2013.6.17

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『還暦おやじは最年少~
今日を生きる16人が暮らす何もない島~』

(制作:テレビ新広島)

広島県呉市豊浜町の沖合7キロに浮かぶ小さな島「斎島(いつきしま)」にやってきたIターン移住者、星野右郷と島民の暮らしを描く。最盛期には546人の住民を数えた斎島、しかし今では島で暮らす人はわずか16人。そんな島で東京からの移住者の星野さんは島のよろず屋として八面六臂の活躍を見せる。のんびり島暮らしどころか無休の生活。しかし彼は幸せを感じ自分の変化を感じている、何が彼をそうさせるのか!?

<2013年7月3日(水)26時44分~27時39分>


 瀬戸内海に面した広島県には数多くの島があり、無人島や住民がわずかな島も多い。今回の取材対象となった「斎島」もそのひとつ。現在、住民16人の斎島は、6人が移住者という少し変わった島。いずれは移住者だけの島になるのか?と思うほど、従来からの住民は減り、移住者が増えている。さらに調べていくと、島の最年少者は今年還暦を迎えるIターン移住者の星野右郷さん(59歳)という人物。斎島への移動手段は船のみ。車もなければ、商店も、自動販売機すらなく、不便極まりない。この不便な島に星野さんはなぜやって来たのか?島の魅力は?取材は星野さんと島への興味から始まった。
 広島県呉市豊浜町豊島の沖合7キロに浮かぶ周囲わずか4キロの島「斎島」。明治のころには546人いた住民が、現在ではわずか16人にまで減少。そのほとんどが70歳以上の高齢者。病院どころか、商店、車、自動販売機もない、およそ現代では考えにくい環境である。そんな逆境の島にやってきたのは、東京から夫婦で移住してきた星野右郷さん59歳。島に来るまでは東京の大手ゼネコンの協力会社で取締役として60人の部下をまとめ、企業戦士としてバリバリ働いていた。しかし、50歳の時に人生の転換をはかり島へ移住。人生を再スタートさせた。

 星野さんが普通の移住者と違うのは、島のよろず屋をしていること。島には一日に5便の定期船がある。その定期便の切符売りが星野さんの仕事。しかし星野さんは切符売りだけでなく、島民宛の宅配業務や新聞配達、その他にも遊歩道の草刈りや古い山道の整備など、島民のために自分ができるあらゆることをしている。移住者はのんびり島暮らしを楽しみ、悠々自適というイメージがあったが、星野さんは違っていた。お金をもらっているからしてあげるとか、お金を介した生活ではなく、魚をお礼にもらったり、お年寄りから頼りにされることで、星野さんは満たされていた。物やお金を得るのではなく、精神的な安らぎを得たいという星野さんの思い。それが番組の見どころでもある。もちろん、島民みんなが星野さんと同じ考えではない。昔から島に住む75歳のおばあさんは「病院もお店もないから不便」と嘆く。島を離れ久しぶりに帰省した人も、故郷へは帰りたいけど医療・食料のない島での暮らしには不安があるという。神奈川県から移住した黒瀬修さん(63歳)も島の生活は充実しているが、「元気で健康でないと島には居られない」と言う。そこには精神の安定だけでは片付けられない問題も多くあった。

 斎島は物・医療の問題だけでなく、根本的な問題として島の人口が年々減り続けているため、いつかは無人島になるかもしれないという大きな問題をかかえている。若い人が産業の無い島で暮らすには生活が成り立たず、定年退職した年金暮らしの人にとっても、交通手段が船しかない生活には相当な覚悟が必要だ。またいざ住むことになっても、空き家のほとんどが朽ちているため、住居の確保も難しいのが現状だ。島の人は、常に「いつかは無人島になるかもしれない」不安を抱えている。もちろん、星野さんもその覚悟はしている。しかし「先のことを考えてもどうしようもない。今をどう生きていくか」と星野さんは言う。もしかしたら島の人は1日1日をどこの誰よりも大切に生きているのかもしれない。それを裏付けるように、不便でいつかは無人島になるかもしれない島でありながら、島民の表情に悲壮感はない。むしろ穏やかで優しい顔をしている。
 この何もない島「斎島」ではさまざまなことを考えさせられる。はたして「便利の定義」とは?お金で物を買うことが便利なのか?精神的な豊かさが便利なのか?一体何が人にとって重要なのか?人によって価値観が違うため一概にはいえないが、物質だけの豊かさを求める現代社会において、実は今一番考えなくてはならないことが、この島にはあるのかもしれない。

ディレクター・槇原靖(テレビ新広島)コメント

「わずか16人しか住んでいない斎島ですが、島民に悲壮感はありませんでした。病院も商店もなくいつかは無人島になるかもしれないというつらい現実もありますが、島民にはそれ以上に何か満たされている感じがあるのです。星野さんの言うように、精神的な安らぎが便利と考えるなら、この島は“便利”と言えるかもしれません。この番組は広島県だけでなく全国どこでもかかえている過疎の問題でもあります。特に山間部より過疎がひどいのが離島。限界集落という言葉すら当てはまらないような島民の数の島は他にもあります。その中で楽しく幸せに生きる星野さんは今後の日本の社会には必要な価値観のようにも感じました。“昔はだいたい不便だった”星野さんは戦後生まれ、自然に出てきた言葉かもしれません。便利に物質的に全てを発展させた社会。それと同時に何かを失っているのではないか。本当の幸せとは?便利さとは?この番組を通じて考えさせられました」


<番組概要>

◆番組タイトル

第22回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『還暦おやじは最年少
~今日を生きる16人が暮らす何もない島~』
(制作:テレビ新広島)

◆放送日時

2013年7月3日(水)26時44分~27時39分

◆スタッフ

プロデューサー
大藤潔(テレビ新広島)
清水正義(TSSプロダクション)
ディレクター・構成・撮影・編集
槇原靖(TSSプロダクション)
ナレーター
泉谷しげる
MA
瀬島敬史
EED
柳谷基司

2013年6月17日発行「パブペパNo.13-232」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。