2013.8.9

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『まっすぐ ~大谷翔平 18歳の決断~』
(制作:岩手めんこいテレビ)

高卒ルーキーながらもプロ野球開幕スタメンをつかんだ北海道日本ハムファイターズ大谷翔平選手。高校時代は、球速160キロ到達やメジャーリーグ挑戦表明に始まる進路の決断で注目を浴びてきた。実は、160キロは、大谷が高校入学時に目標に設定したものだった。なぜ大谷が、球史に残る偉業を達成できたのか。メジャー挑戦表明後にドラフトで指名され、人生の決断に迫られた時、18歳の心はどのように動いたのか。少年時代から高校時代までの関係者から証言を集め、明らかにしていく。

<8月28日(水)26時10分~27時5分>


「自分は、160キロを目標にやってきた」記者たちの前で、大谷がこう話したのは、高校2年の冬だった。本当に高校生が投げられるボールなのだろうか。そう思いながらも、取材を続けた。春の選抜甲子園では、初戦で大阪桐蔭と対戦。プロ注目の藤浪晋太郎との対決が実現し、大谷は初打席でホームランを放った。とにかく人に強い印象を与える選手である。一方、ピッチングでは、これまでの試合では見たことのないような大崩れをして、1試合で甲子園から姿を消した。

 悲願の日本一へ、最後の夏。大谷のコンディションは心身ともに充実していた。そして、岩手県大会準決勝で投じた83球目。投げ終えると、電光掲示板に160キロの文字が躍った。その場にいた誰もが熱狂し、球場中に歓声が響いた。本当に投げてみせたのだ。わずか18歳の高校生が160キロを。
 高校野球を引退した大谷は、またしても私たちを驚かせる。「アメリカでプレーさせていただくことに決めました」日本のプロ野球を経験せずにアメリカに渡ると表明した。しかし、その4日後、北海道日本ハムファイターズが待ったをかける。大谷をドラフト1位で単独指名したのだ。戸惑う大谷。家族の方針は「本人の意思を尊重し、最終的には本人に決めてもらう」と父・徹さん。国内かアメリカか、18歳の少年の決断にすべては委ねられた。「指名して評価してくれたことはうれしいが、自分の思いは変わらない」ドラフト指名直後、大谷の気持ちは完全にアメリカだった。

 それに対し、日本ハムは無理に説得するのではなく、長くメジャーリーグのトップで活躍したいという大谷の夢を実現するため、最善の方法を一緒に考えた。いわゆる“入団交渉”とは少し違った。序盤は、入団を考えている様子はなかったという大谷だが、日本ハムが、早期の渡米が必ずしもメジャーでの活躍に結びつくわけではないとする資料を提示すると、次第に考え始める。考え始めたがゆえに生じる不安、そして迷い。それらと約1カ月半向き合い、悩みぬいた結果、大谷は、自らの意思で日本ハム入団を決めた。

 取材の中で、入学したばかりの大谷が設定したという目標に驚いた。日本球界では誰も出したことがない球速163キロを目標にしていたのだ。それも実現するための練習プランも具体的に考えて。チームメイトが本当に投げられるのかと疑問に思う中、トレーナーの小菅智美さんは「できると思った」と話す。160キロを投げられると思わせた理由は何か。また、なぜ大谷は実現できたのか。身体的特長や野球への姿勢、性格など、少年時代から高校時代までの関係者からさまざまな証言を集めた。そして、大谷が「長かった」と振り返った、ドラフト指名から入団までの1カ月半。人生の大きな決断を迫られ、苦悩した期間を本人の回想と父・徹さんの証言をもとに、18歳の心の動きを追った。

 高校野球の長い歴史の中で、岩手県の高校は、甲子園で優勝したことがない。その岩手にずば抜けた能力を持つ選手がいる。それも岩手で生まれ育った球児だ。それが大谷翔平を追いかけたきっかけである。大谷を取材していると、高い目標に向かって一直線に突き進んでいく姿が印象的で、まだ高校生なのに芯が通っていたことに驚かされる。この姿勢こそが、18歳の少年が、球速160キロに到達できた要因であり、現在の大谷翔平を作り上げている大きな要素なのではないか。入学時から160キロを達成するまで努力し続ける姿と、メジャーで活躍する夢を叶えるために日本ハム入団を決めた姿を伝える。

構成、ディレクター・伊藤健太(岩手めんこいテレビ)コメント

「入社してすぐ、2011年5月から大谷翔平選手を取材してきました。大谷選手は、練習中や試合中は黙々とプレーしますが、野球から離れると人懐っこい笑顔が印象的な選手です。大谷選手の自然な笑顔が見られなくなったのは、日本ハムがドラフトで指名してから入団決定までの期間でした。大谷選手も野球から離れれば普通の高校生です。この期間は、マウンドで見せる冷静な表情とは対照的に、困惑や苦悩、希望といった感情が表情に表れているように感じました。特に戸惑いや悩みを抱えているときには、それまで接してきた大谷選手とは別の人物を見ているような感覚になったのを覚えています。それほど悩んで、日本ハム入団を決断した大谷選手が、国内でどう成長して、どう世界に羽ばたいていくのか。今後も追い続けたいと思っています。」

(備考)
番組資料、番組内のスーパー「大谷翔平(18)」は、取材時の年齢。
※参考:大谷翔平 生年月日:1994年7月5日


<番組概要>

◆番組タイトル

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『まっすぐ ~大谷翔平 18歳の決断~』
(制作:岩手めんこいテレビ)

◆放送日時

8月28日(水)26時10分~27時5分

◆スタッフ

プロデューサー
菊地十郎(岩手めんこいテレビ)
ディレクター・構成
伊藤健太(岩手めんこいテレビ)
ナレーター
田邉有沙(岩手めんこいテレビ)
撮影
加藤幸平(岩手めんこいテレビ)
佐々木潤(岩手めんこいテレビ)
鈴木耕介(岩手めんこいテレビ)
編集
金和則(岩手めんこいテレビ)
MA
山内智臣(めんこいエンタープライズ)
CG
本村真由美(岩手めんこいテレビ)

2013年8月9日発行「パブペパNo.13-310」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。