2014.10.15

第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ARITAを紡ぐ男たち』
(制作:サガテレビ)

2016年に創業400年を迎える有田焼。しかし長引く窯業界の不況で産地は疲弊している。現状を打破しようと5つの窯元で作る「プロダクトARITA」が目指したのはヨーロッパ市場の開拓。そんな彼らにフランス人シェフから斬新なデザインの器のオーダーが届く。パリに持参する直前に不具合が見つかり、急きょ作り直し…。果たしてシェフを納得させることができるのか。さらにパリに渡った彼らを待っていたのは現地で活躍する日本人シェフからの意外な一言。有田焼の歴史を紡ぐ5人の奮闘を追った。

<12月19日(金)27時40分~28時35分>


 2016年の有田焼創業400年に向けて佐賀県を挙げて盛り上がりを見せ始めている。

 2013年10月に佐賀県は地元・有田町や関係団体などで実行委員会を組織し、海外での販路開拓や情報発信など様々な事業に着手した。一つは県とオランダ大使館が協定を結び、窯元・商社と海外のデザイナーがタッグを組み、新たな有田焼を開発した上でイタリア・ミラノでの展示会に出展すること。もう一つは世界的に有名な日本人デザイナーをプロデューサーに招いて、フランス・パリで年に2回開催されている国際見本市への出展すること。華々しい世界の大舞台に有田焼を売り込もうという計画だ。

 1616年、朝鮮半島出身の李参平が有田町の泉山で良質の陶石を発見、日本で初めて磁器を焼いたとされている。1650年代からはオランダの東インド会社によってヨーロッパの国々に輸出され、王侯貴族たちを熱狂させた。しかし今、有田焼は苦境に立たされている。売り上げはピーク時の8分の1。長引く窯業界の不況で産地は疲弊。毎年4月下旬から5月上旬にかけて開催されている有田陶器市には全国から100万人を超える焼き物ファンが訪れるものの、これ以外の日々はとても静かだ。

 こうした現状を打破するため窯元たちが動いた。

「世界のシェフに愛される器づくり」を目指し2009年に5つの窯元で結成したグループ「プロダクトARITA」。海外のシェフとコラボ―レーションしながらヨーロッパ向けの有田焼を制作している。佐賀県が進める事業とは一線を画した窯元独自の取り組みだ。

 特に彼らが開拓を目指すフランスには、いわば「料理で器に絵を描く」という思いを持ったシェフが多い。つまり器に絵柄はいらないというのだ。シンプルな器が好まれる。しかしそれでは産地はあまり関係なくなる。では、“有田”をどう表現するのか。形、色、絵付け…。

「時代が変わったら、それに合わせえて変えるところ、変えないところ、バランスをとらないといけない」

 彼らはシェフのオーダーに臨機応変に対応する。それを成し得るのも“有田”の技術が高いからだ。400年の伝統がある有田の矜持を持ちつつ、必要であれば変えていく。窯元だけでは生み出せなかった新たな有田焼の可能性がそこにはあった。

 2013年12月、「プロダクトARITA」が初めて主催したフランス・パリでの展示会。事前にフランス人シェフからオーダーを受けていた斬新なデザインの三つの器を本人に直接提示した。シェフは笑顔で手に取った。フランスのほかに東京・銀座にもレストランを持つこのシェフとの契約が決まると彼らの仕事も大きく展開していくはずだ。果たして…。

「海外のトップに使ってもらうと、あらためて国内での知名度もあがる」

「もっと外に出ていって、自分たちが市場を作っていくぐらいの気持ちで…」

 時間をかけ、知恵を絞り、悩み、喜び…。現状を打破するために立ち上がった有田焼の歴史を紡ぐ窯元たちの挑戦は、決して2016年の創業400年で終わりではなく、有田焼の未来を背負っていく若者たちに向けたメッセージでもある。

ディレクター・森洸(サガテレビ報道部)コメント

「“有田焼”と聞くとどんな器を想像しますか?“初期伊万里様式”や“柿右衛門様式”に代表されるように繊細で華やかな絵付けという方がほとんどではないでしょうか。そんな概念を覆す有田焼が今、生み出されています。平坦で真っ白な器。中身が透けるほど薄いグラス。あっと驚く斬新な見た目、使い心地ですが、そのどれもが有田焼400年の歴史によって紡いできた確かな技術によって裏打ちされた高い完成度を誇ります。ただ、どれだけ完成度が高くても、美しくても、ライフスタイルの変化や安価な輸入品の増加などによって窯業界を取り巻く環境は年々厳しくなっています。彼らはフランスで高い評価を得ました。国内でも料理人たちをうならせました。窯元たちは伝統を継承しつつ、新たな有田焼の世界を創造しています。彼らの挑戦が2016年に創業400年を迎える有田焼復活の足掛かりになることを期待しています」


<番組概要>

◆番組タイトル

第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ARITAを紡ぐ男たち』
(制作:サガテレビ)

◆放送日時

12月19日(金)27時40分~28時35分

◆スタッフ

プロデューサー
鶴丸英樹
ディレクター・構成
森洸
ナレーター
坪内陽子
撮影
眞浦裕也
編集
龍聡一郎

2014年10月9日発行「パブペパNo.14-418」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。