2013.9.30

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『夢だけじゃ、いかん
~故郷の賑わいを再び…集落再生に挑む石原の人々~』
(制作:高知さんさんテレビ)

この50年で人口が千人以上減少した高知県の過疎地域・土佐町石原地区。故郷が寂れゆく現状を変え元気にしたいと、地区のリーダー・筒井良一郎さんをはじめ、住民が地域活性化の活動を始めた。そんな中、農協のガソリンスタンドと日用品店の運営を住民が行うべきか判断を迫られることになる。経営の素人が会社を運営できるのか?でもやらなければ住民生活が守れない-。岐路に立つ石原の人達が故郷の再生に向けて歩む日々とその思いを見つめる。

<10月12日(土)27時23分~28時18分>


 全国に先行して過疎化と高齢化が進む高知県。地域の祭りや行事が廃れ、住民の暮らしすら立ち行かなくなる現状も出てきている。そんな中、故郷を活性化しようと立ち上がったのが、県中部の山あいの集落・土佐町石原地区だ。かつて林業で栄えた石原地区は、映画館や旅館もあって多くの人でにぎわっていた。
 しかしこの50年で千人以上人口が減り、4年前には小学校も廃校になった。「住民の力が残っている今のうちに、何とか故郷を元気にして次の世代につなぎたい」そう話してくれたのは、地区のリーダー・筒井良一郎さん(取材当初・73歳)。郵便局を10年前に退職した筒井さんは、慌ただしい日々が終わりあらためて故郷を見つめた時から、さびれゆく故郷の現状をなんとかしたいと考え続けていたと言う。

 以前から、自然の豊かさや、人々の温かいつながりが残る高知の“田舎”の良さを伝えたいと思っていた私は、筒井さんたち石原の人々が、故郷ににぎわいを取り戻そうと奮闘する姿を、2012年6月から1年間追い続けることになった。
 筒井さんが、地域活性化の手段として取り組もうと考えたのが“集落活動センター”。平成24年度から高知県が支援する事業で、過疎地域で住み続けられる仕組みや特産品作りなどを住民自身が考えて実践する、支え合いの仕組み作りだ。筒井さんは地区のみんなに呼びかけ、センターの運営主体となる住民団体「いしはらの里協議会」を設立。お年寄りの生きがいづくりと地区の収入を増やす農産物の販売、多くの人に石原に来てもらえるようなイベントの実施、にぎわいを取り戻すために廃校の活用方法を検討するなど、地域を元気にする取り組みを手探りで始めた。
 全国でも先進的な過疎地対策の取り組みとして始まったこの事業には、県から3年間で3千万円の補助金が出る。その補助金などを元に、住民がセンターの設置と運営を行うのだが、3年後には補助金が無くなるため、活動費やスタッフの人件費は、自分たちで賄わなければならない。つまり、住民が稼がなければ活動はできず、お年寄りの生活支援など地域の支えあいの活動のためにも、継続的に資金を作る仕組みが必要なのだ。

 そんなシビアな現実を抱える石原の住民たちの前に、新たな壁が立ちふさがる。全国の過疎地と同じように“ライフライン消滅”の危機をどう解決するかという問題だ。すでに赤字で休止になっていた農協のガソリンスタンドを、冬場の燃料確保の為に再開させようと、住民は国の補助事業を活用し、2カ月間の試験営業に乗り出すことに-。さらに、生活必需品を販売する農協店舗の閉鎖も現実的になったため、筒井さんたちは、ガリンスタンドと店の運営を担うため住民出資の会社を設立するかどうか、判断を迫られることになった。
 経営の素人に果たして会社運営ができるのか。でもやらなければ住民生活が守れない-。センターを運営する「いしはらの里協議会」の役員の間でも賛否が交錯し『夢だけじゃ経営はできない』とのシビアな意見が続出。
 しかしそんな厳しい状況の中でも、筒井さんたちを支えてくれる住民もいた。石原自慢の米を使った特産品作りに挑戦し、その売り上げをセンターの活動や会社運営の費用の足しにしてほしいと懸命に取り組み始めたのだ。
 果たして石原の住民たちは、住民出資の“会社設立”の話をどう受け止め、どんな結論を出すのか?そして、地区のリーダー・筒井さんが抱く夢、石原の未来とはー。
 番組では、地域活性化の活動を先頭で引っ張る筒井良一郎さんを中心に、センタースタッフの活動や住民の取り組み、そしてガソリンスタンドと店舗運営に向けた検討の過程を取材。生まれ育った場所で安心して暮らし、次の世代につないでいく。そんなささやかな願いを胸に故郷の再生に向けて歩む人々と、その絆を見つめる。

ディレクター・西森純子(高知さんさんテレビ 報道部)コメント

「全国に先行して過疎化・高齢化が進む高知県。一方で、自然の豊かさや人々の温かいつながりが残っていて、そんな高知の“田舎”の良さを多くの人に伝えたいと長年思っていました。そこで出会ったのが“愛する故郷を次の世代につなぎたい”という思いを持つ筒井さんたち石原の人々。故郷ににぎわいを取り戻そうと奮闘する姿を1年間見つめ続けてきました。地域活性化の起爆剤として集落活動センターの事業に取り組む他の地区は、特産品作りなどの実績がありましたが、石原にはそんな経験は全くありません。活動資金をどう確保するかなど様々な問題が浮上し、集落再生に挑む道のりは厳しいものでした。突出した行動力やアイデアを持つ人がいる訳ではなく、ある意味で“普通の”人たちが挑んだ故郷再生の取り組み。その姿は、全国の過疎地に生きる人々への応援歌でもあったと取材を通して感じました。故郷への思いと人々の飾らない温かさが、番組で伝わればと思います」


<番組概要>

◆番組タイトル

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『夢だけじゃ、いかん
~故郷の賑わいを再び…集落再生に挑む石原の人々~』
(制作:高知さんさんテレビ)

◆放送日時

10月12日(土)27時23分~28時18分

◆スタッフ

プロデューサー
明神康喜
ディレクター・構成
西森純子
ナレーター
小倉久寛
撮影
西森純子、川田卓史、氏原一晃
音声
清水努、岸野真弓
編集
川田卓史
MA
山本正志
音響効果
片岡幸司

2013年9月30日発行「パブペパNo.13-388」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。