2014.7.17

第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ジュース プリーズ ~親子3代ブドウ農家の挑戦~』
(制作:秋田テレビ)

秋田県横手市大沢地区で、父と息子、親子3代でブドウの生産をする小川忠洋さん(56)。小川さんは、地区の農家仲間と農事組合法人を立ち上げ、市内にジュース加工工場を建設。ブドウの生産だけでなく、ジュースへの加工も自身で取り組み始めた。6次産業化に挑戦する農家と、それを支える多くの人々。そして、家族の絆。小さな果樹産地で、地区の農業の将来を切り開こうと奮闘するブドウ農家を追った。

<7月23日(水)26時10分~27時5分>


 秋田県横手市大沢地区は明治時代から続くブドウの産地である。しかし、農家の数は約65戸と小規模なため、県外はおろか、県内でもブドウの産地だと知る人は多くない。この大沢地区で、ブドウ生産農家協議会の会長を務めるのが小川忠洋さん(56)だ。小川さんは代々続くブドウ農家の4代目。中学卒業後15歳からブドウの道に入った父・豊治さんと、大学卒業後家を継ぎ就農4年目の息子・智洋さんと、親子3代でブドウの生産をしている。
 大沢地区は傾斜地で水はけがよく、山に囲まれているため寒暖差があるなど、おいしいブドウができる条件がそろっている。そのため地区の農家は、自分たちのブドウに強い自信とこだわりを持っていて、小川さんもその1人だ。

 その大沢地区のブドウに可能性を感じたのが、横手市観光協会の小棚木征一マネージャーだ。小棚木さんは、2005年に自慢のブドウでジュースを作ることを小川さん達に提案。そのまま食べてもおいしいブドウをあえてジュースに加工し、高級ブドウジュースとして売り出すというものだ。地区のブドウ農家からは「ジュースにするためにブドウを作ったわけではない」などと反発があったものの、協力してくれる農家もいて、最終的にブドウジュースに取り組むことになった。完成したブドウジュースは、2006年2月に香港で行われた日本食品のフェアで横手市の特産品として販売され、持ち込んだ600本が2日間で完売した。これをきっかけに国内販売にも弾みがつき、現在は県内の土産物店や首都圏のスーパーのほか、香港でも販売している。

 このブドウジュースの特長は、通常そのまま食べるブドウ(糖度18~20度程度)を、木になっている状態で23度まで熟成させ、そのブドウを原料に水や砂糖などを一切使わずに仕上げるというもので、「生のブドウをそのまま食べているような感覚」と評判だ。
 当初は、大沢地区で栽培したブドウを岩手県盛岡市のジュース工場で委託加工していたが、小川さんは地区のブドウ農家2人と農業法人を設立し、2013年10月、横手市内にジュース加工工場を建設した。自分たちで作ったブドウを自らジュースに加工することにしたのだ。現在は地区の約65戸のブドウ農家のうち、25戸がジュース用にブドウを提供している。岩手県の工場に委託してジュース作りを始めた2005年の生産本数はわずか2,500本だったが、年々生産本数が増え、工場が完成した2013年度は45,000本を生産した。

 秋田県横手市大沢地区は県内有数の豪雪地帯だ。雪が畑を覆ってしまう冬場には、秋田県の果樹農家の多くが出稼ぎに出たり、他の仕事をしていたが、(小川さん親子は冬場、除雪車のオペレーターの仕事や、スキー場でアルバイトをして生計を立てていた。)工場の建設によって冬場の雇用の確保が可能になった。また、工場で働いているのは横手市内で果樹を生産する若手農家がほとんどで、若者が地元・横手に残って仕事をするという環境作りにも貢献している。

 小川さんたちブドウ農家が自分たちでジュース工場を立ち上げたもっとも大きな理由。それは、100年以上の歴史を持つ大沢地区のブドウ産業の発展である。大沢地区のブドウで作ったジュースを全国や海外に発信することで、秋田県横手市大沢地区という小さなブドウ産地の存在を多くの人々に知ってもらう。そして、「ジュースでこんなに美味しいのなら、ブドウをそのまま食べたらもっと美味しいだろう」と大沢地区のブドウに興味を持ってもらい、買ってもらう。そんな目標を持って、小川さんたちは日々奮闘しているのだ。番組では、ブドウ農家の小川さん一家がジュースの加工、販売も行う「6次産業化」に挑戦し、地域のブドウ産業の発展を目指す姿に密着した。

ディレクター・黒沢賛(秋田テレビ 報道部)コメント

「小川さんに初めてお会いしたのは、ニュースの特集で“6次産業化”を取り上げたときです。情報収集の中で、県庁の担当者から小川さんの取り組みを聞き、取材させていただきました。そのとき初めて、代々続くブドウ農家であることや、息子の智洋さんが大学卒業後に実家の農家を継いだこと、地域のブドウに熱い思いを持っていることを知りました。そして、小川さんの6次産業化の取り組みは、減反政策の廃止に戸惑う秋田県農業に何らかの方向性を示すことができ、少子高齢化や若者の県外流出に歯止めをかけるヒントになるのではないかと思いました。もちろん、この小さな果樹産地の取り組みが、農業を営むほかの地域に必ずしも当てはまるとは限りません。しかし、小川さんが“地域のために”“地域のみんなで”と口癖のように話していた地域への思いは、多くの問題を抱える秋田県の今後に、何かヒントを与えてくれるのではと感じました」


番組概要

◆番組タイトル

第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ジュース プリーズ
~親子3代ブドウ農家の挑戦~』
(制作:秋田テレビ)

◆放送日時

7月23日(水)26時10分~27時5分

◆スタッフ

撮影
菊池誉啓、高橋朋弘
編集
菊池誉啓、能登屋隆
プロデューサー
三浦悟
ディレクター・構成
黒沢賛

2014年7月17日発行「パブペパNo.14-287」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。