2015.11.11

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『リオ、そして東京へ
　～車輪のアスリート 廣道純～』
（制作：テレビ大分）

パラリンピックに4回連続出場し、日本初のプロ車いすアスリートとして活躍する廣道純選手。
16年間の長期取材で見えてきたものとは。

＜11月29日（日）26時5分～27時＞

　障がい者スポーツの最高峰・パラリンピックに4回連続出場し、過去2回メダルも獲得し、日本初のプロ車いすアスリートとして活躍する廣道純選手。高校生の時に事故で車いす生活となった彼は競技だけに専念するのではなく、障がい者スポーツの普及と発展にも多大な貢献を続けている。生来の前向きな性格で日本を代表するアスリートとなっていった“これまで”を振り返るとともに、守るべき家族と歩む“これから”を、16年間に渡る長期取材でひも解いていく。

　障がい者がスポーツをする。このことは2020年東京オリンピック・パラリンピックが決まった現在、一般の方にもかなり認知されてきたように思える。しかし、廣道純（ひろみち・じゅん）という男性に出会った2000年当時、それは全く一般的ではなかった。1980年から34年間、世界最大級の車いすマラソン大会を開催し続け、当時でも“障がい者スポーツの先進県”と言われていた大分県でさえ、この大会に関わる人以外、さらに言えば、開催される大分市を一歩出れば、この大会の存在さえ知らない大分県民も多かった。それまで、障がい者選手は“守ってあげるべき”存在と認識していたが、廣道氏は初対面から違っていた。段差や坂道で車いすを押してあげようとすると拒否された。一人の男性として、何よりスポーツ選手として自分を見てほしいと。

　彼の口から出る“世界で勝つために”や“障がい者になったら楽しい事が待っている”などという言葉が新鮮だった。そして彼は有言実行だった。次々と日本記録を塗り替え、世界を転戦して海外のトップ選手と互角以上に渡り合い、結果を出し続けた廣道氏。彼を追い続けてきた16年間、それは常に新しい挑戦をし続け、結果を出してきた彼に魅了され続けている16年でもある。

　我が強く、自分の考えを曲げず、いいと思ったら協会批判も平気で行い、ときに嫌われることもある。しかし、廣道氏の周りには常に人の輪が出来る。人をひき付ける何かがある。この番組は障がいがある人だけでなく健常者にも是非見てもらいたい。障がいがあるとはどういう事なのか？それは不幸な事なのか？廣道氏の半生にふれることで考える材料にしてもらいたい。

　見どころの一つは「パラリンピック」。鬼気迫る表情で競技に打ち込む障がい者の姿。そして純粋なスポーツイベントとして大いに盛り上がりを見せている海外での様子。普段あまり放送される事のない、障がい者スポーツの最高峰と言われる舞台を見てほしい。

　もう一つの見どころは、廣道氏の生き様。若い頃は、ただレースに勝つために、世界で戦うために、ストイックに強さだけを求めていた廣道氏だったが、家族ができ、父親になる事でレースに対する考え方も変わっていく。日本を代表するトップアスリートであり、プロ選手として常に結果を求められる立場でもある彼は、走りで結果を残すことが“職業”である。その“職業”と“父親としての子育て”と、どちらを優先させるのか？人生において一度も悩んだ事がないと豪語する廣道氏が初めてぶつかった壁。彼はどういう決断を下したのか？その決断には賛否両論あるだろう。何にでも挑戦し、困難を困難とも思わずポジティブに克服してきた廣道純という男性の半生をご覧いただきたい。

プロデューサー・佐藤幸治、ディレクター・高瀬建二朗（テレビ大分報道制作局制作部）コメント

「障がい者スポーツのトップアスリート廣道純さんの口癖は“障がい者になったら楽しい事が待っている”。障がいがある本人から面と向かって言われても、素直に“ハイ、そうですね”とは返答できませんでした。人はある日突然、障がい者になりうる。廣道さんの“その時”は高校1年。まさに、これから青春の輝かしい人生が始まる…そんな時だったのです。その時、冷静にその事実を受け入れる事が出来る人は多くはないと思います。もちろん私たちにも、その自信はありません。でも、彼には出来た。なぜ、そう思えるのか？本当に実践出来ている人に密着してみたい。そういう思いから、彼が大分に移住してきてからの16年間、つきまとってきました。超ポジティブな思考と行動力で常に新しい道を切りひらいてきた廣道さんの“これまで”と“これから”を紹介する事で、前向きに生きる事の素晴らしさ、そして、その考え方自体は誰にでも出来る！という事を感じていただきたいと思います」