2015.10.2

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ずっとあなたたちと共に~原発被災地の選択~』
(制作:福島テレビ)

福島第一原発の事故で避難を余儀なくされた上、
今また新たな難題に直面している地権者の今を追う。

<10月5日(月)26時55分~27時50分>


 福島第一原発の事故から4年余り、廃炉作業が進む一方で原発周辺では新たな動きが進んでいる。除染作業で出た廃棄物を30年間保管する「中間貯蔵施設」の建設だ。福島県内では行き場のない除染廃棄物が各地に仮置きされ、復興の妨げになっている。これらの廃棄物を福島第一原発周辺の土地に集め30年間保管する中間貯蔵施設。国は福島県大熊町と双葉町の地権者2400人が所有する土地を買い取るなどして施設を建設する計画だ。しかし、水面下で進められている用地交渉の内容や進捗状況は、まったくと言っていいほど伝わってこない。
 地権者は今何を考え、突きつけられた難題にどう対応しようとしているのか。
 地権者の一人、木村紀夫さん(49)は震災で父と妻、次女の3人を失った。次女の汐凪ちゃん(当時7歳)は今も行方が分からず、木村さんは自力で行方を捜し続けている。大熊町の自宅周辺は失った家族とつながることができる大切な場所で、国に売ることは到底考えられないと話す。

 一方、故郷の将来を子供たちに託す地権者もいる。大熊町の無形民俗文化財「熊川稚児鹿舞」の保存会の会長を務める宮本明さん(64)。伝統文化を絶やしたくないと地区の人たちと共に活動を続けている。宮本さんは、復興を進めるため所有する田んぼは、国に提供する考えでいる。しかし、子供たちが伝統を受け継ぎ、将来また、故郷で舞を披露してもらえればと夢をあきらめずにいる。
 二人が暮らしていた福島県大熊町は原発事故で1万1千人の全町民が避難し帰還のめどは全くたっていない。こうした中、中間貯蔵施設は地権者に新たな重い選択を突きつける形になっている。

 国は、搬入した廃棄物を30年後には福島県外に運びだし最終処分するとしている。しかし、本当に約束は守られるのか、このままなし崩し的に廃棄物が故郷に置かれたままになるではないか、多くの地権者が国の姿勢に疑問を抱き用地交渉は思うように進んでいない。先祖代々受け継いだ大切な土地を手放すのか?番組では、前例のない廃棄物輸送に苦悩する地権者たちの心の底を伝える。

ディレクター・古川峻(福島テレビ郡山報道部)コメント

「取材中、木村紀夫さんが怒りや悲しみをあらわにすることはほとんどありませんでした。しかし淡々と話す言葉の端々から、一向に変わらない現状に対する諦め、そして家族に対する深い愛情を感じることがありました。震災から4年経って本格的に動き出した中間貯蔵施設は、やり切れない思いと折り合いをつけながら必死に暮らしてきた避難者の心に、再び動揺を与えています。客観的に考えれば、中間貯蔵施設を大熊町に建設することは仕方のないことかもしれません。しかし粛々と進められる搬入作業の裏で、地権者の感情は真剣に顧みられていないのではと感じました。どうか思い出の地や家族と重ね合わせながら、答えのない問題を考えるきっかけとして頂きたいと思います」


番組概要

◆番組タイトル

第24回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ずっとあなたたちと共に
~原発被災地の選択~』
(制作:福島テレビ)

◆放送日時

10月5日(月)26時55分~27時50分

◆スタッフ

プロデューサー
遠藤衛(福島テレビ)
ディレクター
古川峻(福島テレビ)
撮影
猪狩敦(福島映像企画)
箭内憲司(福島映像企画)
編集
猪狩敦(福島映像企画)
構成
平和紘
音声
新國伸太郎(福島映像企画)
CG
高梨美香
制作
福島テレビ
ナレーション
豊嶋啓亮

2015年10月2日発行「パブペパNo.15-353」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。