もれていた文献を読み解きながら、小さな村の普通の人々がどう生きたかに迫る。

 大量の軍事郵便は、親族から寄附された住民組織を通じて、飯田市歴史研究所に持ち込まれ、解読・研究が進められている。戦後70年の節目、軍事郵便を読み解き、あの時代を生きた若者、教師の姿を浮かび上がらせようと制作した。

 今村さんは戦地の教え子の身を案じ、相当の手紙を送り続けていた。その手紙によって郷里と戦地を結ぶ一種の情報網ができていたことがわかった。返信の軍事郵便は検閲を受けていたものの、若者たちの心情や常軌を逸した戦地の様子がつづられていた。自分たちが置かれている状況をわかってほしいという思いが伝わってくる。手紙を書いた元兵士の男性が取材に応じた。彼は農民が働く中国の田園風景から故郷を思い出す内容の手紙を書いていた。「同じ人間同士、何も戦わなくてもいいと思った」と語った。やがて戦況の悪化と共に手紙の内容は「戦死」を強く意識したものになっていく。川路では従軍した5人に一人が戦死した。

 今村さんは多くの満蒙開拓団員、青少年義勇軍も送り出していた。旧川路村は「分村」を決定し、およそ300人が満州へ。大陸に村民を送り出すことが村の生きる道だと信じていた今村さんのメモが見つかっている。しかし、ソ連侵攻後の混乱の中、120人余りが大陸で命を落とした。取材中、満州の「軍歌」を急に歌い出した元団員の男性。最後に「満州開拓なんて、しょうもない」とつぶやいた。

 多くの教え子、仲間を失った今村さん。あれだけ筆まめだったのに、戦時中に触れた文章はわずかしか残していない。満蒙開拓で自身がしてきたことへの総括も見当たらない。今村さんは戦後、村長を務めるなど地域のリーダーとなっていく。それが自分の歩むべき戦後だと思っていたようで、地域住民も過去を責めることなく、そういう今村さんを受け入れていた。その一方で、今村さんなりに過去の負い目と向き合いながら、戦後を生きたことが埋もれていた文献から判明した。今村家は真っ先に五男を青少年義勇軍の兵士として大陸に送り出していた。今村さんが親代わりとなって育てた、その末弟は後に軍人となりニューギニアで戦死。今村さんは「自分の身代わりとなってくれた」と思いを抱き続け、供養の写真集などを自費出版していた。

 軍事郵便の発見を契機に、飯田市川路ではあの時代を振り返る機運が高まり、勉強会が開かれている。

ディレクター・嶌田哲也(長野放送 報道部)コメント

「軍事郵便を受け取っていた今村さんは既に30年前に亡くなっており、彼を詳しく語ってくれる家族・親族も今はいません。さらに手紙の送り主も取材できたのはわずか二人。あの時代を知る人から直接、話を聞くのはますます困難になっていると感じました。同時に軍事郵便や戦後、私費出版された書物の重要さに気付かされました。体験者の証言が得られなくなったとしても、埋もれた資料の中から、掘り起し、光を当てるべきものがあると思っています」


番組概要

◆番組タイトル

第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『戦地に渡った教え子たち
~軍事郵便1000通が伝える戦争・満蒙開拓~』
(制作:長野放送)

◆放送日時

9月24日(土)27時40分~28時35分

◆スタッフ

プロデューサー
太田耕司
ディレクター
嶌田哲也
ナレーター
大谷香奈絵

2016年9月21日発行「パブペパNo.16-380」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。