2016.7.7

第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『だから、アイドル。TOKYO 不思議の街の住人たち』
(制作:フジテレビ)

なぜ「地下アイドル」を名乗るのか?
“不思議の街・秋葉原”で偶像を生きる人々を追った。

<7月12日(火)25時35分~26時30分>


 東京・秋葉原―。
 世界に知られるサブカルチャーの発信地でもあるこの街は、人々の幻想と現実が入り混じる不思議な街だ。
 急増する外国人観光客や中国人の買い物客で賑わう大通りを1本それると、雑居ビルの中には、小さなライブスペースが点在する。
 毎夜、そのステージに立ち、歌い踊るのは「地下アイドル」と呼ばれる人々。
 しかし、その姿は、我々が思い描く「アイドル」とは異なる。彼女たちは大衆に求められ、選び抜かれた、輝けるアイドルではない。自分がやりたいから、“アイドルをやっている”のだ。
 そんな彼女たちを秋葉原の街や地下アイドルファンは、決して否定することなく、温かく受け入れてくれる。それはまるで、現実なのに幻想のような世界…。
 なぜ彼女たちは、ここにたどり着き、歌い、踊り続けるのか?なぜ「アイドル」を名乗るのか?“不思議の街”で偶像を生きる人々を追った。

現在、「地下アイドル」が活動するライブスペースは、都内各地に点在し、秋葉原だけで少なくとも25カ所ある。
 そのステージに立つのに、オーディションなどは存在せず、見た目も、年齢も、国籍も問われることはない。どんなに歌やダンスが下手でも、ブーイングどころか、客は手拍子と掛け声でライブを盛り上げてくれる。ライブのギャラがないのは当たり前、それどころか、出演料を払ってステージに立つこともある。

 今や、その気になりさえすれば、誰だって、今日から「地下アイドル」になれる。
「アイドルになる」のではなく、「アイドルをやる」のだ。
 そんな地下アイドルの世界は、いつしか、現実社会の中で生きづらさを感じ、居場所を失った人々の“受け皿”となっていった。
「地下アイドル」を名乗る彼女たちは、誰かに求められた“偶像”ではない。彼女たちがステージで演じているのは、“好きになれる自分”、こうでありたい“自身の偶像”なのだ…。

ネットで“大炎上”地下アイドル歴6年 エリザベス(33)
 2010年から「地下アイドル」を始めたエリザベス。2年前からは、二人組のユニットとして活動を続けている。歌は下手、ダンスもヘンテコ、アイドルというには若くない…それでも、地下アイドルの世界は彼女を受け入れてくれた。
 2015年10月、たまたま受けた情報番組の街頭インタビュー。「地下アイドル」という肩書きの二人の姿が放送された瞬間、ネットが“大炎上”。無名なはずの二人の顔写真がネット上にあふれていた…ネットの住人たちは、彼女たちが「アイドル」を名乗ることを許さなかった。
 優しく受け入れられていた“地下の世界”から、ほんの少し“地上の世界”に顔を見せただけで、顔の見えない多くの人に否定されたエリザベス。
 相方は、この“炎上事件”の精神的なショックで声が出なくなりステージを去った。ユニットも解散。しかし、エリザベスはそれでもステージに立つことを決意した。
 地下どころか「地底アイドル」と揶揄されながら、それでも、歌い、踊り続けるエリザベス。彼女は「地下アイドル」にこだわる理由、それは彼女が歩んできたつらい過去にあった…。

借金450万円“鳥のエサ”で食いつなぐ 極貧「地下アイドル」きらら(38)
 体は男性で、心は女性だという、きららは、38歳で「地下アイドル」を始めた。
 大学卒業後、職を転々とし、抱えた借金は450万円。23区内では格安の家賃2万9000円の風呂なしアパートに住み、主食は、家畜の飼料に用いられる“くず米”。目を疑いたくなるような“極貧”生活を続けていた。
 ステージでは、歌と自作の詩を披露する「詩人アイドル」のきらら。なぜか、華やかに着飾るどころか、ボロボロに傷ついたケガ人の姿でステージに立つ。
 ライブで「大ケガをしたサンタクロース」を演じた2週間後、解体工事の現場で転落。救急搬送されたきららは、あの日演じたサンタクロースと全く同じ格好で、ベッドに横たわっていた。
 この大ケガで肉体労働の現場で思うように働くことができず、収入は減り、職を失うきらら…どん底だった生活は、さらに深い底をのぞかせるようになる。
 それでも「地下アイドル」だけは、辞めたくない。きららが「地下アイドル」にこだわる理由、それは「ありのままの自分」を生きてくることができなかった、きららの過去にあった…。

ディレクター・福田真奈(フジテレビ情報制作センター)コメント

「“地下”とは言え“アイドル”と名乗るからにはそれなりに…そう思いこんでいた私の想像は取材を始めてすぐに吹っ飛びました。取材で次々と出会う“地下アイドル”は、とにかく個性豊かで不思議な人たちばかり。歌もダンスもダメ、年齢も若くない、一番大事だと思っていた見た目も正直言って…と感じてしまう人ばかり。それでも、“私はアイドル”と名乗るのはなぜなのか?
 取材で見えてきたのは、生きてきた中で、自分の居場所がなかったり、他人に認められなかったり、自分らしく生きられる場所を見つけられなかった人々の姿…そんな彼女たちが苦しんだ末に行き着いたのが“地下アイドル”。彼女たちはステージの上で“愛すべき自分”を具現化していたのです。
 他人の目を気にせず、ステージで歌い、踊る彼女たちを見ると、思うことがあります。
 “私は自分らしく生きている”、“今の自分を好きと言えるか”…。
 番組をご覧いただいた皆さんにも、一見奇妙な彼女たちの姿を見て、心の中に問いかけていただければと思います」


番組概要

◆番組タイトル

第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『だから、アイドル。
TOKYO 不思議の街の住人たち』
(制作:フジテレビ)

◆放送日時

7月12日(火)25時35分~26時30分

◆スタッフ

プロデューサー
西村陽次郎、濱潤
構成
石井成和
編集
目見田健
ディレクター
福田真奈
ナレーション
石井正則

2016年7月7日発行「パブペパNo.16-270」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。