2014.8.14

第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『検問ゲートがある町』
(制作:福島テレビ)

福島第一原子力発電所がある大熊町は放射線量が高くその大部分が帰還困難区域に指定された。町の入り口には検問ゲートが設けられ自由に行き来することはできない。それでもなお故郷への帰還をあきらめない男たちがいる。彼らは自称“じじい部隊”。無人になった町のパトロールや清掃活動などを行っている。彼らの行動の原動力は何か?さらに元東京電力社員へのインタビューから「原発は立地地域に何をもたらし、何を奪ったのか」を明らかにする。

<8月23日(土)27時03分~28時03分>


 毎日3000人の作業員が働き、汚染水タンクの増設や地下水を遮断する工事など収束作業が続いている福島第一原発。その作業は30年から40年とも言われている。その場所からわずか500mの所に主人公の一人、元大熊町役場職員の鈴木久友さんの自宅がある。
 震災前、彼の自宅と福島第一原発の間には森林が生い茂り、住宅から原発を見ることはできなかった。しかし事故後は、汚染水貯蔵タンクの増設などで自宅と原発の間の森林は伐採され目の前に巨大なタンクが姿を見せた。さらに彼の自宅は汚染廃棄物を長期間貯蔵する中間貯蔵施設の候補地にもなった。
 しかし彼は決してあきらめない。元役場職員などで構成する自称“じじい部隊”を結成し毎日帰還困難区域の検問ゲート通って町のパトロールを続けている。原発で潤った町は事故で一変した…。「でもまた町を作り直せばいいじゃないか」そう鈴木さんは話す。穏やかな表情から見せる強く固い決意が故郷を守る福島の男の姿でもある。

 会津若松市で避難生活を送る長沼勝己さんは元東京電力の社員。建設段階から携わり原発に地域の活性化を描いてきた一人でもある。しかし故郷や仕事を奪われ狭い仮設住宅での生活を余儀なくされている。
 がんを患いなかなか故郷へも戻ることができなくなった。「原発さえなければ…」、検問ゲートがある町に長沼さんはそう思いを寄せる。

 10基の原発が首都圏に電気を送り、地域に大きな雇用を生んだ原発は町に何をもたらしたのか。大熊町の帰還困難区域に設けられた検問ゲート。ゲート内の町に思いを寄せる2人の男性を通して、原発がある故郷の町の姿を描く。

ディレクター・石山美奈子(福島テレビ報道局 郡山報道部)コメント

「“自分の家なのに、帰れないなんて”“すぐそこなのに、どうして入れてくれないんだ”。震災後、多くの方々からこのような言葉を聞きました。原発事故後、避難指示区域に設けられた“検問ゲート”は、地域の防犯に大きな効果がある一方で、帰還への障害となっています。原発事故が起きて、多くの大熊町民の声を聞きました。“原発さえなければ”と悔しさを口にする町民もいれば、ゲートがなくなる日を信じて帰還の準備を進める町民もいます。震災後でさえも“原発によって町が豊かになった”と話す町民も、“原発は許すことができない”と声を上げる町民もいます。原発が立地する町の住民だからこそ、“検問ゲート”を見て感じるのは、悔しさや悲しさでは語りきれない思いだと痛感しました。原発事故が起きたということの象徴である“検問ゲート”を通して、町民たちの故郷への強い思いを感じたり、町の今後を考えることの難しさを実感していただけると幸いです。

番組概要

 緑豊かでのどかな田園風景が広がっていた福島県の浜通り。そこに原子力発電所の建設が発表されたのは今から50年前の昭和39年。その後建設された10基の原発は首都圏に電気を送り、地域の雇用や経済を支えてきた。しかし東日本大震災による事故を境に、地域に富をもたらした原発は住民から故郷を奪い去り、震災から4年を迎えた今もなお人々に苦痛を強いている。
 福島第一原子力発電所がある大熊町は放射線量が高く、その大部分が帰還困難区域に指定された。町の入り口には検問ゲートが設けられ自由に行き来することはできない。それでもなお故郷への帰還をあきらめない男たちがいる。彼らは自称“じじい部隊”。無人になった町のパトロールや清掃活動などを行っている。彼らの行動の原動力は何か?さらに元東京電力社員へのインタビューから「原発は立地地域に何をもたらし、何を奪ったのか」を明らかにする。


◆番組タイトル

第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『検問ゲートがある町』
(制作:福島テレビ)

放送日時

8月23日(土) 27時03分~28時03分

スタッフ

ナレーター
延増惇(福島テレビ)
ディレクター
井上明(福島テレビ)
石山美奈子(福島テレビ)
撮影
小椋修一(福島映像企画)
貝沼大輔(福島映像企画)
編集
長瀬勝喜(福島テレビ)
構成
北村和也
音声
新國伸太郎(福島映像企画)
CG
鈴木正人
プロデューサー
千田淳一(福島テレビ)

2014年8月14日発行「パブペパNo.14-328」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。