2013.10.11

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『希望の空~日田大洪水を乗り越えて~』
(制作:テレビ大分)

2012年7月。2度にわたって日田市を襲った「かつてないほど」と表された記録的な豪雨。日田市の昭和学園高校吹奏楽部にとって大分県吹奏楽コンクール直前の出来事だった。豪雨被害によって戸惑いと焦りを隠せない生徒たち。そして水に浸かり使えなくなってしまった楽器…。しかし、その豪雨を乗り越え、絆を深め、コンクールの課題曲のタイトル通り「希望の空」へと向かっていった。果たしてコンクールの結果は…!?新たな目標・夢に向かって前進する昭和学園高校吹奏楽部の軌跡を追ったドキュメンタリー。

<10月29日(火)26時55分~27時50分>


 それぞれに青春がある。何かに夢中になる、何かに賭ける青春がある。それが目の前で消えていこうとしたら…。
 2012年7月。2度にわたって大分県日田市を襲った「かつてないほど」と評された記録的な豪雨。日田市の昭和学園高校吹奏楽部にとっては1年に1回の大事なコンクール直前の出来事だった。
 豪雨被害によって戸惑いと焦りを隠せない生徒たち。そして使い物にならなくなってしまった楽器や楽譜…。しかし、その豪雨を乗り越えて、絆を深め、コンクールの課題曲のタイトルのように「希望の空」へと向かっていった。果たしてコンクールの結果は…!?新たな目標・夢に向かって前進する昭和学園高校吹奏楽部の軌跡を追ったドキュメンタリー。

 昭和学園高校吹奏楽部は大分県吹奏楽コンクール上位入賞の常連校で、この年(2012年)も7月末に大分市で開かれるコンクールの練習に余念がなかった。いつもと変わらない日常の中で、練習にも一層力が入る日々…。吹奏楽部顧問の廣川由美子教諭、トランペット担当で部長の3年小山奈南美さんら34人が今年の課題曲の中から選んだのは「希望の空」。東日本大震災後の復興への希望をイメージして作られた曲だった。

 しかし、2012年7月3日早朝。活発な梅雨前線の影響で北部九州は記録的な豪雨に見舞われた。日田市では午前8時までの1時間に、およそ110ミリの猛烈な雨が降り、校舎のすぐ傍らを流れている花月川が見る間に氾濫した。市の中心部も大規模に冠水して、およそ7700世帯・2万人以上に避難指示が出されるというこれまでに経験したことのない大雨となったのだ。この影響で、校舎も瞬く間に泥の海となった。電気も停まり、ほとんどの機能がストップしてしまった。不幸中の幸いだったのは、生徒たちの身に被害がなかったことだった。
 この日校内は期末テストで、登校していた吹奏楽部員や教師は音楽室に駆け付け、ひざまで来ていた濁流の中、楽器や楽譜を2階まで運んだが、水に浸かり使えなくなった大型の楽器も出てしまった。グラウンドに積まれた瓦礫(がれき)の山が被害の大きさを物語っていた。どうにか水をふき取り、楽譜を乾かして練習ができるようになったのはコンクールまであと20日ほどの7月7日だった。
 部員の中には自宅が直接被害にあった生徒もいた。1年生諌山亜湖さん。高校になって念願のホルンを始めコンクール出場を楽しみにしていた。自宅が被害にあった中で先輩たちの足を引っ張らないようにと最大の努力をした。

 コンクールでの“金賞”を目指す部員たちは後れを取り戻そうと必死だった。しかし…11日後の7月14日。またしても豪雨で花月川が氾濫、再び校舎やグラウンドは水浸しとなった。楽器は無事だったものの度重なる洪水被害に部員たちの心は折れそうになったが、焦りと不安を抱えながらもひたすら練習に励んだ。そしてその中で、部員の心が今まで以上に一つになっていったのだ。目指すは“金賞”。この気持ちは変わらなかった。課題曲である「希望の空」は奇しくも昭和学園高校にとっても復旧を願うテーマ曲となった。
 迎えたコンクール当日。彼らはステージで「希望の空」を演奏し、見事、金賞に輝いたのだ。廣川先生は言う「豪雨災害をみんなで乗り越えたことで仲間意識がより深まった結果」だと。部員たちにとって忘れられない特別な夏になった。
 そして、コンクールに並ぶ一大イベントが…12月26日。この日は3年生にとって最後の演奏会。ここでもプログラムの中心になったのはやはり「希望の空」だった。
 演奏会を終えたある日。ひとりトランペットを洗う小山部長。「新1年生が使うために洗う。楽器を大切にしてくれる子に引き継ぎたい」と語る。4月、吹奏楽部に新しい仲間が加わった。介護福祉士を目指していた小山部長は国家試験に合格し、この4月からはもう1つの目標であった看護師になるため福岡県の看護専門学校に入学した。それぞれが新しい一歩を踏み出している。
 番組では大洪水を乗り越えステージに立った昭和学園高校吹奏楽部の彼らが目指した「希望の空」を伝える。

ディレクター・御手洗慶子 (テレビ大分 制作部)コメント

「大事なコンクール前に2度にわたって日田市を襲った豪雨により吹奏楽部の部員たちの心には大きな動揺が見られましたが、一方で部員たちの絆をより深めたのではないかと痛感しました。焦りと不安を抱えながらも、私たちがいつ取材にいっても部員たちは笑顔と元気を見せてくれ、その表情や演奏を聞くとこちらまでも元気がもらえるほどでした。コンクール当日のステージでの演奏はこれまでで1番良い演奏で、鳥肌が立ち、成績発表の際は思わず涙がこぼれました。あの時の部員たちの涙・笑顔を見た瞬間、“この生徒たちを取材できて本当に良かった”と感じました。当時の3年生はそれぞれの夢に向かって新たな道を歩み始めており、また新入部員を迎えた吹奏楽部も頑張っています!豪雨という苦境を乗り越えたこころとそこで結ばれた絆は彼らにとっても輝いています。貴重な経験になったのではないかと感じています」


<番組概要>

◆番組タイトル

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
 『希望の空~日田大洪水を乗り越えて~』
(制作:テレビ大分)

◆放送日時

10月29日(火)26時55分~27時50分

◆スタッフ

プロデューサー
油布寛(テレビ大分)
ディレクター
御手洗慶子(テレビ大分)
高瀬建二朗(TOSエンタープライズ)
構成
森久実子(フリーランス)
ナレーター
御手洗慶子(テレビ大分)
撮影・編集
日野誠吾(フリーランス)
白井信幸(テレビ大分)

2013年10月11日発行「パブペパNo.13-417」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。