2012.12.10
<12月12日(水)26時40分~27時35分>
ピアノと向かい合った瞬間、何かが乗り移ったように表情が変化し、魅力的な演奏をするピアニスト。演奏を聴き終えた直後には誰もが野田あすかという不思議なピアニストに魅了される。
広汎性発達障害という先天的な脳の障害とともに生きる彼女。社会性やコミュニケーション能力などの発達が遅れているため、周囲に「少し変わった人」「自己中心的」といった印象を与え、これまで障害に対する理解を得ることができなかったケースが幾度もあった。思春期にはいじめや仲間はずれにも悩まされ、次第に人との関わりを遠ざけるようになっていた。しかし本当は、とにかく純粋で正直であらゆることに全力。だからこそこれまでの人生で深い心の傷を負い、そのストレスから引き起こされた精神障害やパニック、自傷行為がさらに彼女を苦しめた。
そんな彼女を救ったのは、幼少期から続けてきたピアノだった。どんなときも正面から向き合い練習してきたピアノ。さらに恩師との出会いでその技術はメキメキと上達し、国際大会で入賞するまでに成長した。しかし彼女がピアノを弾き続けるのは、賞をもらう喜びを感じたいからでも肩書きが欲しいからでもない。「障害のせいでうまく自分の言葉で伝えられないことを、オーディエンスにピアノの音色で伝えたい」それが本当の理由だった。
そんな彼女はある決心をした。それは、これまで障害を理由に避けてきたソロリサイタルを開きたいというものだった。早速その日から猛練習の日々がスタート。チラシの製作や配布も自分で行い、目標とする「手作りのあたたかいリサイタル」へ向けて一歩一歩階段を上ってゆく。番組では彼女の生活に密着しながらその成長の過程を追いかけた。
「もともと“障害者”を被写体にすることに対して多少なりとも抵抗を感じていた自分。その理由は健常者である自分が被写体の心情を感じ、描き出す自信が全くなかったからである。ところが、純粋で素直で何事にも全力で立ち向かうあすかさんと向き合ったとき、その不安をぬぐい去るのに時間はかからなかった。最初、いかに相手に気に入ってもらえるかというところから始まったたどたどしい“取材”はすぐに、思っていることを素直に伝え合う“会話”へと変わった。彼女と接する時間の中で、障害者について、“当たり前”という言葉の意味について考えさせられた。そして感じ始めたのは、“何かをできるようになること”=“成長”ではないということ。「できないこと」を理解することもまた成長なのであり、それを周囲が理解することが大切だということ。ピアノを通して自分自身をみつめ、大きく成長していく彼女をこれからも制作者として追いかけ続けたいと思う」
『こころのおと
~あすかのおしゃべりピアノ~』
(制作:テレビ宮崎)
12月12日(水)26時40分~27時35分
2012年12月7日発行「パブペパNo.12-437」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。