2014.6.20

第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『揺れる原発海峡 ~27万都市 函館の反乱~』
(制作:北海道文化放送)

津軽海峡をへだて、函館からわずか23キロしか離れていない青森県大間町で建設が進む大間原発。もし重大事故が起きたら函館で8000人が急死するというシミュレーションも…。原発の建設を止めるため、全国で初めて自治体による裁判を起こした函館市。そして、母親の意思を受け継ぎ、すぐそばの土地で暮らし続ける女性。
国の原発政策に翻弄される人たちの姿を追う。

<7月2日(水)26時20分~27時15分>


 2014年4月3日、函館市が国などを相手取り、青森県で建設中の大間原発の建設差し止めを求めて、東京地方裁判所に提訴した。自治体が原発の建設差し止めを求めて、提訴するのは全国で初めて。原発再稼働に向けた原子力規制委員会による審査が続く中、クローズアップされているどこまでが原発の地元なのかという議論。国は原発から約30キロ圏の自治体に避難計画の作成を義務付けたが、再稼働の同意を得る対象となるのはあくまでも従来の地元。約30キロ圏の自治体は被害を受ける可能性があるにもかかわらず、口は出せないという状況となっている。函館市もまさに同じ…。なぜ、函館が全国で初めて国などを相手に提訴しなければならなかったのか、その真相に迫り、再稼働に向けた動きが進む中、改めて、原発のあり方を問う。

 函館と青森県の下北半島の大間町に建設中の大間原発の距離はわずか23キロ。函館と大間の間には毎日、フェリーが運航、それに乗って大間から函館に買い物客や病院に通院する人がやってくる。しょっぱい川とも呼ばれる津軽海峡を挟んでいるが、函館と大間は同じ生活圏。その大間でフルMOX燃料を使った世界で初めての原発を電源開発が建設している。2011年3月11日に起きた福島第一原発の事故で、原発の安全神話が崩壊。ある専門家のシミュレーションでは過酷事故が起き、放射能の雲が到達した場合、函館では約8000人の市民が急性死に至るという想定も。市民を守るため函館市の市長は建設の凍結を国や電源開発に何度も要請したが、無視され続け、福島第一原発の事故以降止まっていた建設工事が再開された。国にとって大間原発は特別な原発だったのだ。このため函館市は最後の手段として訴訟を起こすしかなかった…。

 一方、大間原発建設に反対し、用地の買収を拒否し続けた母親の意思を継ぎ、原発敷地内の土地に建てたログハウスをとりでに反対運動を続ける女性も。函館の隣の北斗市で暮らしていたがログハウスに生活の拠点を移すことで目の前で進む、大間原発の工事を止めようとしている。こうした動きに漁業補償金を受け取り、静かにしていたマグロで知られる大間の漁師たちの意識も変わり始めてきた…。
 一体誰のための原発なのか?背後に見え隠れする核燃料サイクルに固執する国の姿。福島第一原発の事故を経験したにも関わらず、本質的には何も変わっていない…。国の原発政策に翻弄される人たちの姿を追う。

ディレクター・三宅真人(北海道文化放送 報道部)コメント

「3.11以降、意識が変わりました。函館から青森方面を望むと、津軽海峡の向こうに巨大なクレーンと建設中の原子炉建屋が見えます。これまで意識していなかった現実を実感しました。しかし今、政府の原子力政策はまるで3.11以前と変わらないところを目指しているように見えます。23キロしか離れていないにも関わらず、函館市は何も口出しできず、建設工事は再開されました。核燃料が運び込まれれば怯えながら暮らさなくてはならなくなります。こんな理不尽な事が許されるのでしょうか。大間原発は発電のためではなく、国が進める核燃料サイクルでたまり過ぎたプルトニウムの焼却炉とも言われている特殊な原発です。国策、誘致した地元、電力会社は、もう後戻りできないのでしょうか。函館市の反乱は“本当にこのままでいいのか、一度立ち止まって考えてみるべきではないのか”という問いかけを我々に投げかけています」


番組概要

◆番組タイトル

第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『揺れる原発海峡 ~27万都市 函館の反乱~』
(制作:北海道文化放送)

◆放送日時

7月2日(水) 26時20分~27時15分

◆スタッフ

構成・プロデューサー
向田陽一
ディレクター
三宅真人、二階堂はるか
取材カメラ
高野祐輔、佐藤健
ナレーター
山本良治、伊藤美菜子

2014年6月20日発行「パブペパNo.14-243」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。