2013.9.30
<10月6日(日) 25時45分~26時40分>
佐賀で制作され、放送された『河童五代目』は、地元に伝わるかっぱ伝説をもとに妖怪のフィギュアを使ってストーリーが展開されるアニメーション。1話およそ3分というショートストーリーが、地元ローカルテレビのミニ枠で放送され話題となった。
目を見張るのはそのクオリティー。フィギュアを使用していることはわかるのだが、街中に立っていたり、バスに乗っていたりと、等身大サイズで日常の風景に違和感なく合成されていたのだ。また、番組タイトルがフルCGのアニメーションであったりと、とても佐賀で制作されたものとは思えない完成度だった。
この作品を仕掛けたのが、佐賀のミニシアター系の映画館「シアターシエマ」の代表、芳賀英行さん(38)。2007年に、閉館していた映画館を借り上げシエマを開業。
3つあった劇場のうち1つをカフェスペースにするなど、一風変わった空間を作り上げている。そんな映画館経営のかたわら、制作活動の指揮を執っているのだ。
制作活動の中心を担っているのは、シエマの映写技師2人で、作品の脚本・撮影・CGなどほぼすべての作業を手掛けた。1人は東京の会社で、全国放送のアニメのCG監督まで務めた橋本英明さん。もう1人は橋本さんのアニメ会社で修行した経歴を持つ、佐賀大学出身の山本翔さん。技術を持った2人がなぜ佐賀という地方で制作活動を行っているのか。情報通信機器の発達によって、制作活動の垣根が、中央・地方でなくなったことが一つ。ある程度のスペックを持ったパソコンとソフトがあればどこでも制作はできるし、普段の打ち合わせにはメールやテレビ電話でこと足りるという。また、2人が口を揃える言葉が「芳賀がいるから」。
2人が惚れ込んだ芳賀さんとはどういった人物なのか。普段物静かな芳賀さんに話を聞くと、「ただ映画を流す映画館ではなく、文化を発信する場を作りたい。クリエイターが集い、モノを作り発信していく場にしたい」と語った。そして、「本気で世界を目指す」とも。その目には一寸の迷いもない。
芳賀さんは、橋本さんや山本さんとの出会いを「運がいい」「持っている」と語る。しかし、この確固たる信念。これを芯の部分に持って活動しているからこそ、自然と同じ想いを持った人が集まり、一つ一つ実現に近づいているのだと感じた。その姿は、夢や目標を持つすべての人に共感してもらえるはず、またそれを実現するためのヒントになるはずだと思い今回の番組制作に至った。
番組では取り上げなかったが、実際にニューヨークの仕事を請け負い、制作も進められていた。芳賀さんは、たまたまニューヨークにいる知人が持ってきてくれた仕事だからと謙遜(けんそん)したが、それも確固たる信念を持っているからこそ、その想いに共鳴する人が仕事を持ってきているに他ならない。
そんな芳賀さんは、佐賀県のクリエイティブの現状を変えたいと語る。デジタルコンテンツ産業の活性化を図ろうと県が行っている事業に参加し、セミナーを開くなど活動している。人前で話すことが苦手という芳賀さんが、自分の想いを懸命に伝えようとする姿もまた、視聴者の共感を得られるのではないだろうか。
そして、芳賀さんに新たなチャンスが訪れた。佐賀県のバックアップを受け、2月に北海道、3月に香港で開かれるフィルムマーケットに『河童五代目』を出品し、海外に売り込むのだ。果たして海外の人の目に河童はどう映るのか。受け入れられるのか。そして売れるのだろうか。
「“佐賀でアニメ制作”。この“佐賀”と“アニメ”という全くもってつながりそうにない言葉を聞いた時の違和感が、そもそもの取材のきかっけでした。その上、制作現場は映画館の映写室。薄暗く細長い非日常空間で2人の映写技師が、カメラ片手にフィギュアと向き合ったり、PCにかじりついている。プロデューサーの芳賀さんに話を聞くと、物静かな語り口の中に熱いものを感じ、この人たちの活動を番組にしたい、芳賀さんの想いを伝えたいと思うようになりました。いざ取材を始めて苦労したことが、主人公に据えた芳賀さんが、プロデューサーという立場上、室内で打ち合わせを行っているシーンが多かったということ。そのため、こまめに連絡を取り、外で活動を行うような際にはできるだけ同行取材を行いました。芳賀さんの人間性、想いは表現できたのではないだろうかと思います。」
第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『河童の挑戦 ~ローカルから世界へ~』
(制作:サガテレビ)
10月6日(日) 25時45分~26時40分
2013年9月27日発行「パブペパNo.13-387」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。