2015.10.20

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『日本の片隅で平和を叫ぶ
~山陰空襲を知っていますか?~』

(制作:山陰中央テレビ)

終戦直前の昭和20年7月末に発生した大山口列車空襲。
「大山口列車空襲被災者の会」のメンバーの証言などから、
「戦争被害の悲惨さ」を掘り起こし、その記憶を語り継ぐことの大切さを訴える。

<10月25日(日)27時5分~28時>


 数多くの犠牲者を出した太平洋戦争が終結して今年で70年。

「戦争の記憶」は学校で歴史の授業で習ったり、地域の社会学習で戦争体験者からの言葉で学んだりなどして受け継がれていくケースが多い。ただその多くが、日本軍が出撃した戦地、広島、長崎への原子爆弾投下、東京大空襲など島根、鳥取両県以外の場所での出来事の体験談である。山陰両県はそれらと比較して、大きな被害を出すような戦禍から逃れたが、「戦争の爪痕」は厳然として残されている。

 戦後70年の今年、「戦争の爪痕」について、山陰に住む住民の多くが知らないという事実を知った。地域に残る「戦争の記憶」が十分引き継がれているとは言い難い状況だ。多くの軍事拠点があった太平洋側ではなく、大都市も存在しなかった「日本の片隅」とも言える日本海側の山陰地方がなぜ標的になったのか?その記憶はどのように語り継がれているのか?その疑問を探るとことから取材は始まった。

 取材の中心に据えたのは、終戦直前の昭和20年7月28日に鳥取県の山陰本線・大山口駅付近で起きた列車空襲。この空襲では民間人などが乗った列車が米軍戦闘機に襲われ40人を超える犠牲者を出している。また、この列車空襲に限らず、山陰地方では多くの犠牲者を出した松江市玉湯町の列車空襲なども起きている。終戦直前は、日本の制空権がアメリカに奪われ、山陰地方にも米軍機が頻繁に上空を飛行していた。決して「戦争被害とは無縁の地」とは言えない大きな被害を出した戦争被害にも関わらず、県民の多くはこの歴史的事実を知らない。また、鳥取、島根両県の教育現場でも授業で取り上げているところは少なく、体験者の高齢化も進んで、「記憶の風化」が懸念されている。

 番組では平成3年に作られた大山口列車空襲被災者の会の活動にスポットをあてる。体験者は列車空襲を「地獄絵図」と表現し、その悲惨さを生の声で語る活動を続けてきた。「列車空襲の記憶を後世に伝えたい」、「2度と戦争は起こしてはならない」という強い思いは決して衰えず、次の世代を担う子どもたちに戦争の記憶を伝えている。

 しかし時の流れには逆らえない。高齢化によって体調不良を訴えたり、亡くなってしまったメンバーもいる。次の世代に引き継ぐべき記憶の風化が懸念されている。こうした中、今年戦後生まれの会長が就任した。新会長は自分が生まれる前に、大山口列車空襲で親族を亡くしている。実際に列車空襲を体験していないが、「戦争の悲惨さ」を伝えなければならないという従来メンバーの思いを引き継いでいる。体調不良で活動休止を余儀なくされたメンバーも、被災者の会の活動を片時も忘れないし、子どもたちへの記憶の継承を実感している。

 他にも、米軍機による日本各地への空襲を撮影した映像も入手した。この中に大山口列車空襲の映像は含まれていないが、当時、山陰にあった軍事拠点への空襲の様子を写した映像は存在する。この映像を基に検証を進めていくと、大山口列車空襲がなぜ起きたのか?その経緯が浮かび上がってくる。被災者の証言とともに山陰の列車空襲はなぜ起きたのかについても検証する。

 山陰地方で起きた列車空襲という戦争被害。戦後70年の今年、あらためてその記憶を掘り起こし、「日本の片隅で平和を叫ぶ」ことで、次の世代へのメッセージとしたい。

ディレクター・藤谷裕介(山陰中央テレビ報道部)コメント

「私は山陰の出身ですが、テレビ局で働く前までは大山口列車空襲はもちろん、山陰で空襲があった事すら知りませんでした。自分の祖父も戦争体験をもほとんど話さないまま10年前にこの世を去ってしまいました。今年は戦後70年。戦争体験者が高齢化する中、“戦争の語り部”の存在が改めてクローズアップされており、“貴重な証言を記録として残さなければならない”という思いから取材を始めました。取材を進めていくうちに、地元で起きた戦争被害の記憶があまり受け継がれていないことにがく然としました。番組では大山口列車空襲を語り継ぐ活動を続けている被災者の会にスポットをあてます。
山陰への空襲とはどのようなものだったのか?戦後世代の我々は、この事実をどのように受けとめ、次の世代に伝えていけばよいのか?地元で起きた空襲を体験した人たちの証言を通して戦争の記憶を語り継ぐことの大切さを訴えたいと思います」


番組概要

◆番組タイトル

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『日本の片隅で平和を叫ぶ
~山陰空襲を知っていますか?~』
(制作:山陰中央テレビ)

◆放送日時

10月25日(日)27時5分~28時

◆スタッフ

プロデューサー
勝部正隆
ディレクター・構成
藤谷裕介
撮影
加藤俊之(フリー)
編集
野田貴 (フリー)
音効
金子寛史(フローレス)
MA
奥田幸裕(レスポンス)
制作
山陰中央テレビ
ナレーション
斉藤茂一(シグマセブン)

2015年10月19日発行「パブペパNo.15-386」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。